3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

このブログで紹介されるリンクの一部はアフィリエイト広告を含みます。 リンク先での購入者に方には影響はありませんが、ブログ運営者に広告収益が入ります。

使ってますか?フェイススキャン

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、話題のカプセルプリンターを比較しました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

 

今回は、改めてフェイススキャンの効果ついて見直してみたいと思います。

 

よろしくお願いします。

 

使ってますか?フェイススキャン

3D歯科 の記事ではかなり昔からフェイススキャンについて取り上げてきました。

当時は、「顔を3Dスキャンして、それをいったい何に使うの?」

という感じもあったと思います。

 

実際、 3D歯科 も最初から明確な目的があってフェイススキャンを始めたわけではなく、

面白そうだから使ってみる、口腔内スキャナーのデータと重ねて

何ができるのか試してみたい、というところから始まりました。

 

しかし数年間使い続けてみるとフェイススキャンそのものよりも、

フェイススキャンを中心に、口腔内スキャナー・CT・CADなどのデータがつながることが

より重要だったのではないかと感じています。

 

口腔内スキャナーほどは毎日使うものでもなく

もしかすると導入したのにほとんど使っていない先生がいるかもしれない・・・

 

今回は、 3D歯科 のフェイススキャン遍歴を振り返りながら、

いま現在、フェイススキャンをどのように考えているかを書いてみます。

 

今は亡きBellusから始まったフェイススキャン

3D歯科 がフェイススキャンを使い始めた頃、

見つけてよく使用していたのがBellusでした。

 

iPhoneを使用して比較的簡単に顔貌を3D化することができ、

当時としてはかなり未来を感じるシステムだったと思います。

IOSで歯列をデジタル化して、そこに患者さんの顔が表示される。

アプリ内で簡単なマッチング操作も行うことができる。

 

今ではそれほど驚かないかもしれませんが、

最初にこれを見たときには

「デジタル歯科はこういう方向に進んでいくのかな」

と思った記憶があります。

 

しかし残念ながらBellusは唐突に開発が終了してしまいました。

(どこかの大手メーカーに買収されたとか何とか・・・)

digitaldentistry.hatenablog.com

↑振り返るとBellusを使っていたのは5年以上前になりますね。

便利なデジタル機器やソフトウェアが、必ずしもずっと残り続けるわけではない。

これはデジタル歯科を長くやっていると、何度も経験することでもあります・・・

 

そこで次に使い始めたのが、Revopoint POP2

などの汎用3Dスキャナーでした。

 

歯科専用でなくても顔はスキャンできる

POP2は、もちろん歯科専用のフェイススキャナーではありません。

本来はいろいろな物体を3Dスキャンするための機械です。

 

しかし実際に使ってみると、

静止した顔貌を取得するという目的であれば

思った以上に使用することができました。

 

その後POP3なども使用してきましたが、POP3では照明が搭載され

(患者さんは眩しいのですが)歯列も比較的綺麗にスキャンでき始めたモデルになります。

 

こういった汎用スキャナーの面白いところは、

フェイススキャンを非常に低いコストから始められることだと思います。

 

もちろん歯科専用機と比較すれば、

ワークフローやIOSとの連携、自動マッチングなどでは大きな違いがあります。

患者さんをじっとさせながらスキャナーを一周させる必要もあり、

撮影者にも慣れが必要です。

 

しかし、「フェイススキャンが自分の臨床に必要なのか分からない」

という段階で、いきなり高額な専用機を購入する必要はないと思います。

 

まず顔を3D化して、口腔内スキャナーと重ねて、

CAD上で患者さんの顔を見ながら設計してみる。

 

この体験だけであれば、

汎用スキャナーでも十分に試すことができます。

 

そして今は、スマートフォンの汎用アプリだけでも

さらに現在では、フェイススキャンを取り入れてみるのに

3Dスキャナーすら必須ではなくなってきています。

 

BellusのようにiPhoneなどのスマートフォンを利用して、

フェイススキャンに近い3Dデータを取得できるアプリも増えてきました。

 

専用フェイススキャナー、汎用3Dスキャナー、スマートフォンアプリ。

フェイスデータを取得する方法自体は選択肢が増えています。

 

もちろん、スマートフォンで撮影したデータと

歯科専用フェイススキャナーで取得したデータを

まったく同じものとして扱うのは難しいと思います。

 

撮影方式も違いますし、細部の再現性やスケール、

何よりも歯列とのマッチングのしやすさといったソフト面ではものすごい差があります

 

ですが、診断資料として顔貌を残す、技工士さんへの説明に使う、

という目的であれば、必ずしも最初から最高精度の機械が必要というわけでもありません。

 

むしろ重要なのは、フェイススキャンを撮ることを特別な作業にしないこと

なのかもしれません。

 

口腔内写真を撮るように、口腔内スキャナーを撮るように、

必要な症例ではフェイスデータも残しておく。

 

ここまで簡単になれば、

フェイススキャンの使い方もかなり変わってきそうです。

 

フェイススキャンは他データと統合してこそ意味を持つ

ただし、フェイススキャンだけを綺麗に撮影しても、

歯科治療で使える情報はそれほど多くありません。

 

フェイススキャンで得られる歯の情報は、どうしても高精度ではなく

例えばCTデータの歯牙情報と同様に、ぼやけたデータとなっています。

いくら高額なCTを用いても、CTデータを変換したSTLデータで

クラウンを作ろうという人はいないでしょう(できると縁下も見えていいかも)。

 

重要なのはフェイスと口腔内スキャナーをどう連携させるか。

3D歯科 は、この方がフェイススキャナーそのものの性能よりも

重要ではないかと思っています。

 

患者さんの顔貌データの中に、口腔内スキャナーで取得した

高精度な歯列データを正しい位置で配置する。

 

例えば前歯部補綴であれば、歯だけを見て設計するのではなく、

顔貌正中に対して歯列がどうなっているか、切縁の傾斜はどうか、

スマイルラインとの関係はどうかということを確認できます。

 

フェイススキャンをスタートする目的となることも多い、

DSD=デジタルスマイルデザインも同様です。

 

昔は2次元の願望や口腔内写真からKeynoteで重ね合わせてDSDを行っていましたが

フェイススキャンがあれば簡単になります。

 

歯を綺麗に並べるだけならCADだけでもできますが、

その歯が患者さんの顔の中でどのように見えるのかは、

顔貌情報がなければ分かりません。

 

逆にフェイスデータと口腔内スキャナーが正しく連携できれば、

患者さんと同じ画面を見ながら

「このくらいの長さにしましょう」

「もう少し正中をこちらに寄せましょう」

といった相談もできます

 

この用途こそがフェイススキャンを導入する目的として重要になるのではないでしょうか。

 

CTまで重ねると、さらに見えるものが増える

さらに、フェイススキャン+口腔内スキャナーだけで終わらず、

CT=Dicomデータまで統合することができます。

 

フェイススキャンは広範囲な軟組織、

口腔内スキャナーは歯列、

CTは骨格や顎関節。

 

それぞれ単独では見えなかったものを、同じ3D空間上で確認することができます。

 

例えば顔貌だけを見れば、咬合平面が傾斜していることは分かります。

しかしCTを重ねれば、その内側にある骨格との関係も確認できます。

さらに歯列を重ねれば、骨格・歯列・顔貌の関係をまとめて見ることができます。

 

もちろんマッチングそのものに誤差があれば

綺麗な3D画像が逆に判断を誤らせる可能性もあります。

 

フェイススキャン時の頭位や表情も、結果に影響します。

この辺りはまだ、デジタル化すれば高精度、というほど単純ではないと思います。

 

ですが平面のレントゲン写真や写真だけではなく、

患者さんを立体的に確認できるというメリットは非常に大きいと感じています。

何よりも正しいマッチング結果をラボサイドに共有できれば

お互いに仕事の制度を大きく向上できるものと思います。

 

フェイススキャンからJaw Motionへ

さらに個人的にかなり面白いと思っているのが

Jaw Motionとの連携です。

 

フェイススキャンが静止した顔貌の記録だとすれば、

Jaw Motionはそこへ下顎の動きを追加する技術です。

 

これまでデジタル上の上下顎模型は、

基本的にはバイトスキャンで取得した一つの位置関係を

再現しているだけでした。

 

しかし実際の患者さんは当然、その位置で噛むだけではありません。

 

そこで患者さん自身の下顎運動を取得して、

バーチャルアーティキュレーターのようにソフト上で実際の動きを再現する。

 

これができるようになると、フェイススキャンの意味も変化してきます。

フェイススキャンによって歯列が顔の中のどこにあるのかを記録し、

CTによって顎関節や骨格がどこにあるのかを確認。

Jaw Motionによってその下顎がどのように動いているのかを記録できます。

 

 

少し前まで、それぞれ別々に取得していたデータが、

一つの患者さんの3Dデータとして統合できるようになりました。

 

現在 3D歯科 はSHINING3DのMetiSmileを使用しながら、

フェイススキャンとJaw Motionを臨床で活用していますが、

数年前にPOP2で顔をスキャンしていた頃には

フェイスの記録がここまで発展するとは思っていませんでした。

デジタル歯科の進歩は本当に早いです!

 

 

全顎補綴では、必須に近いのでは

個人的に特にフェイススキャンを使用したいのが全顎補綴です。

 

単冠であれば、隣在歯と対合歯を見ながら補綴物を作るだけでも

十分な症例はたくさんあります。

 

しかし治療範囲が広くなるほど、歯列だけを見ていて本当に良いのか、

という問題が出てきます。

 

矯正や全顎補綴においてフェイススキャンは必須アイテムと言えるのではないかと思います。

これは、歯科用フェイススキャナーという高額な機械を必ず買いましょう、

という意味ではありません。

 

専用機でも、汎用スキャナーでも、CT内蔵のものでも

場合によってはスマートフォンでも良いと思います。

大切なのは、歯列だけのデジタル化で終わらせないことです。

マッチングさえうまくいけば、フェイススキャンはとても強力なアイテムになってくれます。

 

口腔内スキャナーの次に何を導入しよう?と聞かれたら

数年前であれば、デジタル歯科を始めるならまず口腔内スキャナー。

それだけあればとりあえずスタートできるからと答えていたと思います。

 

口腔内スキャナーがデジタルの入り口なのは今でも変わりません。

ただ、すでに口腔内スキャナーと3Dプリンターを持っていて、

「次に何を追加するとデジタル臨床が変わりますか?」

と聞かれれば、フェイススキャンはかなり面白い選択肢だと思います。

 

CADをさらに高額なものへ変更しても、

できることが少し増えるだけかもしれません。

 

口腔内スキャナーを最新モデルへ変更しても、

スキャン時間が少し短くなるだけかもしれません。

 

しかしフェイススキャンを追加すると、

これまで存在しなかった患者さんの顔という新しい情報が

手元のデジタルワークフローに加わります。

 

そこにCTがつながり、Jaw Motionがつながり、

AIによる診断補助やCAD設計もつながろうとしています。

 

まとめ

Bellusから始まり、POP2などの汎用3Dスキャナーを使い、

(Revopointの製品は一時期全て持っていました!)

