3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

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無料ソフトで作成する3Dプリントデンチャーについて③チェアサイドの操作と無料ソフトMedit DesignでのCAD操作

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は専用ソフトを使用しなくても、無料ソフトのMeditDesignでも

総義歯製作のCADが可能であることをお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回はチェアサイドでの操作、ソフトでの技工操作の方法について簡単に紹介します。

よろしくお願いします。

 

チェアサイドで行う操作について

前回にお話しした通り、総義歯の構成要素をCADで繋いで義歯作成します。

そのために、上下総義歯製作を行うチェアサイドでの操作は、

 

  1. (旧義歯なければ)アナログ印象を取る・(旧義歯あれば)旧義歯のスキャンを取る
  2. 咬座印象を取る
  3. 上顎完成義歯に合わせて下顎の咬合採得を再度行い、咬座印象を取る
  4. 上下総義歯を完成させる

大体はこの流れで 3D歯科 は治療を行なっています。

 

もし旧義歯が問題がなく、予備が欲しい場合は上記の1・4で義歯は完成します。

もっというと、いい義歯ができたときにスキャンを行なっておくと、

患者さんから義歯紛失や破損の連絡が来たときに、上記4だけで、通院なしで義歯をお渡しもできます。

 

旧義歯の審美やおおまかなバイトに問題がなければ、

上記の1・3・4での3回の通院で義歯完成をさせます。

 

咬合採得が上手な先生は、3を省いて、

1、印象 2、咬合採得 4、完成

と3回の来院でも十分完成可能と思います。

 

審美もバイトも、吸着も向上させる時や新義歯製作は

やはり4回の通院で完成させるので、アナログでの制作とチェアタイムは変わりません。

 

ですがデジタルを駆使して行うメリットは、技工の中日も必要なく低コストで行えること、

ミスがあった際に、何が原因のミスかを振り返りやすく、上達しやすい点があります。

 

Medit DesignでのCAD操作

本題の3Dプリントデンチャーを作成するためのCAD操作です。

どういったことを行なっているかを簡単に紹介します。

操作画面などは膨大な量になるので、改めてnoteの方にもアップロードさせていただきます。

 

note.com

↑デジタルCAD技工について、noteにて詳細な操作ガイドをアップしました。

 

 

さて、義歯製作するための方法は2つ。

印象面から義歯床自体をデザインし、人工歯を結合させる方法

咬座印象時の形態をそのまま義歯床とし、人工歯を結合させる方法

です。

 

印象面から義歯床自体をデザインし、人工歯を結合させる

これについては、最近MeditのYouTubeでも紹介されていました。

スプリントを製作するように、印象面をアンダーカットを埋め、2mmの厚みで印象面から

義歯床部分を立ち上げます。

義歯床底面は印象面でブーリアンカットして厚み2mmの義歯床を得ます。

 

咬合床で決定した咬合平面に合わせて人工歯を配列します。

CADで行う人工歯配列では、そのままでは人工歯と義歯床に隙間があったり、

義歯床を人工歯底面が貫通していることもあるので、

義歯床を作成したのと同様に、今度は1mmの厚みで人工歯のカッターを作ります。

人工歯底面を人工歯のカッターでブーリアンカット処理し、

義歯床に貫かないようにしたのち、今度は人工歯と床の隙間、不足部分を賦形します。

 

ここまで記載すると何の話かわからなくなってきますね。

 

まとめると、

義歯床=印象面を2mm「厚くする」ー印象面(ブール値カット)

人工歯=人工歯をアンダーカット埋め、歯牙充填ー印象面を1mm厚くしたもの

意外と単純です。

 

人工歯のアンダーカット埋めをしないと、2ピースデンチャー(人工歯と床を分けて出力)を

後でアナログにくっつける際に、人工歯が床に引っかかって入らなくなります。

 

咬座印象時の形態をそのまま義歯床とし、人工歯を結合させる

この方法だと、デンチャースペースの記録としてのピエゾグラフィーを咬座印象と一緒に行なったことになり、臨床上有用です。

3D歯科 も、現在の3Dプリントデンチャーの製作方法はこちらです。

 

印象時に印象トレーが吸着していれば、完成義歯も吸着します。

 

行うCAD操作をざっくりまとめるとこのようになります。

  • 咬座印象の人工歯配列部分をくり抜く

  • 咬合平面に合わせて人工歯を配列する

  • 義歯床部分と人工歯をくっつける

  • (2ピースデンチャーなら)人工歯データで義歯床をブーリアンカット

1ピースデンチャー(TEK用途や、低コストで作成する最終義歯)の場合は
咬座印象に人工歯をくっつけたら、それでもう完成なので、さらに簡単です。

 

詳細のCAD操作はこちらです。

 

