3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

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コピーデンチャー、3Dプリントデンチャー製作用の「義歯スキャン」について〜①スキャン方法あれこれ

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はPEEKクラウン保険収載について考えました。

digitaldentistry.hatenablog.com

・・・が、素材としてはまだ突っ込みどころが多いマテリアルのようで、

接着がかなり難しい、ミリングで変形など起こすかも、マージン付近のトラブル出るかも

とのことです。患者さんの希望で数症例行ってみますが、もし重大なトラブルなどありそうなら共有させていただきます。

 

今回は、デジタルデンチャーを作成する第一歩、既存の義歯のデータ化についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

既存の義歯のデータ化方法いろいろ

既存の義歯がある程度いいものであった場合、

もしくは改造することで咬合床付き個人トレーとして使用できそうであった場合

義歯をデータ化することで3Dプリントできるようにし、診療効率を上げることが可能になります。

 

ですがこのデータ化をどうすればいいのか、どの方法が高精度なのかというのが

悩ましいところになりそうです。

 

今現状での既存の義歯データ化方法は、以下のようなものが考えられます。

 

  1. 技工用スキャナーでスキャン
  2. 口腔内スキャナーでスキャン
  3. 義歯をCT撮影してスキャン

それぞれメリット・デメリットがありますので簡単にご説明します。

 

1.技工用スキャナーでの義歯スキャン

まずは技工用スキャナーです。

 

精度:機種によるが一番良い

スキャン速度:スキャン自体は早い

スキャンの簡単さ:スキャン自体は簡単

スキャンの問題点:スキャンパウダーが必須

コスト:約100万円〜

 

簡単にまとめるとこのような形です。

 

3D歯科 は院内でのデモを受けただけではありますが、

技工用スキャナーで義歯スキャンを経験しました。

 

技工用スキャナーのメリットとして、一度のスキャン範囲が広いということが挙げられます。

スキャンは簡単にいうと何枚もの写真を撮ってそれをつなげて立体構造を作る(機種による)

方法となりますので、繋ぎ合わせの回数が少なくなることで

精度が向上する可能性が高くなります。

 

スキャン自体はスキャンエリアに安置してボタンを押すだけ、簡単です。

ただし、全ての技工用スキャンは義歯を撮影する際にスキャンパウダーが必須とのことです。

 

また、EDGEという機種を試したのですが、

スキャン自体はパテで固定した義歯をスキャンエリアにおくだけですが

ソフト自体が技工士さんの触る昔ながらのソフトのインターフェース、という感じでした。

 

Meditに慣れたドクター、またスタッフが操作することを考えると

個人的にはちょっと厳しく、技工士さんがいる医院で導入すべきものかなと思いました。

 

2.口腔内スキャナーでスキャン

口腔内スキャナーは、もちろん口腔外でもスキャナーとして利用できます。

TEKのカウンターを記録したり、顔貌スキャンも頑張れば可能です。

 

精度:機種によるが十分に良い

スキャン速度:練習すれば機種によるが1分半〜4分程度

スキャンの簡単さ:コツが要る。口腔内スキャンと同様に練習必要

スキャンの問題点:スキャンパウダー推奨のスキャナーも

コスト:約200万円〜

 

さて、精度ではありますが 3D歯科 の個人的な見解としては

機種により多少の差はありますがどのスキャナーも義歯製作には十分な性能と思います。

機種の検証はPrimeScan、Medit i700、ショールームのA-oralscan3で行いました。

 

 

Prime Scanについてですが、発売当初は義歯のように光って透明なものはスキャンできませんでした。

そのためポリグリップパウダーをまぶしてスキャンパウダー代わりに使用することを

個人的に推奨していましたが、今回検証してみるとアップデートされたソフトウェアにより

パウダーなしでスキャンできるようになっていました。

現状ではパウダーありよりも無しの方が早い上に結果もいいです。

すみませんがポリグリップパウダーをわざわざかけていた先生、パウダーなしでお試しください。

スキャン時間は3〜4分。口腔内スキャンと違い時間がかかってしまいました。

 

Medit i700は、日常診療でメインで使用しており操作に慣れています。

ですがパウダーなしでは義歯のマッチング中に大きくずれてしまうことがあり、

そのままでは義歯スキャンが困難です。

ですがここにポリグリップパウダーをまぶしてあげると、非常にスムーズに

スキャンできるようになります。パウダー使用を推奨します。

スキャン時間は2分半ほど。いつもチェアサイドで義歯スキャンしていますが、

忙しい診療室でもそこまでストレスになりません。

 

A-oralscan3は 3D歯科 は所有しておりません。そのため操作もあまり慣れていませんが

模型スキャンの感じとしてはMeditのような撮影範囲と速度に感じました。(PCに依存かも)

ですが、義歯スキャンになると驚きの結果が出ました。

パウダー不要で1分半ほどでスキャンができ、後縁や切縁なども綺麗にスキャンできました。

エラーもほぼなく3機種の中で最も義歯スキャンが高速だったので価格を考えると驚きました。

 