現在は歯科用フェイススキャナーやスマートフォンまで、

フェイスデータを取得する方法はずいぶん増えました。

 

もちろん、すべての患者さんでフェイススキャンが必要とは思いません。

毎回CT、フェイススキャン、Jaw Motionまで取得していては

デジタルで効率化しているのか、逆に仕事を増やしているのか分からなくなります・・・

 

ただ、必要な症例で簡単にフェイスデータを取得できる環境は、

作っておいて損はないと思います。

 

まだフェイススキャンを使ったことがない先生も、

まずはスマートフォンや低価格な方法から

一度患者さんの顔とIOSデータを重ねてみてはいかがでしょうか。

その上で面白いと感じたら、歯科用フェイススキャナーは

スタッフに任せられるという大きな魅力があります

 

歯だけを見ていたデジタル歯科が、フェイスを加えると

また違って見えてくるかもしれません。

何となく不要に思えるようなフェイススキャン、ぜひこの世界に飛び込んでみて下さい!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

note.com

 

また、フルデンチャーやその他のため、

ついに歯科用3Dプリンターを導入しようかと考えている皆さんに向けて

大阪3Dプリンターの導入についてのリアルなところをお話しするセミナーを行います。

お申し込みはこちら↑ 

https://3da-start-osaka-3dprinting.peatix.com/

 

 

そのほか、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇しました!
・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介
・Osaka, Japan
2026年09月27日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da Start:失敗しない歯科用3Dプリンター導入戦略! SHINING FLOWで始める Scan・AI Design・Print 1Dayセミナー
@ルーシッドスクエア新大阪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

Ceramix-NanoとMIDASを比較してみる〜カプセル式3Dプリンターはどう違うのか?〜

こんにちは。

 

3D歯科 です。

 

前回は、Kimi K3の飛躍の裏で話題に上る蒸留という言葉について考えました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、最近話題になることが増えてきたカプセル式3Dプリンターについて、

SHINING3DのCeramix-Nanoと、SprintRayのMIDASを比較してみたいと思います。

 

よろしくお願いします。

 

Ceramix-NanoとMIDASを比較してみる

どちらも、レジンが入った専用カプセルを本体へ装着し、

クラウンなどを短時間でプリントするための3Dプリンターです。

 

従来の3Dプリンターのように、レジンボトルから材料をタンクへ注ぎ、

プリント後に残ったレジンを回収して、タンクやプラットフォームを洗浄する・・・

という作業を、かなり少なくできるシステムです。

 

3Dプリンターは便利です。

しかし、実際に日常臨床で使用していると、

プリントすることよりも、その前後の準備や片付けのほうが面倒に感じることがあります。

 

カプセル式プリンターは、その面倒な部分をできるだけ減らし、

クラウンやアンレーをチェアサイドで作りやすくするために登場したシステムだと思います。

 

3D歯科 は現在、Ceramix-NanoとMIDASの両方を試用しています。

 

今回は、カタログ上のスペックを並べるというよりも、

実際に使用して感じている違いについて書いていきます。

 

なお、レジンやソフトウェアは恐ろしいほどの速度で進歩しています。

 

今回の内容は、あくまで2026年8月時点での感想です。

半年後、あるいは1年後には、材料の追加やソフトウェアアップデートによって

評価が大きく変わっている可能性があります。

 

サイズ感:Ceramix-Nanoは非常に小さい

まず両方を並べてみると、

本体サイズはCeramix-Nanoのほうがかなり小さくなっています。

 

 

体感的には、MIDASの半分程度に感じるほどコンパクトです。

実際に院内へ設置することを考えると、

必要となるスペースにはかなり大きな違いがあると思います。

 

MIDASは本体に高級感があり、

いかにもチェアサイド用のプレミアムな医療機器という外観です。

その一方で、(十分小型ではありますが)ある程度の設置スペースが必要になります。

(ちなみに専用のNanoCureという重合器は、電源アダプターが巨大です・・・)

 

Ceramix-Nanoは、非常にコンパクトな本体の中へ必要な機能をまとめたプリンターです。

特に面白いのが、プリント後の光重合機能まで本体の中に組み込まれていることです。

 

MIDASやCeramix-Nanoで用いるセラミッククラウン用レジンは、

プリント後にアルコールを含ませたもので表面を拭き取るか、

アルコールをスプレーして洗浄を行います。

(いわゆる洗浄機は不要です)

 

 

Ceramix-Nanoはその後、プリントに使用した本体で

そのまま二次重合まで進めることができます。

 

つまり、少なくともセラミッククラウン用レジンについては、

本当にこの小さなマシン1台で、プリントから光重合まで完結してしまいます。

 

一般的な3Dプリンターでは、

プリンター本体とは別に洗浄機と光重合機が必要です。

 

院内にプリンターを何台も設置していると、

気が付けばプリンターよりも洗浄機や光重合機の置き場所に困ることがあります。

3D歯科 の医院はすでに大変なことになっています・・・)

 

Ceramix-Nanoは、設置スペースを最小限にしながら

最終補綴に使えるクラウンプリントを始めたい歯科医院には、

とても面白い製品だと思います。

 

現時点のレジン:MIDASのほうが使いやすい印象

次に、プリントできるレジンについて考えます。

 

現時点では、材料の透明感や天然歯との調和については、

MIDASで使用できるレジンのほうが扱いやすい印象があります。

 

Ceramix-Nanoで使用しているLT(透明度の低い)レジンは、

かなり透明度の低い、オペークな材料です。

 

支台歯の色を隠したい場合や、

背景色の影響を受けにくくしたい場合には、この遮蔽性が役立つ可能性があります。

 

しかし、一般的な天然歯に近い透明感を表現しようとすると、

ステインをうまく行うか、症例を選ばない限りは難しさを感じます。

↑左上2にステイン前のCeramix-NanoのLumiCeraクラウンを試適させた状態。

特に隣在歯が天然歯の場合には、

LTレジンのオペーク感と、天然歯の透明感との差が見えやすくなります。

 

もちろん、ステインやグレーズで調整することはできます。

臼歯部であれば、形態や機能を優先し、

表面のキャラクタライズによって十分に対応できる症例もあると思います。

 

ただし、材料そのものが持っている透明感

ステインだけで大きく変えることは難しいです。

 

前歯部や小臼歯部など、

周囲の天然歯との細かな色調調和を求める症例では、

現在のLTレジンは厳しい場合もあるように感じています。

 

この部分については、今後登場する予定のMTレジンに期待しています。

LTよりも透明感のあるMTレジンが追加されれば、

症例に合わせて材料を選択できるようになります。

 

支台歯の色をしっかり隠したい場合にはLTを使用し、

天然歯に近い透明感を求める場合にはMTを使用する。

(また将来にはHT、透明度の高いものが使用できる予定です)

 

このような使い分けができるようになれば、

Ceramix-Nanoの使用範囲はかなり広がると思います。

 

現時点では、材料の透明感や使いやすさについては

MIDASに分があるように感じています。

↑比較的CAD/CAMクラウンの色にそのままでも似ています。

 

ただし、これはCeramix-Nanoのプリント精度が低いという意味ではありません。

Ceramix-Nanoでプリントしたクラウンの適合や表面性状は良好です。

 

造形性能と、材料の光学的な特性については、

分けて考える必要があると思います。

 

ちなみに精度的にはどちらも 3D歯科 は差を感じることはできませんでした。

どちらもフィットは、ミリングクラウンよりも優れているのでは、という意味です。

 

プリント前の準備:Ceramix-Nanoが簡単

カプセル式プリンターの大きな目的は、

プリント前後の作業を簡単にすることだと思います。

 

その点では、Ceramix-Nanoのほうが扱いやすく感じています。

 

Ceramix-Nanoでは、カプセルを本体へ装着し、

少ない操作でプリントを開始できます。

 

一方のMIDASでは、プリント前に

カプセルを手作業で準備する必要があります。

 

つまり差があるのは、あらかじめ混和が必要かどうかです。

 

MIDASは、いわゆるプレミックスのような操作を行った後、

プランジャーを押し込んで材料を造形部分へ移動させます。

 

文章で書くと簡単そうですが、この操作が意外と大変です。

 

特に、プランジャーを最後まで確実に押し切る必要があります。

プランジャーの押し込みが不十分な場合には、

造形に必要な材料が正しく供給されない可能性があります。

 

その結果、最初の層がプラットフォームへ定着せず、

プリントに失敗することがあります。

 

3Dプリントでは、最初の数層が非常に重要です。

初期層が定着しなければ、

その後プリンターが正常に動いているように見えても、

造形物が完成することはありません。

 

プリント終了後にカプセルを確認してみると、何もできていない・・・

という結果になります。

 

3D歯科 も、プランジャーを十分に押し切れていなかったことが

失敗の原因ではないかと考えられる経験がありました。

 

慣れてしまえば問題なく操作できるのかもしれません。

しかし、診療中に使用する機械として考えると、

毎回確実に同じ操作を行う必要があることはやはり気になります。

 

歯科医師だけが使用するのであれば、

院長先生が責任を持って操作方法を覚えてしまえば良いのかもしれません。

 

一方で、複数のスタッフが使用する場合には、

誰が操作しても同じように準備できる仕組みのほうが安心です。

 

プリント前の準備の少なさや、

操作を標準化しやすいという部分については、

Ceramix-Nanoのほうに軍配が上がると思います。

 

カプセル価格:両方とも安くはない

カプセル式プリンターでは、

本体価格だけでなく、カプセルの価格も重要です。

 

Ceramix-NanoとMIDASのカプセル価格は、

現時点では大きく変わらない印象です。

どちらか一方だけが、明らかに安いというわけではありません。

 

そして正直なところ、純粋な材料コストだけを見れば、

どちらもコストパフォーマンスが良いとは言いにくいと思います。

 

カプセル式では、プリントのたびに専用のカプセルを使用します。

 

ボトル式レジンのように、必要な量をタンクへ注ぎ、

複数の補綴物をまとめてプリントする方法と比較すると、

1本あたりの材料費は高くなりやすいです。

 

そのため、できるだけ安い費用でクラウンをプリントしたい、

ということだけが目的であれば、

カプセル式は最適な選択ではないかもしれません。

 

SHINING3DとSprintRayのどちらにも、

ボトル式のハイブリッドセラミックレジンを使用できるハイエンドプリンターがあります。

(SHINING3DのF1と、SprintRayのPro2)

 

材料や地域によっては、今後の対応予定を含む部分もありますが、

最終補綴用のクラウンをボトル式レジンでプリントできる選択肢は増えていくと思います。

 

1本あたりの材料コストを抑えることを最優先するのであれば、

こうしたボトル式レジンに対応したプリンターを選択したほうが合理的になります。

 

特に複数のクラウンをまとめてプリントする場合には、

1回のプリントに配置できる補綴物の数が多くなるため、

カプセル式よりも材料を効率的に使用できると思います。

 

では、カプセル式には意味がないのかというと、

もちろんそうではありません。

 

ボトル式プリンターを使用する場合には、

3Dプリントの面倒な部分を避けることができません。

 

まず、使用するレジンを十分に撹拌し、プリンターのレジンタンクへ注ぐ必要があります。

プリント後にはプラットフォームを取り外し、造形物を洗浄します。

 

残ったレジンを保管する場合には、

濾過してボトルへ戻したり、タンクを適切に管理したりする必要もあります。

 

さらに、異なるシェードのレジンを使用する場合には、

シェードごとにレジンタンクを準備するか、

その都度タンクを洗浄してレジンを交換する必要があります。

 

A2をプリントした後にA3を使用し、その次はブリーチシェードを使用する・・・

このような使い方をしようとすると、レジンタンクがどんどん増えていきます。

 

タンクごとに材料名や使用開始日を管理し、レジンの状態も確認しなければなりません。

また、ボトル式のハイブリッドセラミックレジンは、

カプセル式と比較するとプリントに時間がかかる可能性があります。

 

複数の補綴物をまとめてプリントする場合には効率的ですが、

診療中に1本だけ短時間で作りたい場合には、

カプセル式の速度や簡便さが大きなメリットになります。

 

つまり、カプセル式で支払っている費用は、

レジンそのものの価格だけではないのだと思います。

 

プリント準備の時間、片付けの時間、

レジンタンクを交換する手間や、材料管理の負担を少なくするための費用でもあります。

 

安さを優先するのであれば、ボトル式。

 

多少の材料費がかかっても、

チェアサイドで短時間かつ簡単に使用したいのであれば、カプセル式。

 

この部分は、どちらが優れているというよりも、

何に対して費用を支払うのかという考え方の違いになると思います。

 

ソフトウェア:好みが分かれる

クラウンをプリントするためには、プリンター本体とレジンだけでは不十分です。

口腔内スキャンデータからクラウンを設計し、

プリント用のデータを作成するソフトウェアが必要になります。

 

MIDASとCeramix-Nanoには、それぞれクラウンを生成するためのソフトウェアがあります。

 

現段階では、どちらも対象となるハードウェアのユーザーであれば、

無料で使用できるような扱いになっています。(かたち上はクレジットでもほぼ無料)