  1. 人工歯を咬合平面に配列
  2. 旧義歯の人工歯をくり抜きます。
    Medit Designの上のメニュー「編集モード」をクリック
    最下段の「トリミングツール」を選択、旧義歯の人工歯・咬合床のロー堤を削除します
  3. 義歯床を穴埋めします
    上の「編集モード」、最下段の「歯牙充填」、スライダーを最大にして「適用する」
  4. 1ピースデンチャーの場合、このまま結合させます。
    「編集モード」、最下段「結合」で人工歯全てと義歯床を選択、結合データが得られます。
  5. 2ピースデンチャーの場合、ブーリアン処理で、人工歯部分の義歯床を切り取ります。
    「編集モード」、最下段「ブール値」、「カット」にて
    Aに義歯床、Bに人工歯を選択し適用します。
  6. 義歯床の尖っているところや、人工歯を取り囲む長すぎる部分を削除します。
  7. メントスペース作成の処理を行います。まずは人工歯の処理です。
    「編集モード」、最下段「厚くする」でセメントスペース0.2mmを入力、適用。
  8. 大きめ人工歯と義歯床で再度ブーリアンカットします。
    義歯床をA、大きめ人工歯をBとして「ブール値」「カット」します。
  9. 最後は大きめ人工歯ではなく、元の人工歯を義歯とともにエクスポートします。

なにやら複雑に感じますが、 3D歯科 の行なった工夫として、

面倒な人工歯のアンダーカット処理を省略し、2回のブーリアンカットで対処しました。

 

これにより義歯床の複製や厚くする、などの複雑なCAD処理により

「CAD迷子」「CADバーティゴ」になることを防ぎます。

こだわって詳細までCAD操作をするのは良いのですが、

複雑化は時間的にもロスですし、ミスの可能性も増えてしまいます。

 

多少の人工歯の引っ掛かりがあっても、アナログに接着する際に

ちょっと削ってあげれば対処できます。

 

どうしてもデータの種類が増えていくので、画面がよくわからなくなっていきます↑

Medit Designは中でもわかりやすいソフトではありますが、

歯科医師が片手間で行うCAD操作はシンプルに行うのをお勧めします。

 

まとめ

CAD操作が終われば、3Dプリントして、あとはアナログに人工歯と床をくっつけて完了です。

どういった流れで、次になにが必要か、というのがわかってしまえば、

CADですが行なっていることは非常にシンプルです。

 

アナログの咬合床で咬座印象し、ロー堤に人工歯配列を直接行なっているのと全く同じです。

 

アナログではここから埋没や重合、掘り出し・・・と、レジンと石膏に塗れての作業がありますが、

3Dプリントではくっつけるだけで終了します。

また、望むならElegoo Mars3proでも3〜4個は同時に3Dプリントで出力できます。

 

 

3Dプリント時間はレジンの特性上4時間近くかけているので即日セットとは行きませんが

患者さんから義歯紛失の連絡が来たら、午後には義歯を用意してお渡しする、

というようなことも可能になるかもしれません。

 

以上は 3D歯科 が手探りで 早く、安価で、簡単に CAD操作で3Dプリントデンチャーを得るために考えた内容になります。

 

もしかするとCADに詳しい先生や技工士さんであれば、もっとシンプルに行う方法をご存知かもしれません。

CADのいいところは熟練と工夫で時間短縮がまだまだ可能という点です。

 

来年もたくさんの試行錯誤と工夫で、日常臨床で使用できるデジタルデンティストリーを模索するつもりです。

 

今後とも、毎週木曜日の夜には、お時間がありましたら覗いていただけますと幸いです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちょっとだけ告知をさせていただくと、

インプラントで有名なストローマン社の企画している

speaker's cornerという、一般のドクター等が行う講習会のような企画に

私も講師として参加させていただくことになりました。

 

日時

1月11日(水)20:00~21:00
1月25日(水)13:30
14:30(再配信)

 

GPがはじめてのアライナー矯正をやり切るために。
2、3症例目をスタートするために。

 

というタイトルで行います。

 

私はGPですので、矯正は経験も浅くお恥ずかしい限りですが、

せっかく機会を頂いたので、同じようにGPでアライナー矯正を

クリアコレクトで初めてみよう、スタートしたばかり、という先生向けで

お話をさせていただきます。

 

1/11分の詳細↓

us02web.zoom.us

 

1/25分の詳細↓

us02web.zoom.us

 

もしもお時間がありましたら、チェックしていただけると嬉しいです。

矯正はまだまだ勉強を始めたばかりですので、ご覧いただいた上で

アライナー矯正について知識がおありの先生方は、ぜひ改善点やポイントなどを

教えていただけますと幸いです。

 

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

無料ソフトで作成する3Dプリントデンチャーについて②無料ソフトMedit Designを利用した総義歯製作

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はデジタルで総義歯が作成可能なのだということをお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は実際に必要な材料と、Medit Designでどのように義歯製作を行うかの概念をお話しします。

さらに次回はチェアサイドでの操作、ソフトでの技工操作の方法と、フェイススキャンの活用について簡単に紹介します。

 

よろしくお願いします。

 

3Dプリントデンチャーの必要な材料

必要な機器と材料は

こちらのような使い慣れた3Dプリンターと

 

あとは、今回はDHプリントというデンケンハイデンタルのレジンを使用します。

これは薬事認可が下りていますので、患者さんにお勧めしやすいです。

ただし500mlで30,000円程と、決して安くはありません。

もっと普及してレジンの価格が下がると良いのですが。

 

ソフトは無料ソフトのMedit Designです。

フェイススキャンや咬合器を使用する場合はB4D(Blender for Dental)を使用します。

 

