こんにちは。
3D歯科 です。
前回はDentbird StudioでCTデータの解析を行いました。
digitaldentistry.hatenablog.com
今回はフルデンチャーなど、3Dプリントデンチャーを作成する際に問題になる
義歯床(ピンク色レジン)と人工歯(歯冠色レジン)の接着についてお話しします。
よろしくお願いします。
3Dプリントデンチャーについて
日本は超高齢社会と言われて久しいですが、総義歯を含めてデンチャーを使用する人口も増えています。
インプラント治療が予知性が高いと分かってはいながらも、全ての患者さんが
インプラントの恩恵に預かれるわけではありません。
今後も義歯のニーズは減ることはないでしょうし、介護現場や認知症の患者さんにより
義歯がすぐ必要になる、何日も食事が取れなくなるのは困る、
という治療日数や回数についての改善が求められていると思います。
改めてチェアサイドの義歯治療について考えてみましょう。
ピンクの粘土で(場合により誤嚥のリスクを抱えながら)口の型をとり
石膏を流し込んで型から模型を作りロウを溶かしたものを盛り上げて噛み合わせを決め
プラスチックを流し込んで長時間固めて、型から掘り出して完成。
3D歯科 はデジタルが好きですが、もちろんアナログの匠の先生の技を見るのは大好きです。
ですが自分自身がアナログ操作があまり上手でないこともあり、
何十年も変わらないような義歯作成の手法がどうしてもこのままでいいのだろうかと気になっていました。
そこで3Dプリントの義歯に取り組み始め、ご理解いただける患者さんに使用していただいて
臨床に活かし始めて1年以上が経過しています。
印象材の形をそのまま義歯に置き換える手法から取り組んで、義歯が分厚すぎると文句を言われることもありました。
分厚い義歯を改善しようとDenTruのような義歯専用ソフトも試しました。
自分でマージンラインを引くと吸着が得られない上顎義歯ができてしまうこともありました。
吸着はバッチリでも咬合が大幅にずれる症例も経験しました。
色々なうまく行った症例、失敗した症例を振り返るうちに、
再製作になるような大きなトラブルは、ほぼ咬合のずれ、
つまりバイトスキャンのエラーか歯冠・義歯床レジンの接着でのエラーだと気づきました。
コピーデンチャーでの口座印象を行い、口腔内でバイトスキャンを行うと
1色で作成した試適用義歯はほぼバイトが問題ない=問題はレジンの接着エラーとなりました。
3Dプリントデンチャーで起こるエラーについて
3Dプリントで義歯を作成した場合、起こるエラーは
・バイトスキャンでのエラー
・3Dプリント自体でのエラー
・歯冠&義歯床レジン接着時のエラー
です。
バイトスキャンは既述の通り、粘膜から咬合床が浮き上がっていない状態で
口腔内でバイトスキャンすることでほぼリスクを回避できます。
具体的には、バッチリ吸着している印象体そのものにロー堤を乗せて咬合採得し
吸着の破られない状態でバイトスキャンを行うことです。
3Dプリント自体でのエラーについては、ガイド用レジンやトレー用レジンなど
出力が簡単で精度の高いレジンを使用して試適義歯を1色レジンで作成し、
データ自体にエラーがないことを確認しておくことでトラブルの原因が特定できます。
最後に、よく悩まされるのが2色のレジンの接着のずれです。
歯肉・歯冠をズレなく接着するために
接着作業をズレないようにするためには、
・そもそも接着作業をしない=モノリシックで義歯を出力する
・接着用のガイドを使用する=なるべくズレないようにし口腔内で調整する
・接着するが咬合面は全てモノリシックで出力する
このどれかを考えます。
モノリシックの場合、よく行われるのは歯冠色レジンで義歯全体を作成し
歯肉色のステイン材を塗る、というものです。
アナログの苦手な 3D歯科 が頑張って色付けするとこうなります。
個人的には「カニカマ」と呼んで大事に手元に置いています
(患者さんにはとてもセットできませんでした・・・)
そのため、個人的にはモノリシックで出力する場合、発想を転換して
歯肉色レジンで咬合面を含めた全体を出力して
表面をベニア上に歯冠色レジンかCRで色つけする、ということを行っています。
これであれば絶対にバイトがずれない上、絵心がなくてもいつものCR修復のように
充填でもそれなりの見た目を作ることができます。
もちろん長期使用では歯肉色レジンでずっと噛むのは適切ではありません。
また、接着用のガイドを作成をする場合は、Medit Model Builderで簡易咬合器のような
支柱を作成した無歯顎模型をプリントし、その上で上下の人工歯部分を噛ませながら接着するということを行います。
↓こういう機構のことです
あるいは義歯自体の人工歯、義歯床部分両方に↑のような機構をつけてプリントし
位置合わせしながら接着するというのも合理的です。
最後に、接着するが咬合面は全てモノリシックで出力する方法を紹介します。
下のように、小臼歯から大臼歯部というフルデンチャーで一番ずれたくない部分を
モノリシックで出力し、ベニア状に審美部位を歯冠色レジンで出力して接着します。
個人的には一番アナログ操作が少ないので楽に、精度のいい義歯が得られる方法と考えています。
もちろんこの方法も、長期使用には向きません。
もし長期使用義歯でこのように2色プリントするがバイトがずれないようにしたい
というケースでは、頬側の歯肉部分のみを歯肉色、咬合面を含む全体は歯冠用レジンとすれば
目的のものを作成できます。
このような手法の詳細はまた時間を見つけてnoteの方にもアップロードできるようにしてみます。
まとめ
3Dプリントはクラウンやインレー、ベニアへの応用はすでに問題ないと思います。
義歯もどんどん活用が進んでいますが、今回紹介したような方法を用いることで
チェアサイドでバイトがずれて大汗をかくということが回避できます。
今回の内容は以上になります。
長い文章でしたが最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを
少しずつ更新していきます。
↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。
よろしければ見ていただけると嬉しいです。
先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。
今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。