こんにちは。
3D歯科 です。
前回はコピーデンチャー、3Dプリントデンチャー製作用の「義歯スキャン」について
口腔内スキャナーを用いて、旧義歯を(口腔外で)スキャンする方法についてお話ししました。
digitaldentistry.hatenablog.com
今回は義歯を作成するための最終印象を口腔内スキャンで取得することについてお話しします。
よろしくお願いします。
アナログ印象は加圧印象
アナログでの義歯印象はさまざまなテクニックや考え方があることは皆さんも知るところだと思います。
加圧印象、選択的加圧、無圧印象・・・
ですが、ちょっと乱暴な言い方をすれば印象材には重量がありますし
少なからずアナログでの印象は(無圧印象であっても)加圧印象になるかもしれません。
また、コピーデンチャーを利用してバイトと最終粘膜印象を取る方法が一般化すると
最終印象に咬合圧印象を用いることも多いと思います。
すなわちアナログでの印象は、粘膜を機能時のように加圧して圧縮した状態で
骨面上の粘膜の形態を採得する、というものと言えるかと思います。
(アナログ操作は 3D歯科 はあまり自信がありません、もっと詳しく書かれた成書を参照ください。私も勉強中なので認識に間違いもあるかもしれません)
デジタルスキャンは無圧印象
対してデジタル印象は、粘膜上をカメラは通りますが粘膜には触れません。
完全な無圧印象と言えるかと思います。
加圧がいい、無圧がいい、ということは置いておき、デジタルスキャンは無圧印象です。
ここに困難なことがあるのが頬粘膜・口唇の圧排です。
圧排する際にむやみにテンションをかけてしまうと全体は無圧なのに
ボーダー付近は不自然な加圧?牽引されて変形した形になってしまいます。
デジタルスキャンを最終印象にした際の結果について
口腔内をスキャナーでうまくスキャンできたとして、結果はどうでしょうか。
写真が分かりにくいかもしれませんが、コピーデンチャーで口腔内のバイト採得をした画像です。
このコピーデンチャー、アナログ印象ではなくデジタルスキャンで粘膜面を作成しています。
もちろんレジンでできており硬いのですが、調整は全くなし。
3D歯科 はアナログとの学術的な精度比較はできませんが、(大学の方、お願いします!)
個人的なチェアサイドでの印象は、十分に使用できるだけではなく
アナログ印象よりも内面調整は遥かに少ないように感じています。
デジタルスキャンを最終印象にする際の問題点
それでは全ての症例をデジタルスキャンのみで行えば良いのでしょうか。
ただ、ここでも気をつけるべき問題点があります。
それぞれ確認してみます。
- スキャン自体が少し難しい(慣れればできる)
- ボーダー部分、辺縁形態の情報は取得できない
- 舌の動きが悪い症例の舌下部、著しいアンダーカットは採得不可能
- 技工士さんが対応できない
1.スキャンですが、粘膜面を広くスキャンするわけですから
正しい手順で行わないとスキャナーが迷子になってしまいうまく撮れません。
基本的には正中部分を基準点として、顎堤頂を左右順に繋ぐようにスキャンします。
それからボーダー付近をとり、最後に舌側・口蓋部分をつなぐようにスキャンします。
注意としては、スタッフに協力してもらうなどして厳密に頬粘膜の圧排を行うことです。
2.ボーダー付近のスキャン、と言いましたが
印象材でデンチャースペースを記録するように、立体的に最終義歯形態をイメージしつつ
印象採得をすることはできません。
代わりにカラーでスキャンできますので付着歯肉と遊離歯肉の境目はスキャン後に
確認しつつCAD操作でボーダーを作ることが可能です。
3.これについては物理的にスキャンできない症例はあります。
印象材でもそうかもしれませんが、患者さんの舌や顎の動きに制約がある場合、
そもそもスキャンチップで口腔内のアンダーカット部位や隠されている部分は撮影できません。
口腔内の視診により、スキャンでは無理があると判断したらシリンジ併用のアナログ印象に切り替えた方が賢明です(それでも印象は困難です)
4.これが実は一番の問題かもしれません。
デジタルスキャンとバイトスキャンで記録を行った場合、模型はありませんので
そもそも通法で義歯完成はできません。プリントかミリングで完成させることになります。
あるいは自院でプリントで製作・完成させることが必要になってきます。
せっかく技工士さんにとって生産性が大幅に改善する総義歯のデジタルでの製作。
まだまだ取り組む方が少ないことが問題かもしれません。
まとめ
今回は口腔内スキャンで粘膜最終印象を取ることについてのお話をしました。
3D歯科 個人としてはアルジネート印象よりもほとんどの場合で精度が高く感じています。
最終印象にスキャンを使えば内面調整は(ほぼ)ありませんし、
大きな声では言えませんが・・・スキャンデータで3Dプリント模型を製作、
プリント模型をアナログ印象して石膏を流して技工士さんに通法で製作してもらうと
口腔内にアナログ印象材を入れたよりも内面調整が少なく感じています。
あとはプリントデンチャーがどんどん一般化して、レジン材料や後処理・二次重合を
安定して安全に簡単に安価に・・・できる手法が確立してくることを期待しています。
ちなみに、数年前より保険収載の議論にはプリントデンチャーが上がっています。
↓ただし、大問題?なのはチェアサイドは通法での製作を基本としているところです。
ですが薬事承認の記載があるのはプリント材料(インク)のみで、
ソフトについてはクラウドベースのデザインソフトとされています。
この内容のままならDenTruほか、簡易のクラウドソフトも問題なく使用してOKと思われます。
エグゾキャドじゃないとダメ、などにならないように保険導入が進んでいき、
チェアサイドでも患者さんにメリットのある方法が保険収載されるとありがたいです。
今回の内容は以上になります。
長い文章でしたが最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
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今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。