義歯の構成要素について考える

はじめに、どういったデータを準備、作成すれば総義歯製作が行えるかを考えてみます。

 

総義歯は、ご存知の通り義歯床人工歯に分かれています。

さらに分解してみると、人工歯義歯床粘膜面義歯床研磨面 に分かれます。

 

歯冠補綴でいうTEKのような使い方であれば、モノブロックで一塊で3Dプリントも可能です。

ただし義歯の色調は人工歯色の真っ白になるため、審美面では難があります。

 

そのため、3Dプリントを利用した総義歯は、人工歯と義歯床を別々に出力し

後で繋ぐことで義歯らしい色調を得ることになります。

 

義歯製作で必要なデータを集める

総義歯は、人工歯義歯床粘膜面義歯床研磨面 に分かれます。

 

人工歯は咬合平面を決定できれば、CADのワックスアップ用データベースからデータが得られます。

ただしこの咬合平面、咬合高径を得るのは今のところアナログな手技を主に頼ることになります。

3D歯科 はフェイススキャンを利用して正確な咬合平面が得られるか試行錯誤中です。

 

義歯床粘膜面は、いわゆる印象採得で得られます。

3Dプリントを利用するとコピーデンチャーも簡便に作成できるため、

FGPテクニック(ワックス上で対合歯から咬合面情報を得る)記録と咬合圧印象を

行う機能的咬合印象法FBI(Functional Bite Impression)を用いることもでき

比較的簡単に吸着しやすい粘膜面印象を得られると思っています、

 

義歯床研磨面はシリコン印象材やソフトライナーなどを用いて、

コピーデンチャーに機能時の形態を記録することで再現できます。

コピーデンチャーを利用して咬座印象と同時に、

デンチャースペースの記録として古くからあるピエゾグラフィーを行い

そのままデータ化することで義歯床部分がまとめて得られます。

 

義歯として再構成する

例えばCADソフトのデンチャーモジュールでは、

印象面にスプリントを作成するように義歯床を盛り上げ、

そこに人工歯を繋ぐ、という方法で義歯作成が行われています。

 

この方法では、義歯床外形はCADで自由に得られるので、

通法のアナログ石膏模型から義歯作成する時に外形線を鉛筆で引くように

技工の際に自在に行なうことが可能です。

 

今回はそれと違い、無料ソフトMedit Designを利用して

義歯製作を行なった経験があるので紹介します。

 

先にお話しした通り、

総義歯は、人工歯義歯床粘膜面義歯床研磨面 に分かれます。

これらのデータはすでに旧義歯から、コピーデンチャー咬座印象から得られていますので

3D歯科 では、それを繋ぎ合わせて義歯を作るように臨床でも活用中です。

 

完成義歯のコピーデンチャーを作成するのは、義歯をスキャンするだけでOKです。

同様に、コピーデンチャーで床外形と咬合平面が決定できれば

その形態をそのままコピーすることで総義歯が得られます。

 

すなわちMedit Designで義歯床にCADの人工歯をくっつけるだけで

ソフトの操作が完了します。とっても簡単です。

 

人工歯部はコピーデンチャー通りである必要はなく、CADのデータベースの中から

好みのものを選択して、加工して繋げられるので

バイトを変えたり審美の変更を行うこともできます。

 

note.com

12/26にワックスアップなどで利用するライブラリの作成方法を記載しました↑

 

 

次回には、チェアサイドでの操作、ソフトでの技工操作の方法と、フェイススキャンの活用について簡単に紹介します。

 

また、Doctorbookというサイトにて、MeditDesignで作成した総義歯の症例を

明日金曜日から公開させていただいています。

急ぎの要件で義歯を作成し、バイトのズレを経験したというお恥ずかしい症例ですが

3D歯科 の3Dプリントの初めての義歯症例ですので、もしこれから3Dプリントで

義歯製作をやってみようという先生がいらっしゃいましたら、見ていただけると嬉しいです。

academy.doctorbook.jp

もし見ていただいた方で質問、感想などありましたら、この記事へコメントいただけますと嬉しいです。 

 

まとめ

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

無料ソフトで作成する3Dプリントデンチャーについて①デジタルを活用した義歯製作アプローチについて

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は3Dプリンターの出力ミスと対応についてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回より、3DプリンターとMedit Design、B4D(Blender for Dental)を用いた

総義歯臨床についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

CADで義歯作成する意義について

総義歯を作成する際には多くのステップ、作業工程を必要とします。

クラウン補綴やダイレクトボンディングなど、その他の処置も同じですが

このステップ1つでも狂いが出ると、他の工程を丁寧に行ってもミスが出ます。

 

総義歯臨床では、特に義歯製作について模型が失われますので

完成でミスが起きてしまった際に、咬合採得・マウントが悪かったのか、

重合から作成で変形が起きたのか、原因が特定しづらいように思っています。

 

特に保険診療にて、旧義歯があり排列試適を省いた際などには

お恥ずかしながら自分がどこでミスをしたのか、あるいは

技工サイドでのマウントのずれ、重合までのミスや変形があったのか

模型もマウント状態も失われていると検証のしようがありません。

 