 

ソフトウェアの費用が別に必要ないことは、導入時には大きなメリットだと思います。

 

ただし、操作性については好みが分かれそうです。

個人的には、SprintRayのクラウン生成ソフトウェアには

少し使いにくさを感じています。

 

AIによってクラウンを自動生成できること自体は、とても便利です。

AIが形態を作り、隣接面コンタクトや咬合接触、

マージン周辺の形態などを確認し、必要に応じて修正します。

 

これは普段使用しているCADソフトとの違いによって、

3D歯科 が使いにくいと感じているだけかもしれません。

 

最初からそのソフトウェアを中心に使用している方であれば、

異なる評価になる可能性があります。

 

Ceramix-Nanoのソフトウェア(クラウド上のソフト)はシンプルで使用しやすく

生成速度も速くなってきています。

 

今後プリンター本体の性能差が小さくなっていけば、

最終的にはソフトウェアの使いやすさが

システム選択の大きな理由になるのかもしれません。

 

Restoreを控えるMIDAS

今後の材料展開については、MIDASに期待している部分があります。

 

その一つが、Restoreという新しいレジンです。

Restoreは、最終補綴用の修復材料としてリリースが待たれているレジンです。

 

実際の性能や長期的な臨床結果については、

正式に使用できるようになってから確認する必要があります。

 

しかし、現在聞いている範囲では、かなり期待できそうな材料です。

歯科用3Dプリンターでは本体の性能だけでなく、使用できるレジンの性能が非常に重要です。

 

どれだけプリンターの精度が高くても、

レジンの強度、靱性、耐摩耗性、色調安定性などが十分でなければ、

最終補綴物として安心して使用することは難しくなります。

 

そのため、Restoreのような新しい修復用レジンが準備されていることは、

MIDASにとって大きな強みになる可能性があります。

 

一方、Ceramix-Nanoでは、今後MT(中程度透明感)レジンの登場が予定されています。

 

現在のLTレジンよりも透明感のある材料が使用できるようになれば、

Ceramix-Nanoの評価がさらに良くなると思います。

 

現時点では材料の完成度は、今後のRestoreへの期待を含めて、

MIDASが少し先を進んでいるようにも見えます

 

ただし、レジン材料の進歩は非常に速いです。

現在は大きな差に見えていても、

1年後、2年後には、ほとんど差がなくなっている可能性があります。

 

プリンターを選ぶときには、

現在使用できる材料だけでなく、

今後どのようなレジンが追加されるのかも重要になります。

 

カプセル式プリンターを購入するということは、

本体だけではなく、そのメーカーが作る材料のエコシステムを

選ぶことでもあるのだと思います。

 

本体価格は約220万円と約110万円

導入時に大きな違いとなるのが、本体価格です。

 

MIDASは約220万円、

Ceramix-Nanoは約110万円とされています。

 

これは定価、あるいは予定価格を含む目安です。

実際の販売価格はキャンペーン、保守契約、などによって変わる可能性があります。

 

それでも、現在示されている価格を比較すると、

Ceramix-NanoはMIDASのおよそ半額になります。

この差はかなり大きいと思います。

 

MIDASには本体の高級感があり、

プレミアムなチェアサイドシステムとしての魅力があります。

 

現時点でのレジンの使いやすさや、今後のRestoreへの期待もあります。

ある程度価格が高くても、本体の質感や材料の完成度を優先したい場合には、

MIDASが候補になりそうです。

 

一方のCeramix-Nanoは、約110万円という価格に加えて本体が非常にコンパクトです。

 

さらに、光重合機能まで本体に組み込まれています。

別に洗浄機や光重合機を準備する必要が少ないことを考えると、

システム全体での導入費用や設置スペースにも差が出ると思います。

 

Ceramix-Nanoは、MIDASを単純に小型化して安くした製品ではありません。

(機構的なところも全く別でカプセル内のレジン量もMIDASが多いです)

異なる考え方でチェアサイドプリントを実現しようとしている

プリンターだと感じています。

 

MIDASは、材料の完成度や高級感を重視したシステム。

Ceramix-Nanoは、コンパクトさや導入価格、プリント前後の簡便さを重視したシステム。

 

大きく分けると、そのような違いがあるのかもしれません。

 

結局どちらを選ぶのか、別の選択肢を選ぶのか

現時点で使用できるレジンの透明感や扱いやすさを重視し、

本体にも高級感を求める場合には、MIDASが候補になりそうです。

今後登場するRestoreにも期待できます。

ただし、プリント前のプレミックスやプランジャーの操作には注意が必要です。

複数のスタッフが使用する場合には、

院内で操作方法を統一しておいたほうが良いと思います。

 

一方、設置スペースを小さくしたい場合や、導入費用を抑えたい場合、

プリント前後の操作をできるだけ簡単にしたい場合には、

Ceramix-Nanoが使いやすそうです。

約110万円という価格で、

光重合まで行える小さなシステムを導入できることは、

かなり魅力的だと思います。

 

ただし、現在のLTレジンは透明度が低く、

天然歯との色調調和には少し工夫が必要です。

今後登場するMTレジンによって、

この部分がどこまで改善されるのかに期待しています。

 

そして、カプセル価格については、どちらも安いとは言いにくいです。

コストだけを優先するのであれば、

ボトル式のハイブリッドセラミックレジンに対応した

ハイエンドプリンターのほうが合理的になる可能性があります。

 

ただし、その場合には、

レジンの撹拌、プリント後の清掃、シェードごとのタンク交換や材料管理といった、

3Dプリントの面倒な部分が戻ってきます。

 

プリント速度についても、

1本のクラウンを短時間で作るのであれば、

カプセル式に魅力を感じる場面があると思います。

カプセル式は、材料費を安くするためのシステムではありません。

多少の材料費を支払う代わりに、

準備や片付けを減らし、診療中でも使いやすくするシステムなのだと思います。

 

まとめ

今回は、Ceramix-NanoとMIDASについて、

実際に使用して感じた違いをまとめてみました。

同じカプセル式3Dプリンターですが、

それぞれが目指している方向は少し異なります。

 

材料の完成度や高級感、Restoreへの期待を重視するのであればMIDAS。

 

コンパクトさ、導入価格、プリント準備の簡単さ、

本体内で光重合まで行えることを重視するのであればCeramix-Nano。

 

材料費をできるだけ抑え、複数の補綴物をまとめてプリントしたいのであれば、

ボトル式レジンに対応したハイエンドプリンター。

 

現時点では、このような選び方になるのではないでしょうか。

 

3Dプリンターの材料は、数か月単位で新しいものが登場します。

 

RestoreとMT、HTレジンが実際に使用できるようになったとき、

MIDASとCeramix-Nanoの評価も、また変わっているかもしれません。

 

こうした製品が他社からも出てくるのか、この2社だけが牽引していくのか、

あるいは全く別の選択肢が広がっていくのか・・・

歯科3Dプリント業界はまだまだ楽しく、騒がしい状況です!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

note.com

 

また、フルデンチャーやその他のため、

ついに歯科用3Dプリンターを導入しようかと考えている皆さんに向けて

大阪3Dプリンターの導入についてのリアルなところをお話しするセミナーを行います。

お申し込みはこちら↑ 

https://3da-start-osaka-3dprinting.peatix.com/

 

 

そのほか、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇しました!
・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介
・Osaka, Japan
2026年09月27日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da Start:失敗しない歯科用3Dプリンター導入戦略! SHINING FLOWで始める Scan・AI Design・Print 1Dayセミナー
@ルーシッドスクエア新大阪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

AI界隈の「蒸留」は、歯科治療に及んでくるか否か?(長文です・・・)

こんにちは。

 

3D歯科 です。

 

前回は、AIコーディングによる歯科CADアプリの開発の可能性についてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、AI界隈で話題になることが増えてきた「蒸留」という考え方が、

歯科治療やCADソフトウェアにも及んでくるのではないか、ということについて考えます。

 

よろしくお願いします。

 

AIにおける「蒸留」とは何か

AIの世界では、巨大で高性能なAIが持つ能力をより小さなAIへ移していく技術があります。

これを一般に、「蒸留」と呼んでいるようです。

 

単純にプログラムの中身をコピーするということではありません。

 

高性能なAIに大量の質問を行い、その回答や判断の傾向を学習データとして利用することで、

元のAIに近い振る舞いをする別のAI(軽量で安価なAI)を作っていく考え方です。

 

例えるなら、非常に優秀な先生に何万問もの問題を解いてもらい、

その解答だけでなく、どのような考え方で答えを導き出しているのかまで

別の生徒に学ばせるようなものです。

 

元となるAIの内部構造を直接見ることができなくても、

入力と出力を大量に観察することで、その能力の一部を再現できる可能性があります。

 

最近のAI業界では、Claud Fable5のような高性能なAIモデルの出力を

他社が別のAIの学習に利用しているのではないか、という議論がたびたび起こっています。

 

 

 

どこまでが正当な学習で、どこからが模倣なのかというのは、

技術的にも法的にも、まだ明確な線引きができていない分野だと思います。

 

AIの「重み」とは何か

ここ最近のKimi K3DeepSeekショックに次ぐ高性能なモデルが中国から登場)ショックを

調べていると、「重み」という言葉がよく出てきます。

 

AIの「重み」とは、AIが学習によって獲得した膨大な数値の集合のようです。

 

AIは、文章や画像、音声などをそのまま記憶しているわけではありません。

大量のデータを学習する中で、どの情報をどの程度重視するのかという関係性を、

非常に多くの数値として内部に保存しています。

 

この数値の集まりが、AIの「重み」です。

 

人間で言えば、長年の経験によって身についた判断基準や、

無意識に行っている考え方に近いかもしれません。

 

ある質問を受けたときに、何を重要と判断し、どのような順番で言葉を組み立てるのか。

その根底にあるものが、AIでは「重み」によって表現されています。

 

重みが公開されているAIは、「オープンウェイトモデル」と呼ばれることがあります。

「オープンソース」と似た言葉ですが、まったく同じではありません。

 

プログラムのコードだけでなく、学習済みの重みを利用できることで、

利用者が自分の環境でAIを動かしたり、追加学習を行ったりできるようになるようです。

 

一方で学習に使ったデータや開発工程まで、すべてが公開されているとは限りません。

そのため、オープンウェイトという言葉は、内部のすべてを公開するという意味ではなく、

学習済みの能力を一定の条件で利用可能にするという考え方に近いと思います。

 

先輩の治療を見学して技術を盗む

歯科医師や歯科技工士は、昔から上手な先生の仕事を見学して学んできました。

 

形成の角度やバーの動かし方、咬合調整の順番、人工歯排列の考え方、補綴物の形態など、

教科書だけでは理解できない部分を実際の治療から学びます。

 

もちろん、実際には技術を「盗む」というよりも、先輩の仕事を観察し、

自分なりに理解し、何度も練習することで身につけていくものです。

 

非常に上手な先生の治療を一度見ただけで、同じ治療ができるようになるわけでは基本的には

(たまにクラスに1人ぐらいいますよね、本当にできてしまう先生が・・・)ありません。

 

しかし、何百症例、何千症例と見学し、

治療前の状態と治療結果を比較し続けたらどうでしょうか。

 

少なくともその先生が何を重視し、どのような判断を行っているのかは

少しずつ理解できるようになるはずです。

 

AIによる蒸留も、これに近い考え方なのかもしれません。

 

優れたAIやソフトウェアの動作を何度も観察しその入力と出力の関係を学ぶことで、

内部のコードを直接見なくても、似たような判断を行う仕組みを作れる可能性があります。

(念のためですが、 3D歯科 はそうしたことは行なっておりません)

 

CAD化された歯科治療はAIにとって学びやすい

これまでの歯科治療は、口腔内で行われるアナログな作業が中心でした。

形成時にどの程度バーを傾けたのか、咬合調整でどこを削ったのか、

義歯の辺縁をどのように決めたのか。

 

こうした判断は術者の頭の中にあり、外部から正確に記録することは困難でした。

 

ところが、歯科治療がデジタル化されることで状況は変わってきています。

 