価格を考えると技工用スキャナーより高額な投資になりますが、

義歯スキャンをどんどん行っていく!という医院などであれば

義歯スキャンもできて、口腔内のスキャンもできる、と考えると

技工用スキャナーとの差額もむしろ安く考えられるかもしれません。

 

3.義歯をCT撮影してスキャン

さて、義歯をCTスキャンでデータ化するというのは

この本などで目にしていましたが

 

インプラント診断のCTスキャンなどは、1mmほどの誤差が出ることがある・・・

と聞いていたこともあり、勝手な思い込みで精度が問題になるかもと考えていました。

 

ですが研究されている先生のデータのヒートマップをみるとほとんどずれもなく

クラウンでは問題かもしれませんが義歯であれば問題ないようでした。

 

まだ研究を始めたばかりであまり数をやっていないので感想程度ではありますが・・・

精度:十分と思われる

スキャン速度:CT撮影と同じで高速

スキャンの簡単さ:設置場所や管電圧?など設定すれば誰でも撮影できそう

スキャンの問題点:金属バーや金属床はアーティファクトで基本的に利用不可能

コスト:CTをお持ちの先生は0円

 

セッティングなどを揃えて仕舞えばオペレーターによるずれがないと思われるので

スタッフに任せる場合など口腔内スキャナーでは義歯スキャンが難しい、

スキャナーを使用する自信がないという場合にも非常にいいと思われます。

 

まとめ

今回はデジタルデンチャーの入り口、まずは既存義歯をデータ化する方法について

それぞれの手法のメリット・デメリットについて紹介しました。

 

義歯データを全ての患者さんから収集することができれば、

将来的な義歯紛失や破損に備えられるだけではなく、

データからデジタルデンチャーを作成する際のヒントを学べるかもしれません。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

PEEK(ペクトン)クラウンの保険収載を考える

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はブラックフライデーセールやクラウドファンディングを用いて

歯科用機器として使用できる製品を低コストで入手できることをお話ししました。

 

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、突如ニュースが飛び込んできた、2023年12月からの保険改正で導入される

PEEK(ペクトン)クラウンについて考えます。

よろしくお願いします。

 

PEEK(ペクトン)とは

PEEKは熱可塑性のスーパーエンジニアリングプラスチックの1つです。
樹脂素材の中でも性能が特に高い素材で、多くの環境下で高機能を発揮します。
正式名称は「Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン)」です。
一般的には正式名の頭文字を略してPEEK(ピーク)と呼ばれています。

しかし、PEEKは非常に硬い素材であるため、フライス加工の際に欠けやすいという欠点もあります。

PEEKは樹脂素材の中でもトップクラスの機能を持つ高機能樹脂です。
耐熱性・強度・寸法安定性・耐薬品性に優れています。
非常にバランスに優れた特徴を持ち、広い範囲で使用することが可能です。
従来の素材で対応困難だった場面でも、PEEKで解決できる可能性があります。

 

・・・と言うことです。

とにかく、「とっても強度や性能の高いプラスチック」と言うことですね。

 

 

さらに、歯科用途ではクラウンのほか、インプラントのショックアブソーバーや

ポストコアに利用して歯根破折のリスクを低減しようとするなど、

咬合力による歯の破壊を防止してくれる可能性のある、簡単に言うとショック吸収機能まで有しています。

 

作成方法

PEEKクラウンの製作は、ディスクやブロックのCNCミリングのほか、

EMAXのようにショットで鋳造のように作成することもできるようです。

 

今回導入されるPEEKクラウンの製法は、Rolandなどの従来のミリングマシンを用いて

ブロックでミリングして製作する方法になります。ディスクは許可されないようです。

この辺りはCAD /CAM冠と同様ですね。

 

実際の保険導入後の見通しについて

 

PEEKについてはミリングで簡単に製作できることもあり、物性も優れているので

必ず保険導入の流れになるだろうな、とも思っていましたが

こんなに急に入るとは思っていませんでした。

 

上下大臼歯に制限なく(CAD /CAM冠では7欠損だと6に入れられない制限がある)

メタルフリーを使用できるようになったことは患者・医院共にメリットがあります。

 

また、チタンクラウンと違いラボはモデルフリーでの作業が可能なので

口腔内スキャンが保険導入されたのちには医院・ラボ共に

ブリッジ以外すべての保険クラウン補綴がスキャンで可能になります。

 

写真を見るとわかるように、PEEK材は審美的ではありません。

ですがメタルクラウンを使用していたことを考えるとメリットは大きいでしょう。

 

また、PEEKはフルマウス症例のフレームワークにも使用できるポテンシャルがあります。

つまり、今回の保険導入は単冠のみ(多分)ですが、たくさん保険請求され使用されれば

きっと1〜2年後にはブリッジも適応に入るように思います。

 

ぜひみんなでPEEKを使用しましょう!