そのため、もしもCAD操作で各ステップをこなしていくことができれば

CADデータには途中経過も全て保存しておくことができ、

もしもミスが起きたらその時点に戻って検証、やり直すことができます。

 

3D歯科 も義歯はとても好きなのですが、まだまだ諸先輩方のように

自由自在に咬合や吸着を作ることはできていません。

ただCADやデジタルの力を借りると、自分がどこでミスをしているのか

ミスをどのように対応していけばいいかなど、検証から学ぶこともできます。

 

患者さんにも大きなメリットがあります。

CADでの義歯でよく言われていますが、患者さんは義歯を破損、無くしても

電話一本入れてもらえれば医院で義歯の再製作を行えます。

現状3Dプリントには数時間を要しますが、それでも紛失後に

新製するのとは大違いですし、形態も完全に同一のものを作成できます。

 

また、難症例に対応する際に排列試適やフラットテーブルの義歯を作るかもしれませんが

テンポラリーデンチャーとして3Dプリントで簡便に患者さんにお渡しし

実際に使ってみて感想を聞くこともできます。

 

デジタルを活用した義歯製作アプローチ

さて、デジタルで義歯作成を行う際には、アナログと同様に

印象面と、咬合採得が必要です。

 

例えばアナログの印象をとって模型にし、咬合床作成まで通法通りとし、

咬合採得後からスキャンを活用してCADで製作を行うこともできます。

 

もしくは旧義歯があればコピーデンチャーを3Dプリントし、

それを用いて咬座印象や試適を行うことも可能です。

旧義歯の形態を変えないならこの方が従来法よりも簡便です。

 

口腔内スキャナーで直接粘膜情報を取得し、印象材なしで義歯製作することも可能です。

 

このように、採得するのは印象面、咬合採得ですが、

それを得るためにはいくつものアプローチや組み合わせがあります。

 

 

この印象、咬合が得られた後は、CAD操作に移ります。

粘膜面上に義歯床を作成、そこにCADでの人工歯を繋いでいきます。

総義歯の場合、行っている内容は大まかにはこれだけです。

 

スプリント作成と同様に印象スキャンの上に基礎床を乗せ、

人工歯配列を行うところだけ厚みを増やします。

そこに人工歯データをのせ、周りに歯肉をまとわりつかせて完成させます。

もし義歯床と人工歯を分けて出力するとしたら、

ブーリアンオペレーションで義歯床を切り欠きます。

 

3Dプリント総義歯を作成するために必要なものについて

準備するものですが、もちろんソフトウェアが必要です。

 

義歯製作専用モジュールももちろん販売されています。

exocadのアドオンとして、また単体で動く義歯専用のexocadもあります。

他社でもモジュール追加として義歯専用ソフトがあるようです。

 

ただし、 3D歯科 が見聞きした中では、それらのソフトは50~70万円ほどするようです。

仮に総義歯症例の技工料を1万円とすると、50~70床分となります。

上下総義歯の患者さん30人分程度となります。

医院によっては数年分の義歯を賄えるかもしれません。

 

通常の歯科医院が導入するにはハードルが高いでしょう。

数年経ったらCAD技工を取り巻く環境も大きく変化しているはずです。

 

そのため、低価格な義歯専用ソフト、あるいは無料ソフトを使用して作成を試みます。

 

まずはB4D(Blender for dental)です。

現在のところ$599で販売されています。

ただし義歯専用ソフトですが、Model Designer他いくつかのアドオンが別に必要です。

B4D自体、低価格なシェアウェアですが、だんだんとモジュールを増やすと

10万円を超えるようになってしまいました。

 

B4Dの義歯モジュールが発売されたのが最近ですので、

3Dプリント義歯製作が必要になった際には、無料ソフトを駆使して作成していました。

3D歯科 はB4Dの義歯モジュールを購入してはいますが、まだ研究中で

使いこなせてはおりません。

 

 

義歯の3Dプリントは今のところ数症例経験しましたが、

B4Dのデンチャーモジュール発売前だったので、

無料ソフトのMedit Link, Medit Designを使用しました。

 

義歯は構造が単純ですので、CAD操作もそこまで複雑ではありません。

アナログ技工の方がよほど複雑ではないでしょうか。

 

長くなってしまいましたので、次回から使用する材料やMedit Designでどのように作成するか

簡単に紹介しようと思います。

 

まとめ

今回は、デジタルで作成する3Dプリントデンチャーのアプローチをお伝えしました。

B4D義歯モジュールについても、使いこなせてから使用方法などを紹介したいと思います。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

3Dプリントがうまくいかなかった時に考えること

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はフェイススキャンなどのデータのマッチング(重ね合わせ)についてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリントで新しいレジンを使用するときなど、

最適なパラメーターを探したいときに行うこと、についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

3Dプリントのプリントミスはどういうもの?

