こんにちは。
3D歯科 です。
前回はPEEKクラウン保険収載について考えました。
digitaldentistry.hatenablog.com
・・・が、素材としてはまだ突っ込みどころが多いマテリアルのようで、
接着がかなり難しい、ミリングで変形など起こすかも、マージン付近のトラブル出るかも
とのことです。患者さんの希望で数症例行ってみますが、もし重大なトラブルなどありそうなら共有させていただきます。
今回は、デジタルデンチャーを作成する第一歩、既存の義歯のデータ化についてお話しします。
よろしくお願いします。
既存の義歯のデータ化方法いろいろ
既存の義歯がある程度いいものであった場合、
もしくは改造することで咬合床付き個人トレーとして使用できそうであった場合
義歯をデータ化することで3Dプリントできるようにし、診療効率を上げることが可能になります。
ですがこのデータ化をどうすればいいのか、どの方法が高精度なのかというのが
悩ましいところになりそうです。
今現状での既存の義歯データ化方法は、以下のようなものが考えられます。
- 技工用スキャナーでスキャン
- 口腔内スキャナーでスキャン
- 義歯をCT撮影してスキャン
それぞれメリット・デメリットがありますので簡単にご説明します。
1.技工用スキャナーでの義歯スキャン
まずは技工用スキャナーです。
精度:機種によるが一番良い
スキャン速度:スキャン自体は早い
スキャンの簡単さ:スキャン自体は簡単
スキャンの問題点:スキャンパウダーが必須
コスト:約100万円〜
簡単にまとめるとこのような形です。
3D歯科 は院内でのデモを受けただけではありますが、
技工用スキャナーで義歯スキャンを経験しました。
技工用スキャナーのメリットとして、一度のスキャン範囲が広いということが挙げられます。
スキャンは簡単にいうと何枚もの写真を撮ってそれをつなげて立体構造を作る(機種による)
方法となりますので、繋ぎ合わせの回数が少なくなることで
精度が向上する可能性が高くなります。
スキャン自体はスキャンエリアに安置してボタンを押すだけ、簡単です。
ただし、全ての技工用スキャンは義歯を撮影する際にスキャンパウダーが必須とのことです。
また、EDGEという機種を試したのですが、
スキャン自体はパテで固定した義歯をスキャンエリアにおくだけですが
ソフト自体が技工士さんの触る昔ながらのソフトのインターフェース、という感じでした。
Meditに慣れたドクター、またスタッフが操作することを考えると
個人的にはちょっと厳しく、技工士さんがいる医院で導入すべきものかなと思いました。
2.口腔内スキャナーでスキャン
口腔内スキャナーは、もちろん口腔外でもスキャナーとして利用できます。
TEKのカウンターを記録したり、顔貌スキャンも頑張れば可能です。
精度:機種によるが十分に良い
スキャン速度:練習すれば機種によるが1分半〜4分程度
スキャンの簡単さ:コツが要る。口腔内スキャンと同様に練習必要
スキャンの問題点:スキャンパウダー推奨のスキャナーも
コスト:約200万円〜
さて、精度ではありますが 3D歯科 の個人的な見解としては
機種により多少の差はありますがどのスキャナーも義歯製作には十分な性能と思います。
機種の検証はPrimeScan、Medit i700、ショールームのA-oralscan3で行いました。
Prime Scanについてですが、発売当初は義歯のように光って透明なものはスキャンできませんでした。
そのためポリグリップパウダーをまぶしてスキャンパウダー代わりに使用することを
個人的に推奨していましたが、今回検証してみるとアップデートされたソフトウェアにより
パウダーなしでスキャンできるようになっていました。
現状ではパウダーありよりも無しの方が早い上に結果もいいです。
すみませんがポリグリップパウダーをわざわざかけていた先生、パウダーなしでお試しください。
スキャン時間は3〜4分。口腔内スキャンと違い時間がかかってしまいました。
Medit i700は、日常診療でメインで使用しており操作に慣れています。
ですがパウダーなしでは義歯のマッチング中に大きくずれてしまうことがあり、
そのままでは義歯スキャンが困難です。
ですがここにポリグリップパウダーをまぶしてあげると、非常にスムーズに
スキャンできるようになります。パウダー使用を推奨します。
スキャン時間は2分半ほど。いつもチェアサイドで義歯スキャンしていますが、
忙しい診療室でもそこまでストレスになりません。
A-oralscan3は 3D歯科 は所有しておりません。そのため操作もあまり慣れていませんが
模型スキャンの感じとしてはMeditのような撮影範囲と速度に感じました。(PCに依存かも)
ですが、義歯スキャンになると驚きの結果が出ました。
パウダー不要で1分半ほどでスキャンができ、後縁や切縁なども綺麗にスキャンできました。
エラーもほぼなく3機種の中で最も義歯スキャンが高速だったので価格を考えると驚きました。
価格を考えると技工用スキャナーより高額な投資になりますが、
義歯スキャンをどんどん行っていく!という医院などであれば
義歯スキャンもできて、口腔内のスキャンもできる、と考えると
技工用スキャナーとの差額もむしろ安く考えられるかもしれません。
3.義歯をCT撮影してスキャン
さて、義歯をCTスキャンでデータ化するというのは
この本などで目にしていましたが
インプラント診断のCTスキャンなどは、1mmほどの誤差が出ることがある・・・
と聞いていたこともあり、勝手な思い込みで精度が問題になるかもと考えていました。
ですが研究されている先生のデータのヒートマップをみるとほとんどずれもなく
クラウンでは問題かもしれませんが義歯であれば問題ないようでした。
まだ研究を始めたばかりであまり数をやっていないので感想程度ではありますが・・・
精度:十分と思われる
スキャン速度:CT撮影と同じで高速
スキャンの簡単さ:設置場所や管電圧?など設定すれば誰でも撮影できそう
スキャンの問題点:金属バーや金属床はアーティファクトで基本的に利用不可能
コスト:CTをお持ちの先生は0円
セッティングなどを揃えて仕舞えばオペレーターによるずれがないと思われるので
スタッフに任せる場合など口腔内スキャナーでは義歯スキャンが難しい、
スキャナーを使用する自信がないという場合にも非常にいいと思われます。
まとめ
今回はデジタルデンチャーの入り口、まずは既存義歯をデータ化する方法について
それぞれの手法のメリット・デメリットについて紹介しました。
義歯データを全ての患者さんから収集することができれば、
将来的な義歯紛失や破損に備えられるだけではなく、
データからデジタルデンチャーを作成する際のヒントを学べるかもしれません。
今回の内容は以上になります。
長い文章でしたが最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを
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今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。