 

まとめ

 

今回は急にニュースが舞い込んだPEEK保険導入についてお話ししました。

 

保険収載を目指す話し合いではそれ以外にも、

・CAD/CAM冠の表面コーティング

・口腔内スキャナーの保健適応

・チタンクラウンによるブリッジ

・コピーデンチャー

・3Dプリントデンチャー

など、さまざまな新技術(?)が保健適応を目指して議論に挙げられているようです。

 

3D歯科 としては3Dプリントデンチャーが保険に含まれるのを期待して研究中なので

ぜひ進んでいってほしいですが、今回のPEEKミリングなどと違い

プリンティングは後処理も含めて均一化が難しい

(表面にベタつきがあるまま口腔内に入れると毒性がある可能性)

ので、保険に収載されるのはすぐではないだろうな・・・と冷静に見守っています。

 

いずれにしても、保険治療を行う歯科医院である以上は避けられない話題です。

今後も保険診療の枠の拡大が行われるように期待しましょう。

 

 

また、臼歯部のワックスアップをAIを活用して自動化する方法を提案します。

noteの方に更新しましたのでよろしければ見てみてください。

note.com

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

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クラウドファンディングやブラックフライデーセールでお得に機器を購入する

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は3Dプリント処理を高速化するための、後処理について考えました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回はちょうど時期になってきたブラックフライデーセールや、

個人的に最近はまっているクラウドファンディングでの今購入しておきたい

機器についてお話しします。

よろしくお願いします。

 

Elegoo製品

早速ですが、昨日くらいからamazonブラックフライデーセール(先取り?)が開始しています。

Elegooはいつもセールで値段が大きく下がるようで、今回も販売されたばかりのような

Mars4Ultraが4万円を切るなど非常に安価になっています。

Mars3Proは3万円を切ったこともありますが、十分に安価と思います。

 

Mars3Pro以降は1台購入したら2〜3年は陳腐化せず使用できるのではないでしょうか。

Sonic MINI 4K派の方々も、生産終了につきSonic MINI 8KSに乗り換えているようですが

Sonic MINI 4Kは2020年8月発売。

3年以上経過しても今も現役で使用できているケースも多いと思います。

 

民生品の3DプリンターはパーツやLCD液晶なども交換部品が同じくAmazon

安価に翌日に入手できることが魅力ですね。

 

Mars4Ultraの出力速度とプラットフォームからの剥がしやすさは特筆すべきものがあります。

ただし!かっこいいグレーのカバーは直射日光に置くと中のレジンが固まるので注意です。

Mars3までの赤色カバーは日差しが不意にプリンターにあたっても防護してくれています。

(Sonic MINI 4Kも同様に特定周波数の紫外線は通してしまうとのこと。)

 

 

院内Wi-Fi環境を強化する

Amazonセールで狙いたいのがTP LinkのDecoシリーズです。

3D歯科 個人としては、全歯科医院にこれを勧めたいほど院内のWi-Fiトラブルが減少します。

 

しかも万が一ネットワークエラーがあれば本体下部のライトが赤く光るので、

例えばパソコンのエラーなのか、サーバーダウンなのか、院内のネットワークのエラーか

切り分けをしやすくなります。

同時接続台数も多くスタッフの昼休みも安心。予算があれば多分金曜からセールになる

X60以上のモデルもお勧めです。

広い医院の先生は何台か電源に差し込めば、同じWi-Fiアドレスで院内全てをカバーできます。

 

光重合器(前回レビューのもの)

これも多分、金曜以降にセール価格になるのではないでしょうか。

3D歯科 が購入したときには3万円台前半でしたのでそれなりに価格変動が大きいようです。

 

ちなみに水洗いレジンはLowの1分照射を表裏行えばサラサラにしてくれます。

水洗いレジンを水で洗ったまま、水を入れたガラスなどの容器に入れて照射もOKで

時短・便利に使用しています。下のターンテーブルも強力で水量が多い状態でもちゃんと回転してくれました。

 

Kickstarter ウルトラプリント 超高速3Dプリンター

https://ultraprint-max-12k-high-speed.kckb.st/a92329fd

 

Facebookなどの広告で一部で賑わっていた、バットウォーマー搭載、レジン継ぎ足し自動、

レジン抽出自動、二次重合機能、なんと200mm/hのプリント速度

(Mars4Ultraの約1.4倍の速度!?)

とスペックだけ見るとなかなかすごいものです。

 

もちろん使い慣れたレジンのパラメーターなどはどこにも公開されていませんし、

過去にはキックスターターでの3Dプリンターが故障ばかりだったこともあるようで

なんとも言えませんが、コンセプトと速度には夢があります。

一緒に人柱になりませんか・・・?

 

Makuake(国内クラウドファンディング) 3D Makerpro Seal

これについては情報をいただいて初めて知りましたが、(ありがとうございます!)

