3D歯科 のデジタル歯医者入門

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口腔内スキャナーでバイトを上げた咬合再得を行う方法、最遠心の補綴バイトを取りやすくする方法①

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、もうすぐ来る保険改正についてデジタルデンティストリーに関わる項目は

どのように変化しそうかを考えました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、口腔内スキャナーでバイトをとる際に

現状のバイトではなく、バイトを上げた状態でスキャンする時や

遊離端の補綴やブリッジを行う際のバイトスキャンのポイントをお話しします。

 

よろしくお願いします。

 

口腔内スキャナーでのバイト採得

口腔内スキャナーでバイトを取る際に、アナログと違う点としては

  1. バイト材を介在しないので、患者さんが材料を噛んだ感じがない
  2. オープンバイト状態でもバイトスキャンが可能
  3. 材料の硬化を待つ必要がなく、2〜3秒でスキャンが可能

この辺りが差としてあると思います。

それぞれ確認してみましょう。

 

1.バイト材を介在しないので、患者さんが材料を噛んだ感じがない

これは良いことでもありますが、弱点にもなります。

バイト材を噛み込ませる際に、患者さんがその「硬さ」や「存在感」を感じると

片側に顎位がズレてしまうようなトラブルを経験することがあるかもしれません。

 

そのため患者さんが習慣性で噛んでいる位置を再現するとしたら、

アナログよりも偏位が少なくなるかもしれません。

 

ただし、咬合床を使用せず少数歯残存の症例をバイトスキャンしてみると

患者さんが力をこめて噛んでしまうと、意図したところよりもバイトが下がったり

顎位が偏位してしまう恐れがあります。

 

2.オープンバイト状態でもバイトスキャンが可能

例えばCRバイトを採得するとき、あるいはスリープスプリントを作成するときに

少し口が空いた状態で咬合採得したいときがあるかと思います。

その際に口腔内スキャナーでは上下がマッチングさえできれば

バイトスキャンを正確に採得することができます。

 

 

3.材料の硬化を待つ必要がなく、2〜3秒でスキャンが可能

お使いのシリコンバイトは口腔内に入れてから硬化までどのくらい時間がかかるでしょうか。

1分半くらいが多いと思いますが、意外と1分以上咬合したまま待つ、というのは難しいことです。

 

例えば顎関節症、咬合支持域が減少している人、咬合痛がある方では

咬合状態を保つのは困難になります。

 

ですがスキャンの場合は数秒で、しかも非接触でバイトが取れるので

そうした症例でも咬合採得途中の顎位のずれが最小限のままでスキャンすることができます。

 

バイトを上げた咬合採得を行う方法

これはCRバイトならリーフゲージ、アンテリアジグを使用することもあると思いますが

例えば総義歯においてバイトを上げるとすると、臼歯部にワックスなどを噛ませることもあると思います。

 

ワックスにしてもレジンにしても、臼歯部に適度に軟化した材料を入れて

バイトが上がったまま記録をすることで義歯の咬合再構成を行うことができます。

 

このようなバイトアップを模型上で復位しようとすると

咬合器マウントが安定しにくいこともあるかと思いますが、

口腔内スキャンであればバイトの記録はズレなく行うことが可能です。

このときバイト材を臼歯部頬側に溢れさせないように注意しましょう。

頬側のバイトスキャンが取りやすいように留意しておきましょう。

 

最遠心の補綴のバイトを取りやすくする方法

最遠心の歯を形成して、それからバイトを取ろうとしたときに

咬合位置がずれたり、接触点がなくなったぶんバイトが下がって記録されることがあります。

 

このようなことが起きないように、臼歯の補綴では下準備をしておきます。

アナログであればクロスマウントなどで顎位を維持しながらバイトレコードを取ります。

 

口腔内スキャンであれば、以下の2点がおすすめです。

  1. 治療前クラウンデータを記録、治療前バイトで補綴製作
  2. FGPテクニックのように支台歯上に材料を噛ませてバイト採得

 