3Dプリントは、ビルドフレーム(プラットフォーム)という鉄板が

レジンバットという液体レジンを入れた槽に向けて何度も上下することで

プラットフォームに少しずつレジンが積層されていくという機構をしています。

 

そのため、プラットホームから出力物が剥がれたり、

積み重ねる途中にちぎれたり変形したりする可能性があります。

 

対策としては、プリント初期の時点、初期層と言われるプラットフォームとの接続を強固にし

初期層からサポート形態(細い紐状の支え)に移る際に引っ張りすぎず、

プリントする速度をゆっくりにすることです。

 

具体的には

初期層硬化時間を長くする

初期層引き剥がし速度と出力物の引き剥がし速度の差を減らす

出力物の照射時間を長くする

などです。

 

3Dプリント未経験だと何を言っているか分かりづらいですが、

パラメーターで悩んでいる方はお分かりいただけるはずです。

 

出力がうまくいかない場合に行うステップ

新しいレジンを使用している際や、初めて複雑な形態を出力しているときなど

期待を込めて3Dプリントを覗くと、プラットフォームに何も付いてない、

ということは経験があるかもしれません。

 

この時には、ものづくりをする者として、トライエラーを繰り返す必要があります。

 

以下は 3D歯科 がよく行なっている対策です。

当たり前!と思われる人もいるかもしれませんが、

もし、まねできることがあればぜひ行なってみてください。

 

出力ミスの原因

出力ミスの原因

  1. データ自体に問題がある(穴や裏返り)
  2. スライスソフトでの出力物の配置に問題がある
  3. サポート形態に問題がある
  4. スライスソフトのレジンのセッティングに問題がある
  5. 3Dプリンターにアナログなトラブルが発生している

以上がほとんどになるかと思います。

 

試作品を作る

さて、これらの対策でまずオススメしたいことは、

スターピースを作る前に習作を作る、です。

 

TEKや義歯を出力する前に、使い慣れたレジンで試作品を作りましょう。

3D歯科 はElegooのプリンター、MARS 3 Proを使用しているので、

Elegoo製の純正水洗いレジンが使い慣れています。

 

そのため、上記の出力ミス原因のうち、1、2、3については

試作品を作成して精度確認や出力ができるかを確認しておけば

かなりのミスが回避できることになります。

 

 

また、新しいレジンの精度検証を行う際には

Medit Temporaryなどで慣れたレジンで支台歯とクラウンを出力しておき、

新しいレジンでクラウンを出力、慣れたレジンとのフィット感を比較検討して

出力精度が保たれているか(重合時間が長すぎると膨張してクラウンフィットがキツくなる)

確認することができます。

 

www.thingiverse.com

 

こういったデータを使用して精度確認をさらに細かく行うこともできます。

ただし、レジンはそこそこ量を使用するので、高価な歯科用レジンを

テストで何回も出力するのは心が痛みます・・・

先述のクラウンでの比較であれば、精度確認を何度か行なっても

1クラウンあたり100円ほどしか無駄にならないので取り組みやすいです。

 

スライスソフトでの配置(傾け方)

次に、スライスソフトでの出力物の配置ですが、

出力物をナナメにするか、ナナメにしてどちらを下に向けるか

この辺りを考えておくとうまくいきます。

 

上顎前突の全顎模型であれば、フレアーした前歯を上に向けて

前歯の唇面をプラットフォームと直角に近づけて傾けるとうまくいきます。

 

ロングスパンのTEKなどなら、何度か出力してみた感じでは

アーチの中央部分を下向きにすると、プラットフォームからの剥がれが起きにくいようです。

 

サポート形態について

3D歯科 はスライスソフトはChituboxを使用していますが、

このソフトをはじめ、多くのソフトに自動サポート付与の機能があると思います。

症例1つずつサポートを手作業で打っていくのは、手間もかかりますし

後で再現性もなく、精度や失敗の比較検討をしづらいと思います。

 

そのため、サポート形態はソフト任せで自動で行なっています。

模型用で使用するElegoo水洗いレジンでは65%前後。

TEKやデンチャーなどでは50%程度のサポート量付与にして代わりにサポートを太くしています。

 

レジンのセッティング

さて、4、レジンのセッティングですが、これだけは非常に厄介です。

前提としては、レジンと3Dプリンターの組み合わせでそれぞれセッティングを変えないといけない、ということです。

 

同じレジンを使用していても、3Dプリンターが変わると全く設定は変わります。

3Dプリンターは同じでも、レジンの粘稠度などで設定は変えないといけません。

 

メーカーからセッティングが提供されていることが一番ですが

歯科用レジンなどは、ほぼシェアされていません。

 

これについては試行錯誤を繰り返すほかありません。

 

試行錯誤の方法については、

①よく使用するレジンの中で、粘稠度が近いものの設定を流用する

②重合ができなかった場合にどこが壊れていたかを見極める

 >>プラットフォームからすぐ剥がれている:初期硬化時間を増やす

 >>出力物が途中で切れている:引き剥がし速度を落とす、重合時間を増やす

 >>出力物が膨張している:重合時間を減らす

③パラメーターを変更する場合は、極端に変えてみる(出力自体ができるか確認する)

④多少でも改善されたらパラメーターを微調整してスイートスポットを見つける

 

この辺りが実際の方法になります。

完璧なパラメーターが見つかりましたら、私も教えてほしいですが、

今現在で、ほぼ出力ミスのない状態まで突き詰めたChituboxのレジンセッティングを

コチラにて公開しています。

note.com

 