Revopointと同様にコンパクトで扱いやすい3Dスキャナーの新機種です。

 

異なる点は、技工用スキャナーに肉薄の0.01mm精度。

また多軸ターンテーブル付きの高精度モデルが約114,000円

これ、歯科技工をイメージして製作していないですか!?

 

 

 

人柱になるにはちょっと高額ですが、楽しくテストをするためにも、

Liteではなく高精度版をおすすめします。

0.02mm精度と0.01mm精度って、たかが0.01mmの差でしょ?

と思っていましたが倍の精度なんですよね。

(Revopoint POP3は0.03mm精度だったかな。フェイススキャンには必要十分です)

 

3D歯科 は募集開始ほぼ同時に購入しています。

一緒に人柱になりませんか・・・?

 

まとめ

毎年この時期になると、

Amazonが届かない日があれば「あれ、今日は届かないな」と思ってしまうほどに

Amazonさんにお世話になっています。

 

そうそう、水洗いレジン(SK本舗のとかElegoo純正とか)もこの時期に買い込むといいですよ。

寒くなったらSK本舗の水洗いレジンの方が出力ミスが少なくお勧めです。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

3Dプリントの速度を追求する③3Dプリント後の後処理・最終重合を考える

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はクラウン用レジンを高速出力するためにミニプレートを利用できる工夫を

紹介いたしました。理論上レベリングできるどんな機器にも活用できると思います。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリントが終了した後の「後処理」について考えます。

よろしくお願いします。

 

3Dプリンティング後の必要な処理

さて、光重合の3Dプリントを行なっている先生はお分かりかと思いますが、

プリントした後にもさまざまな後処理が必要になります。

 

  1. プリントした出力物をプラットフォームから剥がす
  2. 出力物についたサポート(プラモのランナーみたいなもの)を外す
  3. アルコールや水で洗浄する(レジンの種類による)
  4. 最終重合をして完全硬化させる

以上です。

 

1については慣れと初期層重合時間を長くしすぎないことで簡単になります。

2はスライサーソフトで必要最小限のサポートの数、太さを付与すればOKです。

3は結構面倒なところです。水洗いレジンならまだマシですが、比較的時間がかかります。

4は未重合層をなくし、出力物のペタペタ感を減らしレジンの安全性も高めます。

 

今回はこのうちの3、4について特に考えてみます。

 

出力後の洗浄について

レジンによって洗浄方法は変わりますが、

基本はアルコール洗いです。模型用などの水洗いレジンの場合は水道水で洗浄できます。

 

水洗いの場合、地方によって処理水の廃棄方法は違うそうですが

確実かと思うのはバケツの中で洗浄、優しく歯ブラシしてしっかり清掃し

廃水は光重合機器か日光に晒して濾してから下水に流す、濾したものは燃えるゴミ、です。

 

アルコール洗いの場合はIPAイソプロピルアルコール)での洗浄が推奨かもしれませんが

IPAはとても危険・有害な物質です。

20度以下で引火し、気化し、火災や健康被害の原因になる可能性があります。

 

そのため、このような無水エタノールを使用するほか、

 

個人的には消毒用のエタノールも問題なく使用できると思っています。

ただしアルコール%はレジンによって消毒用のものでは濃度?が不足するかもしれません。

ベタ付きが残るようであれば変更しましょう。

 

あとはアルコール洗浄する際には3Dプリンター用の洗浄機もありますが、

ホビー用のものでは洗浄力不足なようで、クラウン内面のレジンがうまく流せませんでした。

個人的には超音波洗浄機にガラスのビーカーを入れて蓋して洗浄しています。

オススメは温度管理機能のついたものです。

超音波洗浄オフで温度管理のみできるものであれば、冬場にレジンボトルを突っ込んで

そのままレジンを30度くらいに温めてから使用することもできます。

昔はアルコール洗浄を10分以上行っていましたが、どうやらアルコール濃度が高いもので

長時間洗浄し続けるとレジンが劣化してしまうようです。

アルコール洗浄は大きさや構造により10分以下、5分程度でOKではないかと思います。

レジンに指定があればそれに従いましょう。

 

最終重合について

さて洗浄が終われば4の最終重合して完全硬化させます。

 

3D歯科 は初め医院にあったモリタのアルファライトを使用していましたが

LEDの重合器の方が低価格でも効果が速く、ペタつきもなくなります。消費電力も少ないです。

 

しばらくの間はelegooのmercuryの初期型を使用していました。

1年ほどフル使用していると故障したのでElegoo Mercury Plusを購入してみましたが

LEDが後方一部分にしかないためか、歯列模型が15分ほど重合時間を置いても

ペタペタ感が取れず、かなり時間をかけないと完全重合できませんでした。

 

そこで最近、 3D歯科 の装備に加わったのがこちらの重合器です。

 

 

3Dプリンター本体ほどの大きさがあり場所的にはかさばりますが、

アルファライトやMercuryシリーズと比較して非常に高速で重合できます。

 

メーカー自体も水中での重合を推奨?しているようですが

LED強度がとても強力なようで水中やグリセリン浸漬下でも強力に重合します。

 

ちなみにLED強度はHigh、Mid、Lowから選べますが、

強度が強すぎるのかLow以外だとレジンが焼けたように変色してしまいます。

 

例えばHigh3分でレジン表面は綺麗になりますが・・・

↓ 左が照射前、右が照射後。

 

他の模型は濃い色なら写真でわかりにくかったですが、

確かに日焼けのような変色をします。

 

現在のところ一番いい設定が見つかっていませんが、

とりあえずLowの3分で運用しています。(1分でも模型なら十分かも)


これにより、例えば前回に記載したような

クラウン3Dプリント:20分

超音波とアルコールで洗浄:5分

最終重合:3分?

