3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

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デジタルデンチャーの3つのプリント方法について 2023 8/20更新 noteで製作方法を更新しました!

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は最終補綴を3Dプリントで作成する際に考慮することをお話ししました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回はフルデンチャー、パーシャルデンチャー共に

3Dプリントで作成するときに選択する方法について考えます。

よろしくお願いします。

 

3Dプリントデンチャーについて

今までにも何度かお話ししましたが、もともと義歯はレジンで作成するので、

3Dプリントでの作成に相性がいいです。

 

どんどん高強度な義歯床部分のレジンも発表されていますし、

前回お話ししたようにクラウン部分(歯冠色レジン)の進化もめざましいです。

 

作成がアナログの通法と比較して短時間・短期間でできるほか

データを保管しておけばいつでも複製できることは臨床上有用です。

 

3D歯科 もいろいろな事情で通法での義歯で作成ができない場合などに

3Dプリントで作成した症例を経験しましたが、

中には使用1年を超える症例も出ています。

 

そのうちの最初期のデジタルデンチャーについては

作成方法やレジン設定、材料選択などに問題もあり、

長期の使用で著しく劣化したものもあります。

 

↓毎日1年間以上使用いただいた義歯。特に歯冠色レジンの素材が海外製のTEK用レジンで

積層痕に沿ってひび割れたり研磨不足の凹み部分に着色が出たりとトラブルを起こしています。

↑さらに初期は作成後にリベースを行なっていたので(吸着するか不安だったので)

その継ぎ目が出たり、審美部位にライブピンクのユニファストを重ねて

さらに経年的に汚くなってしまったりと色々なことを学びました。

 

ですが1年以上この患者さんは通院もなく使用できており、

欠けたり割れたりもなく使用できたことは個人的に非常に自信になりました。

 

3Dプリントデンチャーの作成手法3つについて

さて、デジタルデンチャーを作成する方法を簡単に紹介します。

大まかには、プリントかミリングかに分かれます。

 

ミリングは物性も安定していますがディスクのコストが非常に高価であることがデメリットです。

おおよそ1床3万円ほど。海外では元々フルデンチャーが10〜20万円のこともあるそうで

患者さんに提供価格を設定しやすいでしょうが、国内では保険で1万円で作成できます。

材料費のみで3万円のミリングは少々厳しいです。

(先日のストローマンフォーラムにてCARESミリングセンターの先生が、

普及価格帯のデンチャーディスクを上市すると話されていました。

3〜5000円とのこと!ラボなどにとっては非常に魅力になるのではないでしょうか。

ただし専用?のミリングマシンは1000万円クラスです・・・)

 

個人的にはコストや応用が効くメリットのある3Dプリントを推したいです。

 

プリント方法①歯冠+床を別にプリント

一番よく行われているのは歯冠部分と床部分を別に3Dプリントし、

床用レジンで双方を接着する手法ではないでしょうか。

 

このメリットは、個別にステインしなくてもそこそこ審美性がよく

患者さんに受け入れられやすい点です。

先の写真も歯冠・床を接着して作成しています。

 

ただ、この接着部分の強度が落ち、歯冠の一部が破折した症例もありました。

継ぎ目に汚れやステインも目立ちます。

 

また作成の際にプリントを2回行う必要があり、

最後の接着の際に重合変形や浮き上がりなどで

咬合関係にズレが出る可能性があることがあるのがデメリットです。

 

プリント方法②歯冠色レジンでモノブロックでプリント

2つ目の方法は、モノブロックで1色でプリントすることです。

 

このメリットは何よりも技工作業が楽なことです。

また、接着しないということは咬合のずれが起こらず精度が高い可能性があります。

 

その代わり、基本的には歯冠色のレジンで重合するので、

プリント後にステインを行う必要があります。

このステインの材料はやや高価です。

これをユニファストなどで行おうと思いましたが、あまり綺麗には仕上がりませんでした。

 

また床レジンよりも歯冠レジンの方がコストが高いことが多く、

2色の場合よりも材料費は高くなりがちです。

 

プリント方法③床色レジンでモノブロックで作成、歯冠部分をCRに置き換え

歯冠レジンだけでモノブロックで出力するとレジンが高価。

歯肉色のステインも多量に使用するとコストが嵩む。

 

このデメリットに向かい合った上で、 3D歯科 では現在、小さな義歯は

CRのインジェクションを併用する方法でデジタルデンチャー作成に対応しています。

 

まずは床用レジンで全体を作成し、

アナログ作業で歯の部分を「歯冠形成のように」削合しクリアランスを作り

その部分をCRに置き換えるという方法です。

 

TEKやダイレクトボンディングを日常診療でおこなっているうちに、

義歯へアイディアを転用することを思いつきました。

CRの物性も上がっているので、簡単で応用しやすい方法と思っています。

 

わかりやすい色合いのテストレジンで説明すると・・・

 

 

 

↓このように義歯全体を床レジンで出力して、

 

歯冠部分を一層削合後にCRを流し込みます。

A3.5で行なっていますが、おそらくはオペークレジンの方が良さそうです。

(床レジンの色を透過してしまう)

 

表面滑沢材を塗って最終重合したのがこちらです。

CRですのでその後の対応がしやすく、TEK用の人工歯より咬耗しにくいCRを選択することもできます。

 

3Dプリントとデジタルの力で、デンチャー、矯正、ダイレクトボンディングなどなど

たくさんの治療方法が組み合わさって新しい活用方法のアイディアが出てきます。

 

ちなみにこのパーシャルデンチャーはMedit Linkの無料アプリのみで設計しています。

また時間ができたらnoteの方に解説付きで共有させていただきます!

 

 

更新しました!画像動画たくさんで重いかもしれませんが、

お時間がありましたらぜひ試して下さい!

note.com

 

まとめ

今回はデジタルデンチャーの作成する3つの手法について簡単に紹介しました。

 

海外では義歯の患者提供価格が高額なため、新しい素材や治療が取り入れやすいようです。

ですが日本では保険作成の義歯がとても安価で、

また技工料も歯科医院側が心配するくらいに安価です。

 

そのためデジタルで頑張って技工を行うよりも、保険で外注した方が早いので

(コストは3Dプリントであれば通法よりもかなり安価にはなりますが技工時間はかかります)

なかなか義歯に研究の時間とエネルギーを注ぎにくいです。

 

B4Dの義歯モジュールも数症例使用しましたが、TEKデンチャーなら

CADに要する時間があまり見合いません。

 

そのため、Meditで簡単に義歯を作成できるようになってきたことは

3D歯科 にとって非常にメリットが大きく思っています。

 

これを書いている今日も、

昨日スキャンして今日プリント、明日にセットの症例があります。

患者さんがお急ぎだったり、急に審美・機能の回復が必要になった時など

患者さんへのメリットは大きいと思っています。

 

デジタル技工での補綴製作は、どうしてもクラウン・インレーが主体となりますが

ぜひ義歯のCADもアイディアを出し合いながらがんばりましょう!

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。