3Dプリンター自体のアナログなトラブル

最後に、常に気をつけないといけないのは5、アナログなトラブルです。

 

非常に残念なミスとしては、出力終了前に電源がタイマーで落ちていた(予想時間より出力時間が増えることもあります)

レジンが足りなかった、入っていても粘度の高いレジンではたっぷり量が必要です。

 

また、前回の出力でミスが起こっていた場合、レジンバット内にレジンのかけらやクズが

残っている場合があります。

毎回濾して綺麗にするのは面倒ですが、出力ミスが起こった時には内部の汚れを確認しましょう。

汚れがあると、そこでプラットフォームが引っかかり、歪みや重合不良の原因になります。

 

まとめ

今回は、3Dプリントの重合ミスをなくすためのノウハウをお伝えしました。

しかし、ノウハウ、と言ってもこれが正しいのかも分かりません。

3D歯科 の試行錯誤と経験からのお話になります。

もしも、もっと簡単にミスを回避する方法などがありましたらぜひコメントから教えてください。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

口腔内スキャナーと、それ以外のSTLデータのマッチング方法

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回までにRevopointスキャナーについて、フェイススキャンとして使用可能なことをお話ししました。

 

今回は、フェイススキャンなどのデータと口腔内スキャナーのデータとの連携、

マッチングについてお話しします。

よろしくお願いします。

 

フェイススキャンを撮影後に

さて、フェイススキャンを取得するとデータはSTLやPLYで出力できます。

それぞれ、

 

STL

口腔内スキャナーやほぼ全てのCADソフトで扱える汎用性の高い拡張子です。

2D画像でいうJPEGのようなもの。ですが画像データに色情報はありません。

 

PLY

STL+カラー。というイメージです。多くのスキャナーでエクスポートできますが、たとえばデンツプライシロナのPrimeScanはPLYのエクスポートができません。

 

と言う特徴があります。

3Dファイルの標準ファイルはSTLです。

フェイススキャンはフルスマイルとスマイル時の、上顎歯列が見える状態のものを取得します。

 

フェイススキャン以外に必要なファイル

通法通りの上下の口腔内スキャンとバイトを取ります。

その上で、上顎歯列と鼻周囲までの連続したスキャンを取ります。

 

鼻周囲を含んだスキャンは、上顎前歯部のスキャンから始めます。

唇側面のみでOKです。

 

上顎前歯を取りつつ、上口唇をスキャンします。

そのまま鼻翼をしっかりスキャンし、可能なら目元までスキャンします。

 

これらは普段お使いの口腔内スキャナーで十分可能です。

コツとしては、マッチングから外れたらすぐに上顎前歯唇側面に戻ること

手早く行って患者さんが上口唇を動かさないようにする、

あるいはアングルワイダーで固定しておきアングルワイダーもスキャンして

マッチングポイントとして使用する、などが挙げられます。

 

マッチングの手順

必要なファイルが揃ったら、マッチングさせていきます。

1、口腔内スキャン

2、鼻を含んだ上顎前歯スキャン

3、フェイススキャン

それぞれ、1つずつマッチングさせていきます。

 

まずは1、の口腔内スキャンの前歯部と、2、の上顎前歯をマッチングさせます。

 

もしここ使用ソフトや口腔内スキャナーのクセでマッチしにくければ、

2、の鼻を含んだスキャンは、上顎前歯から鼻をスキャンした後、

上顎前歯から上顎歯列全体(開口させて)をスキャンすると、ほぼ間違いなくマッチします。

 

次に、2、の鼻部分に向けて3、のフェイススキャンの鼻部分をマッチングさせます。

 

この時に動かすのは3、のフェイススキャンの方です。

このマッチングが、重なる部分が少ないためにソフトによってはうまくいきません。

現状、Medit Designでは精度が高くなりません。

B4DのICP Alignmentモジュールを使用するか(非常に安価で強力です)

MeshLabと言う昔からのフリーソフトを使用しても処理できます(非常に癖のあるソフトです)

 

これにより、1、の口腔内スキャンに3、のフェイススキャンが重なれば完了です!

 

必要なら3、フェイススキャンにCTの顔貌を重ねることで、

CT骨データも結果として口腔内スキャナーに重なります。

CTの場合は、歯が動揺なく存在する場合は歯列データと直接CTの歯をマッチさせてもいいです。

 

この歯の動揺と言うものがくせ者で、SNAPのようなバイトプレートで別で採得するバイトと

歯列データをマッチングさせるような機器では、歯の動揺で歯列全体が動いていると

大きく傾いたりずれてしまいます。

Revopoint POP2では、口から覗く前歯もしっかりライトを当てると

フェイススキャンと同時にデータを取得できるので、動揺歯を圧迫しない状態でマッチできます。

 

まとめ、フェイススキャンの有効性

これは今までもお話ししましたが、しっかりしたフェイススキャンを高精度で取得すると

口唇からどのくらい前歯を見せるか(インサイザルエッジポジション)を決めたり

全顎補綴で咬合平面を決定する助けに使用したり

フェイスボウの代わりに上顎歯列のマウントに使用できます。

 

特に前歯部の審美症例や、アライナー矯正治療、また最近では上下無歯顎の総義歯治療に

非常に楽しく有効活用しています。

 