合計28分(約30分)

 

・・・と、当日のクラウンセットも可能な速度で現時点でもプリントできるようになりました。

 

まとめ

3Dプリンター各社は、プリンター本体だけではなく

洗浄や重合までをシステム化するような動きがあります。

 

PrimePrintなどはその最たるものですが、やはり高額・大型になります。

他のメーカーでは3台の機器でシステム化(プリント・洗浄・重合)しているものもあります。

 

どの状態で安全に完全重合されたかは、クラウンや模型の厚みによっても変化しそうなので

なかなか難しいところではありますが、きっともっと安全で後処理の楽な生体親和性レジンが

市販されるのも近い将来であるのではないでしょうか。

 

まずは模型レジンなどでは石膏模型と比較しても随分速く模型が完成できるようになりました。

後処理も楽になり、3Dプリントは年々、院内に取り入れやすくなっているように感じます。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

3Dプリントの速度を追求する②クラウンを高速で出力する

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は3Dプリント模型を高速で出力するための工夫について紹介しました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は補綴用のクラウンを高速で出力するための方法を考えます。

よろしくお願いします。

 

クラウン出力にかかる時間

前回にもお話ししましたが、3Dプリントの出力時間は

レジンの硬化時間(レジン自体の性能)と粘稠度

3Dプリンターの駆動可能速度(フィルム部分の性能と

などによって変化します。

 

模型用レジンや3Dプリンターメーカーの汎用レジンと違い

クラウン用レジンはフィラーが入っている影響かわかりませんが

非常に粘稠度が高く、流動性が低いドロドロのレジンです。

 

レジンの種類によって1レイヤーあたりの照射時間が模型レジンの2〜3倍かかるほか

ドロドロ状態では1レイヤー照射した後にドロドロレジンがプラットフォーム下に

回り込んで次のレイヤーを照射できるようになるまで時間がかかります。

 

そのためメーカー各種はプリンターの照射強度を上げたり純正レジンを改良して

プリント時間の高速化に取り組んでいます。

 

歯科用プリンターの高速モデル

さて、歯科用プリンターの高速モデルの出力時間はどの程度でしょうか。

 

今までのプリンターは、およそですがクラウン出力が60分、早い設定で40分程度

これでも早めの出力時間でした。

 

最近では3Dプリントクラウンのワンデイトリートメントが海外では取り組まれているようです。

 

例えば・・・

DentFabのSagaというモデル。

これはクラウンがなんと10分から15分で出力できるということです。

ですが$8000です。

国内代理店も、情報もほとんどありません。

 

次にSprintRayの95ProSです。

これは15〜20分でクラウン生成できるようです。

レジン自体もSprintRayは優れたレジンをどんどん発表しており魅力です。

会社としての資金力や将来性もよさそうで、なんとなくSprintRayは

今後の歯科用プリント業界を席巻しそうに感じています。

ですが$9000。もちろん高額ミリングマシンと比較すれば低コストですが

円安のことを考えると150万円近く。ちょっと考えてしまいます。

 

 

あとはACKURETTAのSOLです。

国内代理店は内容ですが、直販されている?ようで688,400円と出ています。

国内でも販売されているDentiqの後継モデルの扱いです。

特徴としてプラットフォームサイズが複数あり、小さなクラウン用を選択すれば

やはりクラウン1本15分でプリントできるようです。

 

さらに周辺機器との連携・後処理の効率化がされているようで

メーカーサイトにも60分以内でクラウン治療を終わらせよう!という触れ込みがあります。

 

なるほど、ポストキュアなども時間短縮できるモデルは便利ですね。

 

あとは国内代理店を通して購入でき、薬事認可のおりたプリンターで高速なものは

Ciで販売しているこちらでしょうか。

OnDemand3D 4Kプリンターです。

あまりに情報が少ないのですが・・・(おそらくDHプリントを)クラウン16分というのは

非常に魅力です。トータルで洗浄、ポストキュア機器まで付属して78万円。

 

もちろん高額なのですが、3Dプリント自体をスタッフに任せたりするのであれば

洗浄後処理がシステムになっていたりサポートを受けられる環境の方がいいかもしれません。

CYBERMED自体は韓国の会社で、ソフト系では昔から有名な会社のようです。

LCDなので汎用プリンターと同様に、液晶の経年劣化と交換が早めに必要かもしれません。

 

