3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

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3Dプリントデンチャーの歯肉・歯冠をズレなく接着するために②人工歯と床の接着を工夫する

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はMeditのフリーで使用できるCADソフト、ClinicCADのアップデートについて

コンタクト部分の調整とグルーブ付与が改善されたことを紹介しました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

 

今回は研究を続けているデジタルデンチャーについて、

CAD作成後、3Dプリント後のずれを減らし処理を簡易化する方法を紹介します。

 

よろしくお願いします。

 

3Dプリントデンチャーをそれなりの見た目にするための4手法

3Dプリントしたトライインデンチャーは、咬合もバッチリで粘膜適合もよく、

実用に耐えうるものということは感じていますし、有効性を実感されている先生も多いと思います。

 

金属床をご希望いただいた患者さんに、3Dプリントのトライインを使用してもらい

ティシュコンやシリコンで咬座印象、技工にお願いして完成・・・

患者さんからは完成の金属床よりも3Dプリントの方がしっくり噛めた、と言われることも

しばしばあります。往々にして口腔内での調整もアナログ技工製作後の方が多いです。

既成の人工歯に置き換えますし、重合収縮もあるので当たり前ではありますが。

 

では(患者さんがご理解いただけて費用負担が医院・患者ともにOKなら)全ての総義歯や

それに準じたパーシャルはすべて3Dプリント製でいいのではないか、と思ってしまいます。

 

ですが問題は3Dプリントのトライインデンチャーは見た目が悪いことにあります。

 

噛めればそれでいいよ!と言っていただける患者さんには、

例えばDHプリントの歯冠色だけで問題なく使用いただけます。

ご年配の方でニコッと笑っても口唇が上がらない場合は、現実的に問題ないと思います。

 

ですが義歯を外した瞬間に今までの入れ歯と見た目が違うので

拒否反応を起こす患者さんは多いです。

 

そのため、なんとか歯肉ピンク色と歯冠色を分けて見た目を整えようと努力しています。

方法としては・・・

 

・歯冠色のみでプリントして歯肉色ステイン

・歯冠色で人工歯、歯肉色で義歯床を作ってから接着

・歯冠色でベニア製作、咬合接触点含む義歯の大部分を歯肉色で作り、接着

・歯冠色で義歯全体を作り、頬側の歯肉部分のみ歯肉色でプリントしたものを接着

大きく考えるとこの辺りが思いつきます。

 

どうしてこのような複雑なことを考えるかというと、歯肉色で作成した床と

歯冠色で作成した人工歯を人の手で接着すると、咬合がズレて台無しになるからです。

 

歯冠色のみでプリントして歯肉色ステイン

3D歯科 は、絵心のある先生や技工士さんは、これが最強だと思っています。

何よりも製作過程でバイトが絶対にずれません。

モノリシックでの製作は、クラウンでいうフルジルコニアと同じですので、

現場での咬合採得、CADさえしっかりやれば、絶対に噛める義歯ができます。

 

最近ヤマキンから新しいガム色のヌールコートが出まして、比較的歯肉色を出しやすくなりました。ですがステインなどのアナログ技工が苦手な身にとってはしんどい作業です。

 

何よりもステイン材は高価で、時間的なコストもかかります。

それさえクリアできれば個人的には一番精度も高く患者・医院ともにメリットがありそうです。

 

歯冠色で人工歯、歯肉色で義歯床を作ってから接着

さて、デジタルデンチャーで一番多い方法はこれだと思います。

 

プラモのように義歯床に人工歯を嵌め込んでいくのですが、これがまた難しい。

わずかなズレでも、チェアサイドでの調整が膨大になります。

ミリングであればオーバーサイズミリングで接着後に再ミリングできるとか。

プリントでもリマウントなどの方法があると伺いましたが、通院困難な患者さんは

調整なしで一発でお渡ししたい。

そう考えると、人工歯を人の手で接着するのはちょっと厳しいと感じています。

 

そこで考えるのが接着ガイドです。

人工歯と床部分にCAD上で簡易咬合器を取り付けてブーリアン処理でくっつけます。

↑テストレジンなので色分けに感動はないですが、ズレていない!という安心感があります。

↑最近ではCAD操作はほぼ100%をMeditの各種ソフトで行います。

自宅でCADしてアップロードを忘れて医院に行ってしまった!などのトラブルがなく

膨大なクラウドストレージに上げておいてくれるのはやはり快適です。

 

CAD操作のやり方1;

Medit Model Builderにて義歯床と人工歯をそれぞれ上顎、下顎として読み込み。

編集ツールで底面部分に穴あけ。

そのまま模型製作に進み、簡易咬合器を床と人工歯にまたがって設置。

(ただしエラーが出たり、簡易咬合器の位置が合わせにくいことも多い)

製作した簡易咬合器付きの模型をMedit Designで元のデータに再配列して、

Designで簡易咬合器部分のみ切り取ってブーリアン処理で元のデータにくっつける。

 

CAD操作やり方2;

任意のデータでModel Builderで簡易咬合器つきの模型を作成する。

Medit Designで簡易咬合器部分を切り取り、元データに重ねる。

元のデータとブーリアン処理でくっつける。

(簡易咬合器同士の平行性が担保されにくい)

 

歯冠色でベニア製作、咬合接触点含む義歯の大部分を歯肉色で作り、接着

前回までにも紹介させていただきましたが

digitaldentistry.hatenablog.com

テンポラリー用途や、顎位を探すときには良いのではないかと思っています。

床レジンで咬合するので削れます、削れますので咬合の確認や調整はしやすいです。

↑口唇圧排しても、正面から見えるところはほぼ歯冠色の歯となっています。

(製作物の形態がかっこよくなくてお恥ずかしいです・・・)

 

↑実際にはこのような構造です。

これなら咬合のズレは接着時に起こりません。

審美の平面の傾きのみ注意すれば仮の義歯として使用可能です。

 

歯冠色で義歯全体を作り、頬側の歯肉部分のみ歯肉色でプリントしたものを接着

次に考えるのは、歯冠は強度のある歯冠用レジンで作成し、見えるところだけを

ピンク色レジンで製作して貼り付けるというものです。

このほうが歯肉が歯の上にくる、という生体と同じ構造になるので

歯肉と歯冠の調和が取れるのでは、と期待して研究中です。

色付けの立体感などが(アナログ操作の下手な 3D歯科 でも)出しやすく

面倒なことが減らせると思っています。

 

テストケースでは、なかなか良いのではないかと思っていますので、

次回の更新ではこの内容についてもう少し深掘りしてみます。

 

まとめ

3Dプリントデンチャーは、良い本が出たこともあり巷でもよく聞くようになりました。

技工士さんも研究されている方が増えているそうです。

ただしやはり国内の保険でのフルデンチャー技工が低価格であるためか

保険適応などになるまではそこまで普及しないかもしれません。

ですが患者利益になることと、チェアタイムも短くアナログ操作が簡便になるので

今後も患者さんの理解のもとでより良い方法、簡単に製作できる方法を研究してみます。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。