1.治療前クラウンデータを記録、治療前バイトで補綴製作

正直なところ、これが口腔内スキャナーを使用する一番のメリットと思っています。

例えば上顎6、7の2本のFMCを除去することを考えると、

アナログで考えた場合には6を除去して形成し、その部位だけシリコンバイトを取り

次に7を除去して形成して、6のシリコンバイトを入れたまま7のバイト採得、

・・・と行うのが確実でしょうか。

 

口腔内スキャナーで行うと、治療前データとしてFMC除去前のデータを

上下しっかりバイトまでスキャンします。

その後にFMC除去を行い形成した後に、上顎データに重ねて最終印象を取ります。

ほぼ全てのスキャナーでこのマッチングは自動で行われ、

バイトはFMC除去前のデータにおいてマウントされます。

 

患者さんがFMC脱離や大きなカリエスで咬合できていない場合でも、

もしすでに患者さんが来院しておりスキャンを取ってさえいれば

スキャナーによっては、既存データに重ねてスキャンを行うことができます。

 

2.FGPテクニックのように支台歯上に材料を噛ませてバイト採得

さて、全く参考データもないときやカリエスや脱離で最遠心の咬合が失われている時、

アナログであればおそらく咬合床を作成して次回にバイト採得するか

諦めておおよその咬合採得を行い、セット物の咬合調整を頑張るのかもしれません。

 

ですがアナログ、デジタル両方で活用できる方法として

FGPテクニックのように支台歯上に材料を噛ませてなるべくずれのない咬合採得を行うことも考えられます。

 

本当はワックスを用いるのですが、例えば軟化パラフィンやユーティリティワックスなどでは

咬合高径を支えきれずバイトが下がる恐れがあります。

3D歯科 のおすすめとしては、光照射で硬化するペーストタイプの仮封材を用いた

FGP風テクニックを活用することです。

 

こちらのレジンをちょっと多めに丸めて支台歯におき、軽くタッピングや

側方運動を行わせて擬似咬合面形態を作ります。

 

この材料は光照射で硬化するので、患者さんが間違えて噛んだ場合は丸め直してやり直せますし、

噛み込みすぎない、ココ!というポイントで光照射してバイトの低下を防止できます。

 

個人的には義歯のバイトアップやマージン付近の歯肉圧排にも使用する扱いやすいアイテムです。

 

これを最遠心の支台歯にのせてクラウンで噛んだのを再現したいちで硬化させ使用するだけでなく、

FGPテクニックのように機能運動をさせた圧痕をつけて、その表面をスキャンすることで

顎運動に調和したクラウン形態のおおよその外形をつかむことができます。

 

このデータを参照しながらクラウンのデザインを行うと、硬化後も多少の弾性が残るので

仮封材よりも咬合面が高くしないような形態でCADを仕上げると咬合調整の少ない形態にできます。

 

まとめ

今回は患者さんも快適で術者も簡単な、バイトを変更したスキャンの採得方法についてお話ししました。

 

次回はスプリントデザインを行い、3Dプリントしバイトアップ診断や顎関節・審美確認用の

診断用スプリントを作成してバイトスキャンを行う方法について紹介します。

 

そうそう、中医協の発表を見ていると、ようやくデジタルを後押しする保険改正になっていますね。

 

いわゆる(PEEKでなく)CAD /CAM冠は適応範囲が7番まで広がります

片側ごとで考えて、6か7の咬合接触がある場合は他の大臼歯もCAD /CAM冠が使えるほか

対合が義歯、欠損の場合も反対側の大臼歯咬合があれば7番もCAD /CAM冠がOKになります!

これはありがたい・・・

 

PEEKやCAD /CAM冠の連結は見送られましたが、

後はPEEKブリッジが保険が通れば、事実上すべての保険クラウンが

口腔内スキャナーで製作できる未来が近づいてきます。

 

3D歯科 はいわゆる自費率は高くないので、保険でどんどん良い治療が

口腔内スキャンでより患者さんが快適に受けられるようになるのはありがたい限りです。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。