手元の3Dプリンターを高速化する

さて、追加投資を抑えて手元の機器をフル活用することを考えます。

前回にも紹介した↓のようなモデルもあります。

使用のプリンターがPhrozenのSonic Miniシリーズでしたらこれを購入するだけで

プリント速度が高速化されます。しかしプリンター本体と同じくらいの価格です。

 

つまり同様の発想で、手元のプリンターのプラットフォームを小さくし、

照射設定を高速化すればクラウンレジンも素早く出力できるようになります。

 

使用するのはこちらです。

 

 

 


Sovol 樹脂磁気フレキシブル鋼板 フレックスベッドフィット 磁気 軟鋼板 スチールプラットフォーム 磁気ベース付きばね鋼板 樹脂フレキシブルスチールビルドプレート 樹脂ビルドプレート+マグネットシート Saturn Voxelab Proxima 8.9’ 4K Flashforge Foto 8.9 3D プリンターに適用

 


スペアパーツとしてプラットフォームを持っていれば、2300円以下の投資です。

やり方はプラットフォームにマグネットシートを貼り付け、

中央に1mmのスチール板を磁石でくっつけます。

模型など大きなものを出力したければ薄いスチールプレートを貼り付ければ

いつも通り大きくプラットフォームを使用できます。

 

注意点!

とにかく注意としては、再度のレベリングが必須ということです。

レベリングなしにそのままプリントするとマグネットシートとスチール1mmの厚みにより

LCDディスプレイが圧迫され破損の可能性があります。

自己責任でトライしてみてください。

 

低価格ミニプレートの性能

この工夫によりどのくらいクラウンレジンが高速化されるでしょうか。

 

大臼歯部はTEK用のクラウン20分です!

 

 

上顎の前歯は27分でした。

 

 

何度かテストをして設定を煮詰めていますが、

さらに駆動時間を速くするとプラットフォームや初期層からの剥がれが起き、

なかなか20分を切れません・・・

19分半くらいが現在の最速記録です。

 

まとめ

今回はクラウンレジンの高速化を研究しました。

低コストで取り入れられ、お時間があればテストしてみてはいかがでしょうか。

 

もっと安定して、パーマネントクラウンレジンが高速出力できるようになれば

ワンデイトリートメントを3Dプリントで行うようにできると思います。

国内で認可の取れたパーマネントクラウンレジンが登場することを楽しみにしています。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

3Dプリントの速度を追求する①3Dプリント模型を高速で出力する

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は 3D歯科 が個人的に「ベニアデンチャー」と呼んでいる、

簡単でズレない3Dプリントデンチャーの審美確保のためのポイントをお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリント自体の速度をさらに追求してみます。

よろしくお願いします。

 

3Dプリントの速度とは

3Dプリンターでよく比較対象に挙げられるのは、その精度についてだと思います。

 

50μmで出力して、それなりに精度の高いレジンを使用することで、

最新の3Dプリンターであればほぼ全ての機種で精度については問題ないレベルにきていると思っています。

むしろプリント時のスライサー設定、すなわち重合のしすぎやサポート形態の付与の不良など

プリンター本体とは別のところで精度が下がることがあるように思っています。

 

精度が高い歯科用プリンター!とうたっていても、100μmで出力している速度が広告されていたり、咬合面にびっちりとサポートが立てられていたりと

使用方法に問題があると、せっかくのプリンターを活かせないこともあるかもしれません。

 

 

さて、速度についてですが、3Dプリンターは光照射を行なったのちにプラットフォーム面が上下に動くことで積層出力されていきます。

すなわち、3Dプリントの速度は・・・

 

・1回あたりの光照射時間

・プラットフォームの移動速度

 

これによって決まってきます。

 

それぞれ、速度を決定する因子としては

・1回あたりの光照射時間→短時間で固まってくれるレジンを使用する

・プラットフォームの移動速度→高速で駆動させてもトラブルの起きない機器を使用する

ざっくりと言うとこういうことになりそうです。

 

なんとなく短時間で硬化可能なレジン、というのはイメージしやすいですが

プラットフォームの移動速度と言うのは際限なく高速に設定すれば良いように思ってしまいます。

 

ですが、駆動が高速過ぎると、FEPフィルムから硬化したレジンを剥がす際に

プラットフォームから脱落してしまうため、特に粘稠度の高いレジンはゆっくりと移動させないといけません。(ネバネバのレジンだと高速で動くと上手く流れない)

つまり高速で駆動させても良いかどうかは、フィルムからの剥離抵抗とレジン粘稠度により

決定するものと考えられると思います。

 

ちょっとマニアな話かもしれませんが、なんとなく頭に入れておきましょう。

 

3Dプリント速度を高速にする

以上を踏まえてプリント速度を高速にしようとすると、機器本体の方では剥離抵抗を減らす

必要が出てきます。

この時に必要になるのは、剥離しやすいフィルムを使用することと、

プラットフォームの大きさを小さくして剥離抵抗を下げることです。

 