上下の義歯では日常診療でどんどんフェイススキャンを取り入れており、

従来の咬合平面版の代わりもなるのではないかと思っています。

そのうちに具体的な活用方法がまとまりましたらご紹介いたします。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

日常診療の3Dプリントにかかるコスト(お金と時間)について

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は冬の寒さに弱い3Dプリンターについてお話をしました。

 

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、わたし 3D歯科 が普段使用しているレジンと、

出力にかかっているコストについてお話しします。

よろしくお願いします。

 

使用する3Dプリンターについて

3D歯科 は、現在4台の3Dプリンターを所有、医院で使用しています。

4台も同時使用するのか?と驚かれそうですが、

台数を増やしていったのは、同時使用するためだけでなく、

レジンの入れ替えにかかる時間を省略するためです。

 

3Dプリントで使用するレジンは、色も、重合時間も、口腔内で使用できるかどうかも

差があるので、基本的には混ぜて使用しません。

 

そのため、用途によってレジンを取り替える際には、

レジンバット(レジンを貯めておく容器)も、プラットフォーム(出力物が張り付くプレート)も

それぞれ洗浄、入れ替えをする必要があります。

 

このパーツ類が、歯科専用をうたう3Dプリンターではまた高価であり

それぞれ1万円は下らないです。

これらをレジンの種類ごとに3〜4個ずつ揃えることが

日常臨床に3Dプリンターを活用するために現実的に必要になります。

 

3D歯科 の日常診療でメインで使用するのは、ELEGOO製の民生品のプリンターです。

最新の小型モデルは ELEGOO MARS 3 PROというモデルですが、

非常に安価でコンパクト、出力もキレイで2台購入しました。

 

4K出力であり、Sonic mini 4Kと同等の精度かと思っています。

これを並べて、TEKや人工歯出力専用機、義歯床出力専用機、スプリント出力専用機、

あとは診断用模型出力の専用機として4台使用しています。

 

もちろん、マメな先生であれば毎回バットとプラットフォームを交換すれば

1台で済むのかもしれません。ですが同時使用や急ぎで割り込み出力したい、

というニーズは日常診療で多く出てくるので、2台はあった方がいいと思います。

 

しかも3Dプリンターはどんどん安価で精度が上がってくるので、

超高級品を購入しても5年後には安価なモデルに遅れを取ると思います。

パソコンや、口腔内スキャナーと似たようなサイクルで進化していますね。

 

使用するレジンについて

診断用模型

診断用模型は、その出力安定とコスパの良さで、最近はほとんどこれです。

 

価格はアマゾンが安価ですが、ぜひ↑から調べてみてください。

口腔内にも入れず、診断に使用するくらいであれば、価格を考えると歯科用モデルレジンは

馬鹿馬鹿しくて使えなくなると思います。

 

気になるコストですが、標準的な大人の上下フルの模型で、中空状態にして100円程度です。

模型1組が100円と言うと、格安石膏模型を使用している先生からすると

高価に感じるかもしれません、しかしスキャンとプリントに慣れてしまうと

時間コストと照らし合わせて、もう石膏模型には戻れません。

 

出力時間は50μm精度でMars3シリーズにて1時間以下程度。

その後は水と歯ブラシでじゃぶじゃぶ洗って光重合で終了、後処理も楽々です。

データ処理や出力、後処理含めて基本的には1時間半以下

しっかりした模型が手元にできます。

もちろんこの時間はほぼ放置で機械がやってくれますのでそこまで手はかかりません。

 

テック、義歯人工歯

デンケンハイデンタルのDHプリントを使用することが多くなっています。

何より口腔内使用で薬事が通っているので、患者さんに説明と同意を取る手間が省けます。

 

急に歯科専用になると高価であり、Ciでは500mlで38,000円ほど。

出力するとTEK1本あたり100~300円でしょうか。

予備もいくつか作成して、脱離や破損に備えています。

 

Mars3シリーズで出力が1時間以下

 

上記の模型レジン以外は全て出力後にアルコールでの洗浄が必要です。

アルコールで5分洗い、20~30分光重合機でカリカリに予備重合しています。

合計で1時間半ほどでしょうか。

洗浄の時は少々手間ですが、何十本も一気にプリントや後処理が可能です。

 

DHプリント導入前は、HARZLABのデンタルサンドレジンA2-A3を多用していました。

 

薬事未認可、患者説明が必要なのと、ロシア産であり先行き不透明なので

今後も使用し続けられるかは分かりません。

ただ安価であり、ヤフーや楽天で購入できる手軽さが魅力です。

もちろん口腔内使用できるように設計されていますが、自己責任で使用です。

 

義歯床用レジン

これもDHプリントを使用しています。

Ciで500mlで28,000円程度。

出力すると総義歯1床で1,000円程度でしょうか。

 

現在は趣味で出力や臨床テストをしている段階ですが、非常に有用と感じています。

ただし粘稠性が高く、出力はゆっくりしてあげた方がミスが出ません。

出力時間は6時間ほどかけてしまっています。

帰宅前に3Dプリンターを動かしておき、翌朝に回収するという使い方です。

 

