3D歯科 のデジタル歯医者入門

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歯科用プリンターのシステム化・自動化について②プリント自動化システムを検討する

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回は、3Dプリンターを院内で導入した時の各種工程を

誰が行うかという問題についてお話ししました。

全て先生だけで行うと大変で、前回は院内のスタッフや技工士さんに

一部工程をお願いした方が良さそうということをお伝えしました。

digitaldentistry.hatenablog.com

 

今回は、そうはいっても人手が足りていない、技工士さんは募集してもきてくれない、

その場合に、(半)自動化の3Dプリントシステムを導入することを考えてみます。

よろしくお願いします。

 

院内製作を自動化したい

院内では様々な技工物を製作すると思います。

マウスピースやTEK、咬合床など。

 

リングマシンをお持ちの方はジルコニアやセレックなどの最終補綴クラウン。

3Dプリンターを使用すればサージカルガイドやコピーデンチャー、

レジンによってはハイブリッドセラミックのベニアやクラウンなど。

 

これら全てを自動化できれば夢のようですが、現実にはなかなかそうはいきません。

 

3D歯科 はミリングマシンは所有していませんが)ミリングの場合は

補綴形態を考えつつネスティングを行い、ミリングしたブロックやディスクから切り離し

研磨しシンタリング・グレージングなど。

 

プリントでは前回にお話しした、スライス設定やサポート付け、プリント後には

サポート切り離し、アルコール洗浄、研磨、最終重合・・・

たくさんの工程が必要になります。

 

そのため、ただ機器を購入するだけではなく、それを誰が使うか、いつ作業するか

これをきちんと考慮の上で(先生が操作するなら先生の時給も考慮の上で)

設備導入がコストとメリットに見合うのか考えなければいけません。

 

具体的にいくと、自動化システムを導入して時短できるのはこの辺りです。

・スライスソフトの設定、出力物の配置

・3Dプリント後の出力物の切り離し

・出力物のアルコール洗浄

・出力物の二次重合

それぞれ見てみましょう。

 

スライスソフトの設定、出力物の配置

3Dプリンターごと、プリント用レジンの種類ごとに、

プリントするための最適なパラメーターが存在します。

 

3DプリントができるようにするためSTLデータを編集するのをスライスと言います。

このスライスを行う専用ソフト(Chituboxなど)をスライスソフトと言いますが

ソフトにより、自動サポート機能や自動配置(どのように出力物を並べるか)

複数のレジンのパラメーターが登録されているものもあります。

 

ですが歯科専用プリンターを購入しなければ、PhrozenやElegooプリンターには

基本的に歯科用レジンの設定は登録されていません。

 

海外で根強い人気を誇るPhrozen製のプリンターなどでは

マニアな先生がミニプレート(プラットフォームを小型化したもの、高速出力可能)や

バットウォーマーを販売しており、かなりの種類の歯科用レジンについて

Chituboxのパラメーターを探して公開してくれています。

monocure3d.com.au

3D歯科 も個人的にElegoo Mars3シリーズで国内で義歯を作る定番レジンの

DHプリントについてのパラメーターの参考値を公開しています。

note.com

 

まとめると、高額なプリンターでなくてもここは(半)自動化が行われます。

もちろん歯科用プリンターを導入したら専用スライスソフトで自動でできることも多いです。

 

3Dプリント後の出力物の切り離し

さてプリントできればプラットフォームから出力物を取り除きます。

これは金属スパチュラのようなものを滑り込ませて慎重に剥がします。

 

意外と面倒で出力物を壊してしまうリスクもあるこの作業ですが

石膏でいうトレーからアルジネートを剥がすようなものです。

 

できれば自動化したい作業ですが、このような機器は多くありません。

次回の更新の際に、国内で購入できる実際の機器を探してみます。

 

出力物のアルコール洗浄

プラットフォームから剥がしたら、次はアルコール洗浄です。

これはホビー用の3Dプリンターシステムでも専用の洗浄機が多く存在します。

 

こういったものでも洗浄はできますが、意外と歯ブラシとアルコール、超音波洗浄機のほうが綺麗に洗えたりします。

 

また、アルコールも使用のたび劣化していくので、ホビー用の洗浄力で行う場合は頻繁にアルコールを変えるなど工夫が必要です。

 

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こういったシステムでも基本はアルコールやIPAを洗濯機のように回転させて出力物を洗い流すと言うものです。

 

手作業と歯ブラシ、超音波洗浄機でも綺麗になると書きましたが、

やはりここは手間がかかるのと、毒性のあるレジン液とアルコールに曝露されることを思うと

専用機械があると便利です。

 

出力物の二次重合

洗浄が終われば、次は最終重合を行い、口腔内でも使用できるようにします。

未重合層があれば口腔内に入れた場合に毒性が残ります。

 

そのためレジンごとに最適な長時間の光照射で重合を行い、

またグリセリンに浸漬して酸素を遮断して最終重合を行うことが大切です。

 

先程のMERCURYのように洗浄機と最終重合の機器が一体になったものもあります。

 

昔ながらのレジン前装冠を作るための照射機も使用できますが

ハロゲンなどでは波長が合わなかったり

かなり長時間の露光が必要な場合もあります。

 

ただし最近の機器であれば重合器はターンテーブルが内蔵されており

基本的には機械任せで最終重合が行えます。

グリセリンにつける場合は筆などで細かい内面にグリセリンを塗ってから

ガラス容器などのグリセリンに浸漬して重合します。

 

重合終了後に取り出して、ようやく完了です。

 

まとめ

このような 3Dプリントの一連の流れですが、

ひとつひとつは簡単な作業でも、忙しい院内ですべて先生が行うのは

なかなか時間が厳しいかもしれません。

 

診療後の時間に重合失敗をしたプラットフォームを眺めたり、

サポートの切り離しで割れてしまったラミネートベニアを処理するのは

なかなか心に来ます。

 

そのため、スタッフや技工士さんの手を借りるか、

機械化できるところはシステム化して機器導入で対応を考えてもいいと思います。

 

次回は実際に 3D歯科 が縁あって導入した機器や、

それによりどの程度、楽ができるようになったか、

他の自動化できるシステムはどのようなものがあるか、ということをお話しします。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

note.com

↑こちらでも不定期に動画付きのデータを更新しています。

 

よろしければ見ていただけると嬉しいです。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。