プラットフォームを意図的に小さくすることは歯科用途のモデルでも工夫がなされています。

この界隈で有名なファーガソン先生のミニプレートや↓

 

個人的に今とても興味のあるACKURETTAのSOLと言うプリンターにおいて

↑この写真のように、プラットフォームの大きさが複数販売されています。

 

ACKURETTAのサイトにはこれについても詳しく記載があり、

同じレジンバット内でもプラットフォームを小さくすれば速度を上げられることを

わかりやすく画像で示してくれています。

 

プラットフォームを小さくすること、剥離するフィルムを良いものにすることを考えると、

Elegooの新商品のElegoo Mars4 Ultraはベストチョイスな気がしています。

3D歯科 も2台並べてテストプリントを行なっていますが、

単純にプリントして模型を見たい!と言う内容においては高速でストレスが少ないです。

なにやらACFフィルムというものが良いそうで(詳しくありませんが)

剥離抵抗を減らしてくれることで高速駆動が可能になります。

 

 

 

 

模型レジンを高速仕様のものに変更する

さて、プラットフォームが大きすぎず、マシンとフィルムも高速駆動できるものを選択すれば

あとはレジンを高速仕様のものにすればOKです。

(次回以降にはさらに高速にすべく、プラットフォームをわざと小さくするアイディアを紹介します)

 

 

SK本舗の、11月中頃発売のSKファストライジングレジン(水洗い)です!

Mars4Ultraのような高速プリンターとの組み合わせで、粘稠度が低く照射時間が抑えられる

このレジンを使用すると従来の3〜4倍の速度でプリントできるようになるそうです。

 

精度は多分、普通のレジンや、もちろん歯科専用模型レジンなどに劣るのだと思いますが

急ぎで形態確認をしたい、早くプリンターを空けて次のプリントを行いたい、

というニーズにマッチすると思っています。

早速 3D歯科 も、たくさん注文し使用予定です。

テストできたら模型がどのくらいの速度と精度でプリントできたかシェアさせていただきます

 

 

まとめ

今回は口腔内にセットするようなものではない、

形態確認用などの研究模型用レジンについて高速出力するためのアイディアをお話ししました。

 

次回は高速なプリンターをさらに高速化するためのプラットフォーム小型化と

その効果についてお話しさせていただく予定です。

 

プリンターの進化でついにインハウス・ワンデイでも3Dプリントクラウンが

行えるようになってきているようです。

もちろんCAD操作も、出力後の後処理やプリントミスへの対応など

色々と考える必要はありますが、3Dプリンターの進化は早く、

とても将来が楽しみです。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。

 

 

3Dプリントデンチャーの歯肉・歯冠をズレなく接着するために③「ベニアデンチャー」のススメ(Medit Splints使用)

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は3Dプリントデンチャー製作の悩み、人工歯と床の接着を

簡易咬合器の機能を使用して接着ガイドを作ることで解決することを紹介しました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回はややトリッキーな方法で、接着操作における義歯のズレをなくす方法を紹介します。

よろしくお願いします。

 

3Dプリント義歯の作成方法おさらい

前回にも記載しましたが、3Dプリント義歯を審美も考慮した上で仕上げるには

以下のような方法が考えられます。

 

  1. 歯冠色のみでプリントして歯肉色ステイン
  2. 歯冠色で人工歯、歯肉色で義歯床を作ってから接着
  3. 歯冠色でベニア製作、咬合接触点含む義歯の大部分を歯肉色で作り、接着
  4. 歯冠色で義歯全体を作り、頬側の歯肉部分のみ歯肉色でプリントしたものを接着

 

このうちの1については、匠の技が必要とされる分野ですが、

上手な方はとても綺麗で立体的な義歯を仕上げられます。

 

2はよくある方法、どうしても咬合がずれやすいので

前回紹介の簡易咬合器を付着してガイドとし、接着して精度を担保します。

↑このようなCADを製作します。

 

3はお手軽に2色に色分けした義歯をズレなく接着できる方法です。

歯冠の咬合接触部分以外をブーリアンカットし、咬合しない部分のみを歯冠色レジンとします。

弱点は咬耗です。テンポラリー用途であれば個人的にはおすすめです。

↑大臼歯全体を含めて臼歯部咬合面は全て歯肉色レジンです。

 

最後に、今回紹介するのは4の歯冠色で義歯全体を作り、頬側の歯肉部分のみピンク色で出力する方法です。

 

「ベニアデンチャー」のススメ

3D歯科 はデジタルデンチャーに取り組み始めてから、

歯肉・歯冠色を分けて出力するやり方を主に試してきました。

しかしそのままではバイトがずれることが多く、前回までご紹介の方法、

ガイドでずれを最小限にしたり、咬合面まで歯肉色で対応したりしました。

 