まとめ

口腔内使用するDHプリントは、本来デンケンハイデンタルが販売している

Phrozen Sonic mini 4K対応レジン対応とされています。

ですが、Phrozenは民生品の汎用3Dプリンターなので、セッティングさえうまくいけば

Elegooでもちろん出力可能です。

 

これについては後日にnoteの方でまとめたいと思っています。

冬が近づき、出力ミスもちらほらあるので、安定したパラメーターを

Chituboxで探して、noteの方でダウンロードできるようにしたいと思っています。

 

とにかく3Dプリンターはミリングマシンと比べて安価で取り組みやすいです。

ミリングと違い、一気にたくさん出力できるのも強みです。

ただし、前回も触れたように気温により出力ミスが起きたり、セッティングは

細かく調整することも必要になるかもしれません。

 

この辺りは将来の歯科用レジンの進化に期待したいところです。

ペクトンが3Dプリントできたり、GCなどの大手国内メーカーが開発を進めれば

安価で高品質のものがより臨床に役立てることができるのではないかと思っています。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

3Dプリンターにとっての冬が(再び)近づいてきました

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はRevopointスキャナーについて、フェイススキャンとして使用可能なことをお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリンターについての造形ミスへの対策についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

3Dプリンターは冬に弱い

毎日のように多用している3Dプリンター。

設定を詰めておくことでほぼ100%、造形ミスはないのですが、

最近のように肌寒くなってくると心配になってきます。

 

digitaldentistry.hatenablog.com

 

ちょうど一年前に↑に書きました通り、

3Dプリンター用レジンは寒さによって造形ミスが増えてくることがあります。

 

レジンはその他の歯科用レジンと同様に熱すると柔らかく流れが良くなり、

冷やすと硬くなり、粘稠度が増します。

 

ダイレクトボンディングではインジェクションを行うときや、

またセラミックをCRで接着する際には専用ヒーターで温めている先生もいます。

 

さて、3Dプリントでは、とにかくレジンはサラサラでないといけません。

レジンの溜まった容器に、上下するプレートがレジン液を漬けながら造形するので

ネバネバが強いと、プレート部分の移動速度にレジン液の流れが間に合わなくなります。

 

結果的にレジン液にムラができたり、光重合を開始する前にレジンが流れていないと

重合が予定通りいかず、崩れたり剥がれたりしてしまいます。

 

寒さへの対策

先の記事でも記載した、3Dプリンター本体をヒーターなどで温めるか

レジンバット自体を小型ヒーターで熱しながら重合を行うということが対策になります。

 

考え方としては、レジンの粘稠度を下げるのがポイントとなります。

 

対策1、3Dプリンターを温める

対策2、レジンバットやレジン自体を温める

対策3、粘稠度の低いサラサラしたレジンを使用する

です。

 

対策1、3Dプリンターを温める

非常にアナログな方法ですが、3Dプリンター本体をヒーターや毛布で包むか、

あるいは3Dプリンターを置いている部屋を十分に暖房で温めることです。

 

注意としては、パネルヒーターは温度が上がりすぎないようにしないと

プリンターのカバーが溶けたり、レジンが変質する可能性があります。

 

また、部屋を暖める場合は、重合する少なくとも30分前までには

暖房のスイッチをオンする必要がありそうです。

 

対策2、レジンバットやレジン自体を温める

digitaldentistry.hatenablog.com

 

こちらの記事の途中で紹介している、レジンバットヒーターは(専用品ではないですが)

重合が難しいときによく使用しています。

 

レジンをずっと80℃などで温め続けるのもやや心配なので、

温度でのリミッターを仕込んで使用することも多いです。

 

対策3、粘稠度の低いサラサラしたレジンを使用する

レジンを温めるだけでなく、そもそもレジンの種類を変更することも方法の1つです。

特に確認用模型などの場合であれば、 3D歯科 の個人的には汎用レジンで十分と思っています。

 

歯科用モデルレジンを使用して確認用模型を作るのと、汎用レジンを使用するのでは

10倍ほどのコストが違うだけでなく、レジン液の粘度も異なり、

一般的には汎用レジンの方がよほど簡単に出力できます。

 

ただし、手強いのは口腔内で補綴などに使用するレジンです。

流石に上記のようなレジンをTEKとして使うことはできません。

TEKはTEK用、デンチャーにはデンチャー用のレジンを使用する必要があります。

 

しかし、そうしたレジンは非常に高価な上、出力が難しいです。

そのため少量のレジンを使用してパラメーター調整を行なったり、

レジンバットをヒーターで温めたりと工夫が必要になります。

 

まとめ

とにかく3Dプリンターを扱う者としては、これからの4ヶ月ほどは厳しい戦いです。

仕事で使う機器のため、失敗で出力が遅れてしまうと患者さんに迷惑がかかることもあります。

 

大型で業務用の歯科専用プリンターは、バットヒーターが仕込まれていたり

専用レジンを使用すると重合が安定していたりするようです。

しかしそれでも、サポート形態の付け方によっては出力ミスはあるようです。

 

ものづくりは失敗がつきものです。

いつも使用して機器のクセをつかんでおき、

大事な現場でのミスができるだけ少なくなるように考えておきましょう。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。