3D歯科 のデジタル歯医者入門

最小限の費用と努力で最大限の恩恵を受ける歯科デジタル活用術

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最終補綴・歯冠補綴の3Dプリントについて

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回はMedit Ortho Simulationを用いてワイヤー矯正治療を効率化する方法を紹介しました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、3Dプリントで作成する最終修復物・歯冠補綴について紹介します。

よろしくお願いします。

 

3Dプリントで何を作成するか

先生方は3Dプリントで何を製作されているでしょうか。

 

歯列模型

3Dプリンターを入手したら、まず作成するのは歯列模型と思います。

石膏模型歯科使用していない先生は、ぜひ低価格なものでも

3Dプリンターを購入することをお勧めします。

 

精度が良くない、変形する、表面が荒い・・・などのイメージを持たれている先生は、

ホビー用の最新機種を研究用として購入してみましょう。

50μm以下の精度で出力された模型は、実用上全く問題ありません。

さらに高精度で出力できるモデルであれば、積層痕(面を重ねて積み上げた痕跡)も

肉眼で全く見えないレベルになります。

 

さらにワックスアップなどを行い、アナログ模型では不可能だった活用方法も出てきます。

 

3Dプリントで模型を製作するのが院内で当たり前になってくると、

次に使用するのはTEKなどでしょうか。

 

TEK

3DプリントでのTEKはMedit Temporariesが登場してから

非常に簡単に、短時間で製作できるようになったので取り組みやすいです。

 

TEKはユニファストですぐ作れるから不要!というアナログ作業の得意な先生も

いらっしゃると思いますが、例えばフルアーチのTEKを作成するのに

どのくらい時間がかかるでしょうか。

また、治癒期間にTEKが割れて、患者さんが捨ててしまった・・・となると地獄です。

 

3D歯科 は日常診療のTEKはプリント50%、

テンプクイック(ガンタイプの流し込み)が50%です。

ユニファストでTEK作成はここ3年ほど1症例もありません。

3DプリントTEKは予備を作成してもコスト的に負担になりませんし、

テンプクイックは作成用のシリコンコアを保管しておけば即日対応できます。

 

ガイド

さらに精密に3Dプリント、設計をできるようになれば

インプラント用ガイドも作成できます。

BlueSkyPlanのようなガイド製作専用のソフトも多数あるので

診断からプリントまで簡単に進められます。

ただし造形太りなどがあると、TEK等よりもトラブルを起こすことがあります。

 

デンチャー

昨今よく目にするようになったフルデンチャーの3Dプリントも、

中間歯欠損であればパーシャルでも、プリントデンチャーは臨床上とても有用です。

咬座印象のトレーとしても、最終補綴としても、複製やリベースがCAD上で簡単にでき

来院回数を減らしたい義歯治療との相性がいいです。

(大きな声では言えませんが歯冠補綴ほどの精度は求められないかも知れませんし・・・)

 

クラウン

CADを利用したクラウンといえばジルコニアが定番です。

低コストで材料としての強度も機能も申し分ないです。

ですがミリングは生産効率がそこまで高くないのと、何よりも機器への投資が高額です。

もし3Dプリンターで精度の高い、生体内安定性の高い歯冠補綴が作成できれば・・・

と期待しておりましたが、最近どんどん良い材料が出てきてくれています。

 

最終補綴に使用するレジン

口腔内でセットするために、もちろんですが整体適合性の材料を選ぶ必要があります。

クラウン材料として有名なのは、Formlabs Permanent Crown Resinではないでしょうか。

 

その名の通り最終補綴として使用を想定しており、メーカー公表値では約120MPaの

強度を持っているとされています。

初めに存在を知った時はこれでプリントでクラウン製作が完結できる!と喜びましたが

Formlabsのプリンターや385nm波長のプリンターを持っておらず、試せませんでした、

 

SprintRayのCeramic Crownという名前のハイブリット系レジンも

使用している先生を目にすることがあります。

これも150MPaの強度で、他のハイブリットレジンよりも強度があるとされています。

 

さらに強度のある、EMAXと同等の素材はないだろうかと探していたところ、

SenertekP-Crownに辿り着きました。

これこそまさに求めていたスペック!というべき、410MPaの強度です。

他と比較してスペックが大幅に優れており、にわかに信じがたいところではありますが

テスト使用では確かに強度もあり、精度の高いクラウンも作成できています。

↑ちょうど今日、出力したクラウンです。

プリント後すぐなので白い膜のような層が露出しています。

これをサンドブラストし研磨すると艶のあるクラウンを製作できます。

 

しばらくはこのレジンを使用していこうと研究中ですが、

松風の子会社?の松風バイオフィックスからもクラウン用のレジンが販売されていました。

先ほどまでの紹介したクラウンがどれも海外製なので自己責任で先生方の判断で

使用する形になりますが、こちらは国内認可が取れており使用しやすいです。

セラマージュの名前ですので、多分150MPaくらい強度もあるのではないかな、

と勝手に予想しております。

まだ臨床ではテストできていませんが、国産レジンがどんどん出てくると

国内での補綴製作がガラッと変化しそうで楽しみです!

 

なぜ3Dプリントで最終補綴を製作するか

さて、ジルコニアという優れた素材が既にあるのに

なぜプリントか、というと生産性の高さと経済性の高さ、また薄い造形が可能という点です。

 

生産性を言うと、ミリングは1台の機器では同時に1本の製作です。

プリントでは、うまく行えば20本、30本を精度を落とさずに同時出力が可能です。

これは歯科医師というよりも技工所にとって福音になりそうです。

 

経済性としては、ジルコニアも1本のコストは十分に安価です。

(ディスク削り出しの場合。調べてみましょう!)

ですがプリントでは、そのさらに5分の1程度のコストとなります。

しかもそこそこの価格のプリンターと後処理の機器を揃えれば

大型のミリングマシンや設置環境への投資を悩む必要はありません。

 

薄い造形もプリントは得意です。

ミリングではバーの削り出しに伴う振動などで薄い部分が欠けてしまい

時間をかけてやり直し・・・そのため造形物の厚みを確保する必要がありますが

プリントでは向こうが完全に透けてしまうような薄さも出力できます。

表面性状を変更したい場合のベニアや、インレーのコンタクトなど

強度が担保されるならメリットは大きいと思います。

 

まとめ

今回は進歩の著しい3Dプリントでのクラウン制作についてお話ししました。

MeditのClinicCAD、B4Dクラウンモジュール、dentbirdなど

クラウン製作が簡便化しているので、患者さんの予約の合間に

ドクターがクラウンのCADを行うことも現実的に可能になってきました。

 

さらにプリントクラウンは完全焼結されたブロックやディスクのクラウンよりも

歯質への接着が優れるという先生もいらっしゃるようです。

 

まだまだ手探りでの状態ではありますが、

簡単に、低コストで、患者さんに喜ばれるクラウン製作が一般的になるまで

あともう少しになっていると思います。

 

もし口腔内スキャナーを持っているけど3Dプリンターはやったことのない先生は

低価格なものを導入して、どのくらい臨床にメリットがあるかを体験してみると

石膏やユニファストには戻れなくなると思います!

 

 

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。