口腔内スキャナーで術前の口腔内をスキャンし、CAD上で設計を行い、

ミリングマシンや3Dプリンターで補綴物を製作する。

 

このワークフローでは、治療前のデータ、設計途中のデータ、最終的な設計結果、

製作後の補綴物というように、多くの工程がデジタルデータとして残ります。

 

AIから見ると、これは非常に学習しやすい環境です。

 

どのような支台歯形態に対して、どのようなクラウンが設計されたのか。

対合歯や隣在歯との関係をどのように処理したのか。

咬合接触をどこに付与し、どの部分を避けたのか。

 

入力データと最終結果を大量に比較できれば、

ソフトウェアが持つ設計傾向を推測できるかもしれません。

 

さらにAIエージェントがCADソフトを直接操作できるようになれば、

完成したデータだけでなく、設計途中の操作手順まで観察できる可能性があります

(BlenderなどはCADをコードで操作可能ですし、操作ログが残ります)

 

どのボタンを押し、どのパラメータを変更し、どの順番で形態を修正したのか・・・

そこまで記録されれば、単なる結果の模倣ではなく

ソフトウェア内部の考え方に近いものまで学習される可能性があります。

 

AIエージェントがソフトウェアを大量に使用したらどうなるか

現在でもAIはブラウザやパソコンを操作し(権限を与えすぎたら大変なことになる)、

複数のソフトウェアを連携させることができるようになりつつあります。

 

今後、歯科用CADをAIエージェントが操作することも特別なことではなくなると思います。

 

人間が1日に処理できる症例数には限界があります。

 

しかしAIエージェントであれば同じソフトウェアへ大量のデータを入力し、

設計結果を保存し、その傾向を分析するという作業を繰り返すことができます。

 

仮に数万件、数十万件の入力と出力を集めることができれば、

そのソフトウェアがどのような基準で形態を生成しているのかを

(恐ろしいことに他社であっても)ある程度推測できる可能性があります。

 

もちろん、まったく同じソフトウェアを再現できるとは限りません。

 

CADソフトウェアには外部からは確認できない処理や、

長年の研究によって開発されたアルゴリズムが含まれています。

 

しかし、利用者が必要とする結果が十分に近ければ、内部構造が異なっていても

実用上は似たサービスとして成立してしまう可能性があります。

 

これは、ソフトウェア開発会社にとって大きな問題になるかもしれません。

 

時間と費用をかけて構築した機能が、サービスを大量に利用されることによって

別のAIへ移されてしまうのであれば、現在のソフトウェア提供方法そのものを

見直す必要が出てきます。

 

歯科CADには開発者の思想が詰まっている

歯科用CADは、単に歯の形を自動生成するだけのプログラムではありません。

 

 

どのような咬頭形態を理想とし、咬合接触をどの程度強く付与するのか。

隣接面をどの程度の強さに設定するのか、非機能咬頭をどのように表現するのか。

アンダーカットをどこまで許容し、どの部分を自動修正するのか・・・

 

そこにはソフトウェア開発者だけでなく、おそらくはフィードバックに参加した

歯科医師や歯科技工士の臨床経験、研究結果、設計思想が詰め込まれています。

 

同じ支台歯データを読み込ませても、CADソフトによって

完成するクラウンの形態は異なります。

 

これは計算能力の差だけではありません。

開発者が「どのような補綴物を良い形態と考えているのか」

という価値観がおそらくは反映されているためです。

 

AIによってその振る舞いが再現されるということは、

単にプログラムが模倣されるだけではなく、開発者が積み重ねてきた

臨床的な思想まで利用されることになるかもしれません。

 

ちなみに音楽制作の分野では「シグニチャーエフェクター」といって、

良いエンジニアが調整した音質向上のノウハウを

誰でもワンクリックで再現できるソフトが存在します。

これは元のエンジニアにもソフト収益が入る仕組みですが、

蒸留で不正にノウハウをコピーされるとその限りではないはずです。

 

人間の世界でも、先人の技術を参考にして新しい治療方法が生まれてきました。

学ぶこと自体を止めるべきではないと思います。

しかし参考にした技術や知識に対して、誰が開発したものなのかを明示し

適切に評価する文化は必要だと思います。

 

引用を禁止するか、論文のように引用元を示す仕組み

学術論文では、他者の研究や考え方を利用する場合、引用元を明記します。

 

どの論文を参考にし、どの研究結果をもとに考察したのかを示すことで

元の研究者へ敬意を払い、読者が情報を確認できるようにしています。

引用数で論文の権威性が増すというのはよく知られた話です。

 

ソフトウェアやAIについても、今後は同じような考え方が必要になるかもしれません。

 

あるソフトウェアのコードを参考にした場合や、その設計思想を取り入れた場合には

開発者名やプロジェクト名をインターフェース上に表示する。

(あるいは開発者により参考にすることを禁止する場合もあるでしょう)

 

ソフトウェア内のクレジット画面やライセンス情報に、引用元として明記する。

そのような仕組みが一般的になれば、オープンな開発と

開発者への敬意を両立しやすくなると思います。

 

AIによってコードの生成が容易になったからこそ、どこから着想を得たのかという情報は

以前よりも重要になるかもしれません。

 

クレジット制は開発者を守る仕組みになるかもしれない

ソフトウェアの販売方法は、SaaSと呼ばれるソフト全盛になったように、

買い切り型からサブスクリプション型へ大きく変化してきました。

 

そして今後は、利用回数に応じて料金が発生する「クレジット制」や「従量課金制」が

さらに重要になるかもしれません。

 

買い切り型やサブスク契約型のソフトウェアであれば、

一度購入、加入した後は何回利用しても追加費用が発生しません。

 

人間が通常の範囲で利用するのであれば、それでも大きな問題はありませんでした。

 

しかしAIエージェントが自動で操作し、短期間に何万回も設計を行うようになれば、

従来の料金体系では利用量と収益がまったく釣り合わなくなる可能性があります。

 

また、その大量の利用結果が別のAIを学習させるために使われる可能性もあります。

 

クレジット制であれば、利用されるたびに開発者側へ収益が発生します。

仮に結果として蒸留に近いことが行われたとしても

それまでの大量利用に応じた費用を回収できます。

 

もちろん、不正な学習や模倣を料金で正当化できるという意味ではありません

 

しかし、AIエージェントがソフトウェアを大量に利用する時代には

利用量に応じて開発者へ還元される仕組みのほうが現実的だと思います。

ソフトウェア開発の方々がこの記事を読んでいただいていることを期待しています

 

将来的には人間が操作した場合とAIエージェントが操作した場合で、

ライセンスや料金体系が異なるソフトウェアも登場するかもしれません。

 

ソフトウェアは「操作するもの」ではなくなる可能性がある

前回にも紹介したテーマですが、自分でアプリ開発を行なっていると

ますますこう感じざるを得なくなってきています。

 

現在の歯科用CADでは、人間が画面を見ながらマウスを操作します。

しかし数年後には、人間が直接CAD画面を触る機会が大きく減っている可能性があります。

 

患者さんの口腔内データやCT、顔貌、顎運動データをAIエージェントへ渡し、

希望する治療方針を文章で入力する(あるいはそれすらもAIに任せる)。

 

するとAIエージェントが複数のソフトウェアをサブエージェントにより操作し、

診断支援、設計、検証、製作データの出力までを自動で行う。

 

人間が受け取るのは途中のCAD画面ではなく、

最終的な治療案とSTLデータ、そのダウンロードの決定権だけになるかもしれません。

 

そうなると、現在のように一つのソフトウェアを購入して

人間が操作するという考え方も変わります。

 

AIエージェントが必要な機能を持つサービスをその都度選択し、

API(外部ソフト使用料的なもの)やクレジットを利用して処理する形になるかもしれません。

 

ユーザーは、どのCADソフトを使ったのかさえ意識しなくなる可能性があります

 

AIエージェントから見れば、各ソフトウェアは一つの道具です。

 

必要な処理だけを呼び出し、複数のサービスを組み合わせ、最終的な結果を作り上げます。

そのとき、ソフトウェアの価値はインターフェースの使いやすさだけではなく、

AIエージェントから利用しやすいことや出力が安定していることへ移っていくと思います。

 

数年後にはソフトウェア業界が変わっているかもしれない

この数年のAIの進化を見ていると、ますます数年先を正確に予測することは非常に困難です。

 

少し前までは、AIが自然な文章を書くことだけでも驚かれていました。

現在では、画像や動画、音楽、3Dデータを生成し、プログラムを書き、

パソコンの画面を操作するところまで進んでいます。

 

3D歯科 も、AIコーディングによって実際に歯科用アプリケーションを開発しています。

 

数年前であれば、専門のエンジニアチームがいなければ実現できないと思っていた機能が、

個人でも形にできるようになってきました。

 

今後さらにAIが進歩し、複数の企業が同等レベルのAIを持つようになれば、

ソフトウェア開発の速度は現在よりも大幅に速くなるはずです。

 

1つの優れた機能が発表された数か月後には、似た機能が複数のサービスへ搭載される。

 

そのようなことが当たり前になるかもしれません。

 

2年後、3年後には、現在のソフトウェア会社、ユーザー、AIエージェントという

関係そのものが、まったく新しい形へ変化している可能性があります。

 

DentaMeshはオープンウェイトに近い気持ちで開発している

3D歯科 は、DentaMeshという歯科用CADアプリ群の開発を行っています。

(ただし治療用や診断用ではなく、研究用、テスト用となっています。ご注意ください)

 

フルデンチャーを設計するアプリケーションから始まり、

現在は咬合器そのものの機能に関するモジュールや、

Jaw Motionデータを読み込んで顎運動を確認するアプリなども開発、公開しています。

 

 

これらは無料でダウンロードできるようにしています。

(咬合器とJawMotionアプリは今さっき公開しました!)

ryosuketakahashi3d.gumroad.com

ryosuketakahashi3d.gumroad.com

 

DentaMeshについては、厳密な意味でAIのオープンウェイトモデルと同じではありません。

(コードに何の対策も、使用制限も付与していません)

 

しかし、開発に対する気持ちとしては、オープンウェイトに近い部分があります。

 

完成したアプリケーションを使ってもらうだけでなく、

どのような考え方で機能を作っているのかを確認し、

必要であればコードを参考にしてもらうことも可能です。

 

3D歯科 自身も、これまで多くのソフトウェアや論文、

開発者の公開情報から学んできました。

 

公開された技術を参考にし、別の開発者が新しい機能を作り、

さらに次の開発へつながっていく。

 

この循環自体は、とても良いものだと思っています。

 

一方で、コードや設計思想を参考にして新しいアプリケーションを作る場合には、

DentaMeshというプロジェクト名や、開発者の名前を明記していただきたいと思います。

 

論文で過去の研究を引用するように、ソフトウェアのインターフェースやクレジット画面、

ライセンス情報などに、参考元として表示していただければ十分です。

 

これは、技術を独占したいという意味ではありません。

誰がどのような考え方で最初の仕組みを作ったのか、その履歴を残したいということです。

 

オープンな開発を続けるためには、利用する側の敬意と

開発した側の名前が残る仕組みが必要だと考えています。

 

デジタルに全振りしているからこそ他人事ではない

今回も長い文章になってしまいました。

3D歯科 は、診療だけでなく、セミナー、ブログ、ソフトウェア開発まで、

活動の多くをデジタル歯科へ振り切っています

 

そのためAIによってデジタル歯科が大きく進歩することは、とても楽しみです。

 

これまで難しかった設計が自動化され、治療時間が短縮され、

より多くの患者さんへ質の高い治療を提供できる可能性があります。

 

一方で、現在価値があると思われている技術やソフトウェアが、

数年後には簡単に陳腐化したり、再現される可能性もあります。

 

開発した機能がすぐに模倣されるのであれば、開発を頑張っているメーカーは

どのように開発費を回収するのか。

 

AIが設計を行うようになったとき、歯科医師や歯科技工士の技術をどのように評価するのか。

 

誰かの治療結果を学習して作られたAIに対して、元となった術者の名前や価値は残るのか。

 