モノリシックならズレないのでは?と言われそうですが、残念ながら

3D歯科 は絵心がありません。ヌールコートのガム色が出てからはマシになりましたが

患者さんに(特に自費で)最終補綴として提供するには忍びないクオリティでした。

 

3D歯科 にとってデジタルはこのようなアナログの苦手さをカバーしてくれたり

追加の投資をしなくてもシンプルで低価格で問題を解決してくれる方法を提供してくれるものです。

 

なので今回も、アイディアで問題を解決してみました。

個人的には「ベニアデンチャー」と呼んでいるのですが、このように

ガム色ベニアを歯肉部分に貼り付けて立体感をつけるものです。

↑歯冠色と歯肉色を接着してすぐの状態です。まだコーティングをしていない状態。

 

 

いかがでしょうか。患者さんの希望でこの症例は歯肉の立体感をあまり強調していませんが、

かなり立体的に凹凸を強調することも簡単に行えます。

 

ステインやガム色ペーストレジンの手盛りでは、どうしても再現性が得られませんので

患者さんが義歯を無くしたときなどでは、同様の形態で再度お渡しするという

デジタルの強みが活かしづらく思っています。

 

しかし「ベニアデンチャー」であれば歯肉の形態付与は歯肉色レジンに直接凹凸をつけて造形するので再現性があり、

歯肉の部分の厚みや形状で色の立体感も表現できるので、数種類作成しておき

患者さんにいわゆる配列試適の際に好みの歯肉形状を選択していただくことが可能です。

 

本気を出せば人工歯部分をサンドイッチするように頬側と、舌側(口蓋部分)に

歯肉色ベニアを貼り付けることも可能になります。

これにより2色ディスクを使用したミリングデンチャーのように、

最遠心の見えにくい部分以外は通法のデンチャーのように綺麗に2色になり

ほぼ全ての患者さんの審美の希望に沿うことができます。

 

ベニアデンチャー+ベニアダイレクトボンディング

さて、さらに発展させましょう。

 

歯肉部分を歯肉色のレジンでベニアを貼ったのちに、

前歯部の唇側面にはさらに審美性を持たせるためにベニア処理を行います。

↑インジェクションCRを行なった直後の状態。バリがあります。

ですがベニアにすることで歯冠色にも立体感が出てきます。

(上顎左右の中切歯、側切歯です。ちなみに下顎前歯はAプラスのステイン材使用です)

 

↑(国内でどのくらい気にする方がいるか不明ですが)CRベニアしたところは

蛍光性を持たせることができるようになります。

義歯を入れてディズニーランドやUSJに行っても安心です!

 

唇側面のベニアCRは、シリコンインデックスを使用してインジェクションしました。

note.com

あらかじめCADでエナメル部分を切り欠いておいても良いと思いますが、

作業効率を考えて上の症例ではエナメル部分をアナログ操作で削合してから

CR充填を行っています。念の為にボンディング操作も行いました。

 

「ベニアデンチャー」のCAD操作について

実際のCAD操作は以下の通りです。

さまざまなCADソフトで作成可能ですが、Medit Appsを使用した方法を紹介します。

コピーデンチャーやデンチャーのCADデータ作成までは過去のnote記載の方法の他、

DenTruなどお好みのソフトを利用してください。

 

  1. 作成したモノリシックコピーデンチャーをMedit Splintsに読み込み
  2. 義歯を90度立ててSplints操作でマウントし、挿入方向も唇側からとする
  3. 歯肉形態に合わせてSplints操作で唇面のみスプリントで覆うようにする

以上です。とってもシンプルですが思いつくまでに2晩ほど眠れぬ夜を過ごしました・・・

ポイントは、歯肉のスカルプティングをセーフティーマージンがある状態で行えることです。

これはMedit Designほか汎用CADソフトで行うとエラーが出やすく煩雑になるところ

Medit Splintsを使用する大きなメリットであると思っています。

つまり、↓のようなCAD結果となるのです。白色がMedit Splints出力です。

実際のCAD作業の動画付きのものも、noteにて作成準備中です。

noteの方にはより詳しい作成のポイントや旧義歯なしの方への対応など

ここ最近で得たノウハウなどをまとめるつもりでおります。

 

まとめ

ここ2〜3週間は3Dプリントデンチャー作成に再度ハマり、毎日夜遅くまでMeditソフトと向き合っていました。

 

クラウンのCADも、咬合再構成や審美のCADももちろん楽しいのですが、

義歯のCADは義歯を無くした方や旧義歯で苦労している方が3Dプリント義歯を入れた瞬間に

これはいい!ようやく食事が食べられる!と喜んでくれるのが魅力です。

 

まだまだアナログ操作の稚拙さによりバイトの前後的なズレに悩まされることもありますが

再度バイトスキャンを行って簡単に再製作できるのも魅力です・・・ないのが一番ですが。

 

今回の義歯を入れた口元です。

バイトや吸着はOK、ちらっと見える歯肉は審美面でも問題ないと思っています。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

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↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。