3D歯科 のデジタル歯医者入門

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3Dプリントがうまくいかなかった時に考えること

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はフェイススキャンなどのデータのマッチング(重ね合わせ)についてお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリントで新しいレジンを使用するときなど、

最適なパラメーターを探したいときに行うこと、についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

3Dプリントのプリントミスはどういうもの?

3Dプリントは、ビルドフレーム(プラットフォーム)という鉄板が

レジンバットという液体レジンを入れた槽に向けて何度も上下することで

プラットフォームに少しずつレジンが積層されていくという機構をしています。

 

そのため、プラットホームから出力物が剥がれたり、

積み重ねる途中にちぎれたり変形したりする可能性があります。

 

対策としては、プリント初期の時点、初期層と言われるプラットフォームとの接続を強固にし

初期層からサポート形態(細い紐状の支え)に移る際に引っ張りすぎず、

プリントする速度をゆっくりにすることです。

 

具体的には

初期層硬化時間を長くする

初期層引き剥がし速度と出力物の引き剥がし速度の差を減らす

出力物の照射時間を長くする

などです。

 

3Dプリント未経験だと何を言っているか分かりづらいですが、

パラメーターで悩んでいる方はお分かりいただけるはずです。

 

出力がうまくいかない場合に行うステップ

新しいレジンを使用している際や、初めて複雑な形態を出力しているときなど

期待を込めて3Dプリントを覗くと、プラットフォームに何も付いてない、

ということは経験があるかもしれません。

 

この時には、ものづくりをする者として、トライエラーを繰り返す必要があります。

 

以下は 3D歯科 がよく行なっている対策です。

当たり前!と思われる人もいるかもしれませんが、

もし、まねできることがあればぜひ行なってみてください。

 

出力ミスの原因

出力ミスの原因

  1. データ自体に問題がある(穴や裏返り)
  2. スライスソフトでの出力物の配置に問題がある
  3. サポート形態に問題がある
  4. スライスソフトのレジンのセッティングに問題がある
  5. 3Dプリンターにアナログなトラブルが発生している

以上がほとんどになるかと思います。

 

試作品を作る

さて、これらの対策でまずオススメしたいことは、

スターピースを作る前に習作を作る、です。

 

TEKや義歯を出力する前に、使い慣れたレジンで試作品を作りましょう。

3D歯科 はElegooのプリンター、MARS 3 Proを使用しているので、

Elegoo製の純正水洗いレジンが使い慣れています。

 

そのため、上記の出力ミス原因のうち、1、2、3については

試作品を作成して精度確認や出力ができるかを確認しておけば

かなりのミスが回避できることになります。

 

 

また、新しいレジンの精度検証を行う際には

Medit Temporaryなどで慣れたレジンで支台歯とクラウンを出力しておき、

新しいレジンでクラウンを出力、慣れたレジンとのフィット感を比較検討して

出力精度が保たれているか(重合時間が長すぎると膨張してクラウンフィットがキツくなる)

確認することができます。

 

www.thingiverse.com

 

こういったデータを使用して精度確認をさらに細かく行うこともできます。

ただし、レジンはそこそこ量を使用するので、高価な歯科用レジンを

テストで何回も出力するのは心が痛みます・・・

先述のクラウンでの比較であれば、精度確認を何度か行なっても

1クラウンあたり100円ほどしか無駄にならないので取り組みやすいです。

 

スライスソフトでの配置(傾け方)

次に、スライスソフトでの出力物の配置ですが、

出力物をナナメにするか、ナナメにしてどちらを下に向けるか

この辺りを考えておくとうまくいきます。

 

上顎前突の全顎模型であれば、フレアーした前歯を上に向けて

前歯の唇面をプラットフォームと直角に近づけて傾けるとうまくいきます。

 

ロングスパンのTEKなどなら、何度か出力してみた感じでは

アーチの中央部分を下向きにすると、プラットフォームからの剥がれが起きにくいようです。

 

サポート形態について

3D歯科 はスライスソフトはChituboxを使用していますが、

このソフトをはじめ、多くのソフトに自動サポート付与の機能があると思います。

症例1つずつサポートを手作業で打っていくのは、手間もかかりますし

後で再現性もなく、精度や失敗の比較検討をしづらいと思います。

 

そのため、サポート形態はソフト任せで自動で行なっています。

模型用で使用するElegoo水洗いレジンでは65%前後。

TEKやデンチャーなどでは50%程度のサポート量付与にして代わりにサポートを太くしています。

 

レジンのセッティング

さて、4、レジンのセッティングですが、これだけは非常に厄介です。

前提としては、レジンと3Dプリンターの組み合わせでそれぞれセッティングを変えないといけない、ということです。

 

同じレジンを使用していても、3Dプリンターが変わると全く設定は変わります。

3Dプリンターは同じでも、レジンの粘稠度などで設定は変えないといけません。

 

メーカーからセッティングが提供されていることが一番ですが

歯科用レジンなどは、ほぼシェアされていません。

 

これについては試行錯誤を繰り返すほかありません。

 

試行錯誤の方法については、

①よく使用するレジンの中で、粘稠度が近いものの設定を流用する

②重合ができなかった場合にどこが壊れていたかを見極める

 >>プラットフォームからすぐ剥がれている:初期硬化時間を増やす

 >>出力物が途中で切れている:引き剥がし速度を落とす、重合時間を増やす

 >>出力物が膨張している:重合時間を減らす

③パラメーターを変更する場合は、極端に変えてみる(出力自体ができるか確認する)

④多少でも改善されたらパラメーターを微調整してスイートスポットを見つける

 

この辺りが実際の方法になります。

完璧なパラメーターが見つかりましたら、私も教えてほしいですが、

今現在で、ほぼ出力ミスのない状態まで突き詰めたChituboxのレジンセッティングを

コチラにて公開しています。

note.com

 

3Dプリンター自体のアナログなトラブル

最後に、常に気をつけないといけないのは5、アナログなトラブルです。

 

非常に残念なミスとしては、出力終了前に電源がタイマーで落ちていた(予想時間より出力時間が増えることもあります)

レジンが足りなかった、入っていても粘度の高いレジンではたっぷり量が必要です。

 

また、前回の出力でミスが起こっていた場合、レジンバット内にレジンのかけらやクズが

残っている場合があります。

毎回濾して綺麗にするのは面倒ですが、出力ミスが起こった時には内部の汚れを確認しましょう。

汚れがあると、そこでプラットフォームが引っかかり、歪みや重合不良の原因になります。

 

まとめ

今回は、3Dプリントの重合ミスをなくすためのノウハウをお伝えしました。

しかし、ノウハウ、と言ってもこれが正しいのかも分かりません。

3D歯科 の試行錯誤と経験からのお話になります。

もしも、もっと簡単にミスを回避する方法などがありましたらぜひコメントから教えてください。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。