これは、ソフトウェア会社だけの問題ではありません。

デジタルデータを使って治療を行う歯科医師や歯科技工士にとっても、

将来的には非常に重要な問題になると思います。

 

まとめ

AI業界における蒸留とは、高性能なAIの出力や振る舞いを大量に学習し

別のAIへ能力を移していく考え方です。

 

歯科治療がアナログで行われている間は術者の技術を完全にデータ化することは困難でした。

 

しかし、口腔内スキャナー、CAD、CAM、3Dプリンターによって

治療工程がデジタル化されることで、AIが学べる情報は急速に増えています。

 

AIエージェントが歯科用CADを大量に操作するようになれば、

ソフトウェアの入力と出力だけでなく、手順や判断傾向まで学習される可能性があります。

 

これは歯科用ソフトウェアの進歩を加速させる一方で、

開発者の技術や思想が、どのように守られるのかという問題を生みます。

 

技術を閉じるのではなく、共有しながら開発者の価値も残していく。

AI時代には、その両方を成立させる新しい文化が必要なのかもしれません。

 

思っていた以上の加速度で進んでいくAI業界において、

人生をデジタル歯科に全振りしている 3D歯科 にとっては、まさに死活問題です。

 

ただし、不安以上に楽しみでもあります。

数年後、歯科医師は自分でCADを操作しているのでしょうか。

 

それともAIエージェントへ治療方針を伝え、

完成したデータだけを受け取っているのでしょうか。

 

AI界隈で起きている「蒸留」は、いずれ歯科治療や歯科用CADにも及んでくるのか。

少なくともAIが恐るべきスピードで進化している今、

その可能性について考え始める時期には、すでに入っているのだと思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

 

今月3Da Proにて、3Dプリントフルデンチャーをテーマに取り上げて

極限までCADを単純化したアナログ的なコツををアップしています!

個人的には今月紹介の3Da Proの内容がとても自信がある部分になりますので、

3DプリントにCADがイヤで取り組まなかった先生方は、

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

note.com

note.com

 

また、フルデンチャーやその他のため、

ついに歯科用3Dプリンターを導入しようかと考えている皆さんに向けて

大阪3Dプリンターの導入についてのリアルなところをお話しするセミナーを行います。

お申し込みはこちら↑ 

https://3da-start-osaka-3dprinting.peatix.com/

 

 

そのほか、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Tokyo, Japan
2026年07月26日(日)10:00 - 16:00
【東京開催】3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!
1日デジタルマスタークラス
満員御礼、お申し込みありがとうございました!
・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇予定
・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介
・Osaka, Japan
2026年09月27日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da Start:失敗しない歯科用3Dプリンター導入戦略! SHINING FLOWで始める Scan・AI Design・Print 1Dayセミナー
@ルーシッドスクエア新大阪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

AIコーディングで歯科CADアプリ!?〜CADの全行程自動化の足音が聞こえる〜

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、歯科用3Dプリンターに低価格で実践的なモデルが登場しているお話をしました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、AIコーディングによる歯科CADアプリの開発の可能性について考えてみます。

 

よろしくお願いします。

 

AIに相談しながら、アプリを作れる時代

ここ最近、AIを活用したプログラミング環境が急速に進化しています。

 

代表的なものとして、OpenAIのCodexや、

Claude Fable5などのモデルのコーディング特化機能などがあります。

 

 

これまでは、アプリケーションを作ろうと思えば、

プログラミング言語を学び、コードを書き、エラーを確認し、修正する必要がありました。

 

もちろん、現在でもプログラミングの知識があった方が、

より正確で高度な開発ができることに変わりはありません。

 

しかし、AIコーディングを使うことで、そのハードルは間違いなく下がり始めています。

 

ボタンを押した際に特定の処理を実行する。

STLデータを読み込み、画面上で移動できるようにする。←一瞬で作れます・・・

選択したメッシュだけを削除する。

2つの形状を結合し、STLとして出力する。

 

このような内容をAIに伝えると、必要なコードを提案し(AIが全て書いて)、

実際のアプリとして組み立ててくれるようになってきました。

 

少し前までであれば、アプリ開発会社に依頼しなければ実現が難しかった機能でも、

CADの知識があれば、また内容によっては個人で試作できる時代になりつつあります。

 

歯科医師でも歯科CADアプリを作れるのか

では、歯科医師や歯科技工士でも、歯科用CADアプリを作ることができるのでしょうか。

 

3D歯科 は、機能を限定したアプリであれば十分に可能性があると感じています。

 

もちろん、exocadや3Shapeのような、多数の機能を持つ完成度の高い歯科CADソフト

すぐに個人で再現できるという意味ではありません

 

歯科CADには、非常に多くの機能が必要です。

 

メッシュの読み込み、位置合わせ、マージン設定、アンダーカット処理(てごわい)、

オフセット、スムージング、ブーリアン演算(てごわい)、

咬合調整、データ修復、STL出力など・・・さまざまな工程が組み合わされています。

 

さらに、実際の臨床で安定して使用するためには精度だけでなく、

操作性やエラー処理、さまざまなスキャンデータへの対応も必要です。

(口腔内スキャナーの取得データに問題があると、開発はさらに困難になります)

 

一方で、もしCADのバックグラウンドで何が行われているのかを理解していれば

その処理を一つずつAIに実装してもらうことができます

 

例えば、義歯床を作る工程では、模型データを読み込み、

不要なアンダーカットを処理し、辺縁線を設定します。

 

その後、一定の厚みを付与し、人工歯データと結合し、完成データを出力します。

 

クラウンであれば、支台歯を認識し、マージンラインを設定し、セメントスペースを付与し

ライブラリデータを配置し調整します。

 

さらに、隣接面と咬合面を調整し、最終形態を出力します。

 

このように、それぞれの処理を細かく分解しAIに一つずつ実装してもらえば、

限定的な機能を持つCADアプリを作ることは、以前よりもはるかに現実的になっています。

 

 

大切なのは、コードよりもCAD工程の理解かもしれない

AIコーディングの時代になると、アプリ開発に必要な能力も変わってくるかもしれません。

 

これまでは、どのようなコードを書くかという技術が非常に重要でした。

 

これからはそれに加えて、実際のCADではどのような処理が必要なのかを理解することが、

さらに重要になるように思います。

 

「最も優れたプログラミング言語は、英語である」というのは

AIによるコーディングが出始めた時分に聞こえてきた名言です。

この通りで、今では言葉で表現する能力とエラーに気づく能力があれば

コーディングは圧倒的に身近なものになってくれました。

 

どの順番で処理すれば、形状が破綻しないのか

臨床的に、どの部分に精度が必要なのか

 

どの程度のエラーであれば許容できるのか。

 

もしCADアプリを開発しようと考えた場合には、

こうした歯科とCADの両方を理解した設計が必要になります。

 

AIはコードを書くことができても、どのような歯科補綴物が適切なのかを

最初から完全に理解しているわけではありません。

 

義歯床の厚みを何mmにするのか。

人工歯と義歯床の接合部に、どの程度の強度が必要なのか。

 

スプリントの内面に、どの程度のリリーフを設定するのか。

クラウンの隣接面コンタクトや咬合接触を、どのように評価するのか。

 

このような部分は、歯科医師や歯科技工士が臨床的な意味を伝える必要があります

そのため、AIコーディングが進歩するほど、

歯科の専門知識を持つ人が、開発に参加することが必須になるのかもしれません。

 

ryosuketakahashi3d.gumroad.com

↑ 3D歯科 が睡眠時間を極限まで削り制作した総義歯用CADアプリ

$0と入力で無料で活用できますよ。

Betaのまま公開し、アップデートはありません。

(裏では完成版へ近づいているんですけどね・・・)

ここまで個人で開発できるのか!と感じたい方はぜひ試してみてくださいね!

 

画面を人間が操作しないCADが登場するかもしれない

現在の歯科CADソフトは、基本的に人間が画面を操作します。

 

マウスで模型を回転させ、マージンラインを修正し、設計パラメーターを入力し、

補綴物の形態を調整しつつ確認します。

 

しかし、将来的には、このようなインターフェース自体が不要になる可能性もあります

 

人間が操作するためのボタンやスライダーがなく、

AIエージェントだけが操作できるCADシステムです。

 

いわゆるGUI(グラフィックインターフェース)はAI君にとっては

とても邪魔なものだと聞いたことがあります。

 

患者さんのスキャンデータと指示書をアップロードし、

右上6番のクラウンを設計するよう指示します。

 

「咬頭傾斜は緩やかにする。隣接面コンタクトは少し弱めにする。」

「術前形態を参考にしながら、この辺の頬側の豊隆を抑える。」

 

このような条件を文章で入力すると、AIエージェントがバックグラウンドでデータを確認し

支台歯を認識し、マージンラインを設定します。

 

さらに補綴物の設計、隣接面や咬合面の調整、メッシュエラーの修復、

最終データの検証までを行い、完成したSTLファイルだけを出力します。

 

人間はCAD画面を見ることはなく(今のコーディングと同様ですね)、

完成した補綴物のプレビューと、AIが行った設計内容だけを確認することになります。

 

つまり、現在のような人間が使いやすいCAD画面ではなく、

AIが使いやすいCADエンジンが中心になる可能性があります。

 

もちろんこれは 3D歯科 の予想と言いますか、想像だけの話ですが

そこまで思わせるほどに、Claud Fable5とCodexの衝撃は大きいものでした。

 

AIエージェントが複数のソフトをまとめる未来

現在のデジタルワークフローでは、一つの症例に対して複数のソフトを使い分けながら

使用することがあります。

 

スキャンデータを取得し、CADソフトで設計し、別のソフトでデータを修正し、

3Dプリントであればスライサーで造形条件を設定します。

 

それぞれのソフトには得意な処理があり、日常的に目的に応じて使い分けています。

 

これについても将来的には、AIエージェントが複数のソフトウェアを自動的に操作し

たった1つのワークフローとしてまとめるようになるかもしれません。

 

最初のソフトでスキャンデータを整理し、次のソフトでクラウンを設計し

別のソフトでメッシュを修復し、最後にプリンター用のデータを作成する・・・

この一連の工程を、AIエージェントが自動的に進めます。

 

使用者から見ると、一つの画面に症例データを入れただけですが、

バックグラウンドでは複数のCADエンジンやAIモデルが協力している、という形です。

 

現在のソフトウェアが不要になるような話ではなく、

それぞれの優れたソフトウェアが、AIによってつながっていくという

イメージの方が近いのかもしれません。

 

AIクラウンも日本語で修正できるようになる?

すでに、DentbirdなどのAIクラウン設計サービスによって

クラウン設計の自動化は実際の臨床で使用できる段階まで進んでいます。

 

スキャンデータをアップロードするとAIが支台歯やマージンを認識し、

クラウン形態を提案してくれます。

 

現時点でも非常に便利ですが、将来的には設計後の修正方法も変わっていくかもしれません。

 

現在は、画面上のツールを使って外形や咬合面を調整します。

 

しかし今後は、頬側の膨らみを少し減らす、中心溝をもう少し明瞭にする、

近心のコンタクトを少し弱くするといった指示自体を

日本語で入力できるようになるかもしれません(先に英語だろうけど)

 

咬合面を0.2mm低くする。

術前の歯の形に、もう少し、こんな感じで近づけて。

 

このような細かな修正も、文章で伝えるだけでAIが形態に反映してくれる可能性があります。

 

さらに、過去の設計データから術者ごとの好みを学習し、

普段採用している形態に近づけることも考えられます。

 

単に平均的なクラウンを設計するだけでなく、

医院や歯科技工所ごとの設計ルールを反映できるようになるかもしれません。

(いや、むしろそのような形に進化させてください。

 Imagoworksが見ていたらよろしくお願いします!)

 

CAD操作がなくなるのではなく、役割が変わる

AIによる自動化が進むと、将来はCADを操作する必要がなくなるのではないか

と考える方もいるかもしれません。

 

確かに、単純な操作や繰り返し作業は少しずつ自動化されていくと思います。

 

しかし、人間の体が相手ですので、すべての症例が完全に同じ条件ではありません。

 

残存歯の状態、動揺の具合、咬合関係、顎堤形態、患者さんの希望、

使用材料、製作方法によって適切な設計は変わります。

 

特に難症例や特殊な設計では、人間による最終判断が重要です。

 

そのため、CADを扱う人の役割は、単にマウスで形を動かすことから、

AIに適切な指示を与え、設計結果を評価する方向へ変わっていくのではないでしょうか。

そしてこれはおそらく、ソフト開発の現場にすでに起こっている変化です。

残念ながら歯科界だけがこの変化から逃れられるわけはなさそうです。

 

臨床的な問題を見つけ、必要な修正方針を決め最終的な責任を持って承認する。

CADの操作時間は短くなっても、補綴設計に関する知識の重要性が

むしろ高くなる可能性があります。

 

AIコーディングが歯科のアイデアを形にする

歯科臨床を行っていると、この処理を自動化できれば便利なのにと思うことがあります。

 

このソフトに、この機能が追加されれば使いやすい。

この症例専用の、小さなアプリがあればいい。

CADを毎日のように触っていると、そう感じる場面は少なくありません。

 

これまでは、そのアイデアを形にするためには

ソフトウェア会社やエンジニアに相談する必要がありました。

(無論、趣味で行うには現実的ではありません)

 

しかし、AIコーディングによって臨床家自身が試作品を作り、

実際に動かしながら改善できるようになってきました。

 

最初から大規模な歯科CADを作る必要はありません。

 

STLデータを自動的に軽量化するアプリや、

義歯データの表面を整えるアプリだけでも、

日常のワークフローを大きく変える可能性があります。

 

人工歯と義歯床の位置関係を確認するアプリ、マージン周囲だけを修復するアプリ、

模型データを自動的にトリミングするアプリ、造形方向を提案するアプリも考えられます。

 

1つの問題だけを解決する小さなアプリであれば、

AIコーディングによって深い知識のない個人でも開発できる可能性があります。

 

このような小さなツールが増え、将来的にAIエージェントによって連携されれば

新しい歯科CAD環境が作られるかもしれません。

ここから2〜3年の変化が楽しみでもあり、恐ろしくもありますね・・・

 

まとめ

今回は、AIコーディングによる歯科CADアプリの開発と、

将来的なCAD工程の自動化について考えました。

 

重要なのは、コードをすべて自分で書けることだけではありません。

CADのバックグラウンドで何が行われているのかを理解し、

その処理を細かく分解してAIに伝えることです。

 

既存の歯科CADソフトが不要になるという話ではありません。

現在の優れたCADソフトやAI設計サービスが、さらに自動化され

相互につながり、より簡単に使えるようになる未来です。

 

しかし未来と言ってもAIコーディングを実際に触っていると、CADの全行程自動化の足音

すでに聞こえ始めているように感じます。

 

歯科医師や歯科技工士のアイデアが、そのまま新しいアプリやワークフローになる時代。

口腔内スキャナー、3Dプリンター、その次は確実にAIアプリだと思っています。

これから歯科CADがどのように進化していくのか、非常に楽しみです!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

 

今月3Da Proにて、3Dプリントフルデンチャーをテーマに取り上げて

極限までCADを単純化したアナログ的なコツををアップしています!

個人的には今月紹介の3Da Proの内容がとても自信がある部分になりますので、

3DプリントにCADがイヤで取り組まなかった先生方は、

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

note.com

note.com

 

また、フルデンチャーやその他のため、

ついに歯科用3Dプリンターを導入しようかと考えている皆さんに向けて

大阪3Dプリンターの導入についてのリアルなところをお話しするセミナーを行います。

お申し込みはこちら↑ 

https://3da-start-osaka-3dprinting.peatix.com/

 

 

そのほか、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Tokyo, Japan
2026年07月26日(日)10:00 - 16:00
【東京開催】3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!
1日デジタルマスタークラス
満員御礼、お申し込みありがとうございました!
・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇予定
・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介
・Osaka, Japan
2026年09月27日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da Start:失敗しない歯科用3Dプリンター導入戦略! SHINING FLOWで始める Scan・AI Design・Print 1Dayセミナー
@ルーシッドスクエア新大阪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

低価格・歯科用3Dプリンターの選択肢が拡大!IOSより早い価格帯の低価格化

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、Meshmixerという古の・しかし今も活用できる汎用CADについてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、歯科3Dプリンターの低価格化について考えます。

 

よろしくお願いします。

 

汎用プリンターと歯科用プリンターは何が違うのか

低価格な光造形3Dプリンター自体は、以前から存在していました。

現在では、数万円から十数万円程度でも、高解像度のLCD方式プリンターを購入できます。

3D歯科 が好んで使用してきたElegooもAmazonのセールで3万円ほどで入手できます。

 

では、汎用プリンターと歯科用プリンターは何が違うのでしょうか。

 

最も大きな違いは、単純な解像度や造形速度ではありません。

歯科用途で重要なのは、

「使用したい歯科材料を、メーカーが検証した条件で、安定して造形できるか」

という点です。

 

歯科用レジンには、模型用、サージカルガイド用、スプリント用、義歯床用、人工歯用、

テンポラリークラウン用など、多くの種類があります。

材料ごとに適切な露光条件や積層条件が異なり、さらに洗浄や二次重合まで含めて、

最終的な適合性や物性が決まります。

 

汎用プリンターでも歯科模型を出力することはできます。

しかし、レジンプロファイルの作成、造形方向、サポート、収縮補正、

洗浄、二次重合などを自分で検証しなければならないことが多く、

使用者側に一定の知識と経験が必要です。

 

さらに恐ろしいことに気温と湿度によってパラメーターを可変する必要があります。

 

一方、歯科用プリンターでは、対応材料に合わせたパラメーターが準備され、

歯科用ソフトウェアやクラウドサービスから造形までをつなげられる製品が増えています。

 

つまり、機械そのものだけでなく、「失敗しにくいワークフロー」が

製品に含まれていることが大きな違いです。

 

歯科医院で毎日使用するのであれば、

一度だけきれいに出力できることよりも、スタッフが扱っても

同じ結果を繰り返せることの方が重要です。

 

また将来もどんどん登場する歯科用3Dプリンターレジンのラインナップについても

全てパラメーターと後処理を検証する必要が出てしまいます。

数年前にDHプリントのパラメータを時間をかけて探して重合条件や変形なども検証しましたが

凄まじい勢いで開発や販売の進むプリントレジンについて、

個人の力で全て検証を行うことは実質不可能です。

 

ここに、歯科専用機を選ぶ意味があります。

 

 

歯科用3Dプリンターの価格帯

これまでの歯科用3Dプリンターは、本体だけでも100万円を超える製品が多く、

洗浄機や二次重合機まで含めると、導入費用はさらに大きくなりました。

 

現在も高い生産性や大型造形、材料の多さ、メーカーサポートなどを備えた上位機種では、

200万円から数百万円の価格帯が中心です。

大量の模型や補綴物、ガイドを日常的に製作する歯科技工所では、

結局のところこのクラスの機器が適しているのかもしれません。

 

その一方で歯科医院内で模型、個人トレー、サージカルガイド、スプリント、

テンポラリー、義歯関連装置などを少数ずつ製作する場合、

必ずしも大型で高価な装置が必要とは限りません。

 

特に説明用模型などであれば、Elegooなどの汎用プリンターでも十分かもしれません。

 

この需要に合わせて、「歯科医院の日常臨床に必要な機能へ絞った小型機」が増えています。

 

価格帯としては、おおむね100万円以下の選択肢が現れ、

歯科用プリンターは以前よりも段階的に選びやすくなりました。

 

ただし、本体価格だけで比較するのは危険です。

洗浄機、二次重合機、消耗品、材料費、保守、クラウド利用料、

材料の開放性などを含めて考える必要があります。

安価な本体でも、専用材料や消耗品の費用が高ければ

長期的な運用コストは大きくなります。

 

反対に初期費用が少し高くても、失敗が少なく、設計から造形までの操作が簡単で、

スタッフが運用できるのであれば医院全体の時間的コストは下がります。

 

3Dプリンターの価格は、本体だけでなく

「臨床で使える状態までの総額」で考えることが大切です。

 

 

低価格帯の選択肢が拡大中

ここ数年の変化として特に大きいのは低価格帯の製品が

単なる汎用機ではなく、歯科専用機として登場し始めたことです。

 

以前は、低価格で始めるなら汎用プリンターを購入し、

自分で歯科用レジンの条件を探す必要がありました。

 

また、多くの低価格プリンターは汎用プリンターを認可を通して

歯科用とラベルを貼って販売しているものが多かったです。

 

これは以前よりPhrozenのプリンターを販売してきましたが

基本はExocadやデスクトップスキャナーを購入しているユーザーのみに

プリンターの販売が絞られていました。

 

ですがよくよく最近になって見てみると

レジン10Kgと一緒であれば、購入させてもらえるようになったようですね!

Phrozenは歯科専用開発されたマシンも登場しましたが、コストだけをみると

汎用プリンターを薬事を通したものの方が安価ですね。

3D歯科 が探したものの中ではデンケンハイデンタルのソニックマイティ16Kが

一番薬事認可されているプリンターの中では安価でした。

(ただしデンケンハイデンタルのDHプリントのレジン使用が基本となります)

 

ただし現在は、メーカーが歯科材料とワークフローを準備した状態であっても

比較的低価格な機種を選べるようになっています。

 

この価格低下は、口腔内スキャナーよりも速く進んでいるように感じます。

 

口腔内スキャナーも以前と比較すれば導入しやすくなりましたが、

現在でも歯科医院向けの主要機種は100万円を超えることがほとんどであり、

スキャナー本体に加えて、専用PC、保守やクラウド、ソフトウェア費用

などが必要になる場合があります。

 

一方3Dプリンターは、数年前まで100万円以上は当たり前だった歯科専用機の領域に、

100万円以下のものが登場してきたと思えば、

ここ最近ではさらに低価格帯の製品が入ってきました。

 

絶対的な価格だけでなく、短期間で複数の価格帯が形成されたという意味でも

3Dプリンターの低価格化は非常に速いと感じます。

 

ハードウェアの性能差だけでなく、ソフトウェア側が失敗を減らせるようになったことで、

エントリー機でも歯科用途へ投入しやすくなりました。

 

これは、これから歯科用3Dプリンターを始める歯科医院にとって大きな変化です。

 

最初からすべての補綴物を院内製作する必要はありません。

まずは模型や個人トレー、サージカルガイドなどから始め、

運用に慣れてからスプリント、テンポラリー、義歯へ用途を広げることができます。

 

3Dプリンターのサポート自体を販売するという会社も出てきたようです。

ディーラーもプリンターは知識がないことが多いようなので

こういったところにサポートを任せてしまう販売店も増えそうな気がします。

 

導入価格が下がれば、「十分に活用できるか分からないため購入できない」

というリスクも小さくなります。

 

3Dプリンターは、特別な設備ではなく、

用途を限定して小さく始められる院内製作機器へ変化しつつあります。

 

SHINING3D Aris:40万円の歯科専用プリンターの登場

この流れを象徴する製品の一つが、SHINING 3DのAccuFab-Arisです。

 

AccuFab-Arisは、日常臨床向けのエントリークラスとして発表された

歯科専用設計の3Dプリンターです。

 

↑ノートパソコンと同等のフットプリントで設置できます。何台も並べたい!!

 

日本では約40万円という価格帯が案内されており、

従来の歯科専用プリンターと比較すると、非常に導入しやすい位置づけです。

 

本体はコンパクトな4K LCD方式で、34μmのピクセルサイズを採用しています。

メーカーは、模型、サージカルガイド、スプリント、義歯、クラウン・ブリッジ関連など、

SHINING3Dのほぼ全てのレジンを活用でき幅広い歯科用途への対応を掲げています。

 

さらに重要なのが、口腔内スキャン、設計、クラウド上でのデータ管理、

ネスティング、スライス、造形を一つの流れとしてつなげる設計になっています。

プリンターだけを安くしたのではなく、歯科医院が使用しやすいワークフローを残したまま、

価格を抑えている点に意味があります。

 

もちろん、40万円の機種が上位機種とまったく同じ性能を持つわけではありません。

造形サイズ、生産量、対応材料、処理速度、何よりもプリントしにくいレジンの精度などは、

導入前に確認する必要があります。

 

大量生産を行う技工所と1日に数ケースを製作する歯科医院では、必要な性能も異なります。

 

院内で模型やガイド、スプリント、義歯関連装置を製作したい歯科医院にとって、

歯科専用機が40万円前後から選べる」という事実は大きな意味を持ちます。

 

口腔内スキャナーをすでに導入している医院であれば、

スキャンデータを模型として出力するだけでも活用できます。

 

↑重合器もものすごく小型のものを販売する予定があるようです。

 

さらに、AI設計サービスや簡易CADを組み合わせれば、

設計ソフトを1から習得しなくても、院内製作へ進める可能性があります。

 

個人的には、AccuFab-Arisの価値は、最高性能を競うことではなく、

「歯科用3Dプリンターを始めるための現実的な入口」を作った点にあると考えています。

 

高価な上位機種を購入する前に、院内でどの程度プリンターを使用するのか

確認する機器としても、非常に興味深い存在です。

 

ただし6月に発表されたプリンターでしたが、

なぜか7月中にも販売は開始されないようです。

8月までは待ちなのでしょうか。保険で義歯を作ることなどにとてもあっているのですが。。

 

まとめ

歯科用3Dプリンターは、急速に低価格化しています。

 

これまで低価格帯は汎用プリンターが中心でしたが、

現在は材料プロファイルや歯科用ワークフローを備えた歯科専用機にも、

40万円前後から選択肢が現れました。

 

歯科用3Dプリンターは口腔内スキャナーと比較しても、

より短期間で100万円以上の市場から数十万円の市場へ広がっています。

 

今後は医院の規模や用途に合わせて、エントリー機、標準機、

高生産機を選ぶ時代になると思います。

 

Arisのような製品は、上位機種を置き換えるためのものではありません。

歯科医院が3Dプリントを始め、模型、ガイド、スプリント、義歯などへ

少しずつ用途を広げるための入口となりそうです。

 

ただし価格が下がった今こそ、本体価格だけではなく、対応材料

洗浄・二次重合、ソフトウェア、サポート、

そして医院で何を製作したいのかを含めて選ぶことが重要です。

 

 

9月末という、ちょっと先にはなりますが

「これから歯科用3Dプリンターを導入したい!」

汎用プリンターからステップアップしたい!」という先生方へ向けて

実際のところ歯科用プリンターをどのように導入するのか、

何を考えて導入をすれば、どのように運用すればいいのかの疑問に答える内容の

セミナーを大阪で行わせていただくことになりました!

たくさんいただくこともある3Dプリンターの導入にまつわるご相談についても、

最近返信が遅れてしまうことも多いので・・・

直接きていただき、直接質問ください!

ご参加いただきやすい参加費や場所となっておりますので

ぜひ9/27はプリンターの話で1日盛り上がりましょう!

↓ご参加はこちらから!20名限定です。

https://3da-start-osaka-3dprinting.peatix.com/

 

よろしくお願いします。

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

 

今月3Da Basicにて、再びMeshmixerをテーマに取り上げて

取り扱い方法や初心者の方への使い方の導入編をアップしていきます!

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

note.com

 

 

また、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Osaka, Japan
2026年07月19日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス  (残り1名予定)
・Tokyo, Japan
2026年07月26日(日)10:00 - 16:00
【東京開催】3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス(残り2名予定)
・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇予定
・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介
・Osaka, Japan
2026年09月27日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da Start:失敗しない歯科用3Dプリンター導入戦略! SHINING FLOWで始める Scan・AI Design・Print 1Dayセミナー
@ルーシッドスクエア新大阪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

Meshmixerをもう一度見直してみる〜Medit Designとの比較も含めて〜

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、Exocadがサブスク化(月額サブスク化)することについてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、AI時代に逆行するようなMeshmixerについて久しぶりにお話しします。

 

よろしくお願いします。

 

この時代でも完全無料、Meshmixer

さて、Meshmixerについてお話ししましょう。

このソフトはAutodeskが開発していた(現在は更新なし配布のみ)

軽量で使いやすいCADソフトです。

meshmixer.org

 

思えば5年ほど前の際にはこのソフトばかりを用いてCADを行っていました。

おそらくはその時から何も変わらず、今も無料のまま使用することができます。

 

昔の記事のソフト紹介でもMeshmixerをいちばんに上げており、

その際には進化途上であったMeditLinkよりも愛用しておりました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

このMeshmixerを用いて歯列模型作りを行ってきましたが、

MeditがModelBuilderを強化し、Medit CompareがMedit Designに進化した頃より

Meshmixerはあまり使用しなくなってしまいました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

そんなMeshmixerですが、ここ最近でまた一部界隈で注目を集めています。

そうです、Medit Essential Appsの有料化です。

 

有料化がもたらしたもの

月額16,000円という微妙に高めの設定のサブスク料金に

まだあまり使用しきれていない先生、これから触ろうか考えている先生は

急にハードルが上がってしまったと感じるかと思います。

 

3D歯科 としてはすでに操作に精通しており

これがなければ診療で使う半分の物もCADで作れなくなってしまうほど愛用しています。

実際には、一般的なクラウンとスプリントは別ソフトで設計することもありますが

それ以外で院内3Dプリントするほぼ全てのものを

Medit DesignなどのMedit Essential Appsを用いて製作しています。

 

Meditのハードウェア製品を所有している場合はMedit Essential Appsは

無料で変わらず使用することができます。

 

しかし、つい1ヶ月ほど前までは無料で使用できていたものが

製品ユーザーでない場合には急に課金されることになり

なかなか受け入れにくいこともあるかもしれませんね。

 

そこで登場するのがMeshmixerです。

AI化の進行が進むソフトウェア界隈において

完全に逆行していますが、インストール型で無料で使えます。

 

個人的にはMedit Essential Appに求めていたのは

誰でも使えると言う共通言語になる部分であったので

思ったより、使用しなくなるユーザーが残念に思っていました。

 

今でも強力なインスペクターやマグネットツール

さて、Meshmixerは歯科用ではないMedit Designといったようなソフトです。

 

しかし汎用であるために強力なエラーチェック機能など

便利な操作を行うことが可能です。

 

インスペクターはデータ中のノイズやエラーを見つけてくれて

多くの場合にはワンクリックで解決してくれるものです。

 

 

意外とこうした機能は他のソフトにはなく、

例えば他の歯科用CADソフトでエラーが起こる場合などには

Meshmixerでエラー解決を行ってからCADソフトへ戻せば

最も簡単にエラーを回避することができることも多いです。

 

また咬合面の接触調整を行う際に

マグネットツールと呼ばれる、任意のデータに表面を引き寄せる機能があります。

 

 

これにより咬合面形態を対合に密着させたり

スプリントを設計して対合に密着させることで

咬合面形態の付与やチェアサイドの調整が思ったよりも簡単になることがあります。

 

それだけではなくブーリアン処理もMeditDesign同様に行うことができるので

義歯の人工歯切り分けを行うなど、高度な応用を行うことも可能です。

ただしオブジェクトと呼ばれるデータ数が多くなってくると

なかなか管理も難しくなってくることもあります。

 

Meshmixerのデメリット

もちろんMeditDesignと比較するとデメリットを感じることもあります。

 

例えばMeditLinkの大きなメリットである

クラウドで行われるアカウント内すべてのデータの共有とバックアップです。

 

医院で行った操作の続きをそのまま自宅で行う。

過去のデータを検索し、また過去のDesignプロジェクトに続けて操作を行う。

こうしたことがストレスなく行えることがMeditDesignの大きなメリットです。

 

また、細かなノイズや選択の漏れ、エラーなどに対して

気の利いた無視をしてくれる、という素晴らしい設計をされています。

 

これはMeshmixerやBlendrerを触ったのちに強く感じますが

細かいノイズや選択漏れがあると、多くのCADソフトではエラーであったり

その後のブール値操作においてトラブルの原因になってしまいます。

 

ですがMeditDesignはこれらを意図的に無視する設計に作られており

大まかに選択すれば狙った通りにノイズも含めて選択されていたり

ブーリアン処理を行うのにオープンメッシュ状態で選択しても

ソフト側でうまく処理してドロップしないように対応してくれるなど

とても気の利いた動作をしてくれます。

 

Meshmixerの場合には、こうしたノイズや断片化されたデータも

すべて同様に扱われるため、ノイズを含んでCAD操作が進むと

必ずエラーで処理が止まるか、「ドボン処理」と個人的に呼んでいますが

全くソフトが動かず、保存もできずに強制終了するしかなくなるという

悲しいトラブルに出会うこともあります。

よくあります!

 

なので、こうしたトラブルになりそうなことをあらかじめ避けておけば

無料で楽しく使用ができますが、覚えておくべき暗黙のルールがあるソフトになります。

 

まとめ

今回は、久しぶりに触っているMeshmixerについてのお話をしました。

 

無料というのはとてもありがたいことですが

それなりに初めに触るにはハードルが高めであったり

時間をかけて学ぶ必要がある側面もあるかと思います。

 

ですがせっかく手元にあるCADソフトですので

休日や連休、お盆休みなど

時間をゆっくり取れる時に、PCに向かってみてはどうでしょうか。

 

ちなみにこの数日、集中してClaud Fable5君と一緒に

CADソフト自体を作成してみようということを行なっていますが、

恐ろしいほどにAIがアプリ制作も可能になってしまっています。

 

もちろんMeshmixerのような完成度の高いソフトをポンと作れるものではないのですが、

近い将来に成果物についても紹介したいと考えています。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、今回にチラッとお話しした既存の義歯の義歯床・人工歯の切り分けは

MeshmixerでもMeditDesignでも行うことが可能です。

この内容も取り上げたセミナーを来週・再来週と行いますので

3D歯科 と同様に、久しぶりにMeshmixerを頑張ってみようかな・・・

と考えた先生方、よろしければ3Dプリントデンチャー組み立てまで

楽しく一緒に行いましょう!

👇7/19の大阪開催はこちら!

https://3da2-osaka-20260719.peatix.com/

👇7/26の東京開催はこちら!

https://3da2-tokyo-2026-0726.peatix.com/

4000点の3Dプリント義歯を、無料ソフトで取り入れましょう!

 

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

こうした日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

 

今月3Da Basicにて、再びMeshmixerをテーマに取り上げて

取り扱い方法や初心者の方への使い方の導入編をアップしていきます!

サブスクCADやAIと対極の存在かもしれませんが

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

note.com

 

 

また、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Okayama, Japan
2026年07月12日(日)10:00 - 16:00
3DX in OKAYAMA

 

・Osaka, Japan
2026年07月19日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス (あと1名予定)

 

・Tokyo, Japan
2026年07月26日(日)10:00 - 16:00
【東京開催】3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス (あと2名予定)

 

・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇予定

 

・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

Exocadもサブスク化がスタート! 月2万円のExocadと今後のCADソフトの方向性や予想を考えてみる

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、AIクラウン時代に本格的に変化していきそうだという内容をお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、ちょうどタイミングよく、現在の歯科CADソフトの業界標準と言える

Exocadの月額サブスク化について考えます。

 

よろしくお願いします。

 

Exocadがサブスク利用化へ!

歯科用CADソフトの世界で、またひとつ大きな変化が起きました。

 

exocadに月額サブスクリプションの選択肢が登場した、というニュースです。

 

これまでexocadといえば、歯科技工所や本格的にCAD/CAMを行う歯科医院にとって、

非常に自由度が高く、拡張性のあるソフトウェアという印象がありました。

 

一方で、導入費用は決して安いものではなく、これからデジタル技工を始めたい人や、

院内でCADを試したい歯科医院にとっては、最初の一歩が重いソフトでもありました。

 

しかし今回、海外で公開されている情報では、

exocadのCoreプランが初月378ドル、

その後は月額132ドルから利用できると紹介されています。

為替にもよりますが、月額132ドルは日本円でおよそ2万円台です。

 

もちろん、これは米ドル表記の海外情報であり、日本国内で同じ条件で提供されるか、

どの代理店でどのような契約になるかは確認が必要です。

それでも、exocadが「月額2万円台から検討できるCAD」になった

というインパクトは大きいと思います。

 

Exocadの立ち位置

これまでの歯科用CADは、大きく分けると二つの世界に分かれていました。

 

ひとつは、exocadや3Shapeのような本格的なラボ向けCADです。

自由度が高く、クラウン、ブリッジ、インプラント、義歯、スプリント、Jaw Motionなど、

さまざまなワークフローに対応できます。

その代わり、価格も高く、操作にも習熟が必要でした。

 

もうひとつは、ClinicCADやDentbird、SHINING 3DのAI Design Serviceのような、

より軽量で、クラウドやAIを前提にした新しいタイプのCADです。

 

これらは、すべてを細かく手作業で作り込むというより、

AIがある程度の設計案を作り、人間が必要な部分を修正するという方向に進んでいます。

 

Medit ClinicCADはAI機能も利用できますが(海外では)どちらかといえば

Exocadのように自前でライブラリから歯を並べてクラウンを作成するツールです。

Medit公式の有料プラン情報では、Meditスキャナーユーザーが月額29.99ドル

非Meditユーザーが月額59.99ドルです。

1歯ごとの従量課金もあり、Meditスキャナーユーザーは1歯3ドル、

非Meditユーザーは1歯5ドルとされています。

 

ClinicCADで作れるものも広がってきています。

インレー、ベニア、コーピング、エッグシェルテンポラリー、クラウン、歯頸部インレー

診断用ワックスアップ、メリーランドブリッジなどが選択できます。

さらに、Meditでスキャンした動的咬合の可視化連携も打ち出されています。

 

Dentbirdも同じ方向性です。

Dentbird公式の価格ページでは、Liteプランが月額125ドル、

年額1500ドル請求で、月50ユニットまでのエクスポートが可能とされています。

(夏か秋頃に導入しやすいプランが追加される予定)

インストール不要で、ブラウザ上でAIによるクラウンや補綴設計を行うという設計思想です。

 

SHINING 3DのDesign Serviceも、AI Designと海外のデザインサービスである

Classic Designを組み合わせたクラウドサービスとして展開されています。

Classic Designでは補綴、インプラント、矯正、義歯を含む18種類のプロダクトをカバーし、

AIデザインはSHINING機器ユーザーは登録でAIクラウンを試せると説明されています。

(すでに利用を開始しているのでこの辺りは確証がありません・・・)

 

こうして見ていくと、歯科用CADの世界は後発の登場で変わってきていると感じます。

 

以前は、ExocadのようなCADソフトは「投資し、買うもの」でした。

 

高額なライセンスを購入し、高性能なWindowsパソコンにインストールし、

ドングルを挿し、技工士さんやCADオペレーターが時間をかけて設計するものでした。

 

ですが、これからのCADソフトは「必要な時に使うもの」になっています。

 

必要な期間だけ契約し、必要な機能だけ使い、

必要な症例だけクレジットでエクスポートする。

 

ソフトウェアはローカルPCの中だけで完結せずクラウド上でAIとつながり、

医院、技工所、ミリングセンター、3Dプリンター、患者説明までをつないでいく。

 

こうした流れが、これからの歯科用CADの大きな方向性になると思います。

 

今回のexocad月額化が面白いなと感じるのは、

これまで「高機能で高額な本格CAD」の代表だったexocadが、

この流れに乗ってきたように見えることです。

 

Exocadの強みとClinicCADとの比較

Exocadは公式サイトでも、DentalCAD、ChairsideCAD、exoplanなどを通じて、

歯科医師、歯科技工士、ミリングセンターをつなぐ幅広いデジタルソリューションを

提供していると説明しています。

 

単純な症例から複雑な症例まで対応し、豊富なアドオンモジュールで

ワークフローに合わせた増設のような強化ができるというのが元々の強みです。

 

そのexocadが月額で入りやすくなると、ClinicCADやDentbirdのような新しい軽量CADと、

exocadのような本格CADの境界が近づいてくるように感じます。

 

現実的にClinicCADを活用するにはMeditのクラウドを有料のものにする必要があります。

これもまた月額9.99ドルが必要になります。

ただしClinicCADは月額の設定が非常に安く、

院内でクラウンやインレーを設計する入口としては魅力的です。

 

DentbirdはAIクラウンを短時間で大量に処理したいときにメリットがあります。

バッチ機能はインポートした大量の症例を並列に処理して、

あとは確認と微調整を行うだけ、という状態にしてくれます。

 

SHINING 3DのAI Design Serviceは、SHINING 3D Dental CloudやCeramix-Nano、

3Dプリントワークフローとの接続が魅力です。

 

一方でexocadは、単冠クラウンだけのソフトではありません。

クラウン、ブリッジ、インプラント、義歯、スプリント、

模型、咬合器、Jaw Motion、Smile Creatorなど・・・モジュールを組み合わせることで

より広い範囲のデジタル技工を扱うことができます。

 

クラウンを作れるだけならAIで事足りるかも

AIでクラウンを生成するソフトのみならず、

どうやら今後は汎用AIを用いた歯科に使いやすいCADソフトウェアが登場しそうです。

 

例えば、サーバーでBlenderを起動して、バックグラウンドの処理を行い

クラウド上のインターフェイスでは、STLのインポートと簡単な確認、

マージンラインの確認を行うようにして、ユーザーが承認ボタンを押せば

臨在歯に合わせた位置に、任意のライブラリを自動的に配置する。

 

そこまでの(何ちゃって)AIクラウンCADソフトであれば

汎用AIで思ったより簡単に作ることもできそうです。

3D歯科 も時間があれば・・・作りたい!結構現実的にできそうです)

 

それを踏まえて、現存するCADソフトやサービスは

それぞれ3つの方向性に進化していきそうに予想しています。

 

ひとつめは、ClinicCADのような院内での即日補綴向けの簡単CADです。

(チェアサイドという言葉は使用しません、でもそのうちにClass2認可を受けそうです)

 

スキャンして支台歯を認識し、マージンを確認しクラウンやインレーを設計して、

すぐにミリングや3Dプリントへ進む。

細かい機能をすべて詰め込むよりも、歯科医師や院内歯科技工士が

臨床の合間に迷わず使えることが重視されます。

 

 

 

ふたつめは、DentbirdやSHINING 3D AI Design ServiceのようなクラウドAI CADです。

人がCADソフトを細かく操作するのではなくAIが大部分を生成し、

人間は確認と修正を行います。

 

特にクラウン、インレー、オンレー、模型、リテーナーのように、

ある程度パターン化できる作業は、この方向に進みやすいと思います。

先程のなんちゃってAI CADソフトとの違いは

クラウン形態や咬合面接触が、計算で生成されると言うことです。

単にライブラリを引っ張ってきたものではないため

臨在歯に調和する形を作ることができる可能性があります。

 

 

 

みっつめは、exocadのような総合CADプラットフォームです。

 

AIによる自動化を取り込みながらも、最終的には高度な編集、複雑症例、

ラボワーク、インプラント、義歯、審美設計、フェイススキャン、

Jaw Motionまで統合していく方向です。

exocadもまたAI Designをスタートさせていますが、

DentalCADの対象バージョンとmy.exocad連携を前提に、

Flex Licenseまたは有効なアップグレード契約付きPerpetual Licenseで

月ごとのexocad Creditsが含まれると説明されています。

 

つまりAI時代のExocadは、簡単なものはAIで自動化し、

複雑なものは人間が判断し、両者をクラウドでつなぐという構造になっていくはずです。

 

この流れの中で、歯科医師や歯科技工士に求められる能力も変わっていくかもしれません。

 

今後のCADソフトの方向性や予想

これまでは、CADソフトをどれだけ手早く操作できるかが大きな価値でした。

 

もちろん、今後もその能力は大切です。

しかしAIがマージンを引き、AIが歯冠形態を作り、

AIが咬合や隣接面を提案するようになると、人間の価値は少しずつ変わっていきます。

 

これから重要になるのは、AIが作った形態が本当に臨床的に正しいかを判断することです。

 

支台歯形成は適切か、マージンは読み取れるか(スキャンの場合ほぼ歯科医師の責任)。

隣接面はきつすぎないか、咬合接触は適切か。

清掃性は良いか、材料に対して厚みは十分か。

患者さんにとって、その補綴物が本当に良いものか。

 

CAD操作の主役は、作る人から判断する人へ移っていくと思います。

 

これは歯科医師にとっても、歯科技工士にとっても大きな変化です。

 

歯科医師も、院内でCADを使う機会が増えるはずです

(今年から来年初めにかけて、複数のソフトがClass2の認可を受けるはずです)

 

すべてを自分で作る必要はありませんが、AIや技工士さんから返ってきたデザインを見て、

臨床的に問題がないかを判断する力が必要になります。

 

歯科医師にとっても歯科技工士にとっても、自分の作業を拡張する道具として

AIを使うことが重要になります。

単純なクラウン設計に使っていた時間を減らし、その分を複雑症例や審美設計、

義歯、インプラント、咬合、患者ごとの個別設計に使うことができます。

 

歯科のCADがそこまで変わるとは思えない先生もいらっしゃるかと思います。

今のままで十分問題なく仕事ができているので変化がなくても良いという方も

いるかと思いますが、周りの環境だけが変化をしていくことに注意が必要かもしれません。

 

AIが、おそらくはあと1〜2年で歯科以外の一般分野は大きく変化を起こしそうです。

AIの恐るべき処理速度とマルチタスクを使えなければ、一般分野の多くは

AIを使う一部の企業や個人に代替されていくように感じています。

そこから遅れて、歯科にもその流れはゆっくりですが間違いなく訪れると思います。

 

 

まとめ

そんな中で、今回の歯科用CADの代表格がサブスク課金での

低価格利用ができるようになったことは興味深いニュースでした。

 

裾野を広げるためか、あるいは後発ソフトやサービスの存在から、

そうせざるを得なかった理由があったのか・・・

 

いずれにしてもこれからデジタルCADに取り組む方にとっては

まずは月額サブスクで触ってみて、自分に合うかを判断したのちに

2〜3年の使用と割り切ってExocadを使用するのもとてもいい方法ではないかと思います。

 

正直なところその先に、CADソフトがどのようになっているか

あるいはデジタル歯科がどうなっていくかは誰にも予想はできません。

 

まずはひと昔と異なり、多くの選択肢が手元にあるということで

ありがたくテストしてみると良さそうですね!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

なお、 3D歯科 の行っている3Da : 3D dental academyでは

こうした日常臨床に活かせるCADの方法や3Dプリンターの基本的な導入などを

動画で多数アップしています。

 

今月3Da Basicにて、再びMeshmixerをテーマに取り上げて

取り扱い方法や初心者の方への使い方の導入編をアップしていきます!

サブスクCADやAIと対極の存在かもしれませんが

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

note.com

 

 

また、告知の内容をまとめたページを作成しました。

内容一覧だけ記載をさせていただきまして、

詳細はリンク先のほうに掲載しておきます。

ryosuke-takahashi-3d-dentist.carrd.co

<今後の予定リスト>

・Okayama, Japan
2026年07月12日(日)10:00 - 16:00
3DX in OKAYAMA

 

・Osaka, Japan
2026年07月19日(日)10:00 - 16:00
<大阪開催>3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス (あと1名予定)

 

・Tokyo, Japan
2026年07月26日(日)10:00 - 16:00
【東京開催】3Da : 3D dental academy②デジタルAIフルデンチャー!1日デジタルマスタークラス (あと2名予定)

 

・Ho Chi Minh City, Vietnam
2026年08月04日(火)
SHINING Edge ベトナム 登壇予定

 

・Tokyo, Japan
2026年08月30日(日)10:00 - 15:00
@Ciメディカル福岡
IOS(午前)とJawMotion(午後)の実機使用紹介

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。