3D歯科 のデジタル歯医者入門

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デジタルを活用した全顎補綴①(バイトスキャンが簡単で、難しい・・・)

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回までに、デジタルを活用したコピーデンチャーの利用方法をお伝えしました。

こちらにも、動画つきでMeshmixerでコピーデンチャーを編集し、

また印象精度を上げるための方法を紹介しました。

note.com

 

2022年3月6日夜まで無料公開しています!

長文を書きましたので、ぜひご興味あれば覗いてみてくださいね。

2022年3月末までは1000円、その後3000円で公開予定です。

 

 

今回から何回かに分けて、全顎補綴についてデジタルを活用した方法を紹介します。

まずは、印象、バイト採得に代わるスキャンの内容についてです。

よろしくお願いします。

 

大きな補綴になるほどスキャンのメリットが

3D歯科 は田舎で診療をしていることもあってか、

欠損を放置されたり、バイトが崩れたような全顎的な対応が必要な方を

よく拝見する機会があります。

 

昔であれば、シリコン印象材と各個トレーを用いて

10本を超えるような印象を行うのは、神経も遣いますし、

手技にそこまでの自信もなく、再印象を患者さんにお願いすることもしばしばでした。

 

患者負担も大きく、術者は時間と集中力を取られます。

その上、大きなブリッジなどで一部だけでも印象の不備があると

他の部分が問題なくとも、1からまた印象を取り直しになります。

 

正直言って、口腔内スキャンの快適さを知った今では、思い出すとゾッとします。

もちろん保険診療などでどうしてもアナログ印象を使うこともありますが

やはり口腔内スキャナーで行う印象の方が、大型補綴になればなるほど

フィットもよく、印象による変形の影響を抑えられていると感じます。

 

さて、口腔内スキャナーを導入前の先生にとっては、精度のことが気になると思います。

もしも先生が、外部で講習会を開けるほど非常に熟達された印象採得を行えるのであれば

正直言ってアナログのままでもいいかもしれません。

 

3D歯科 の圧排、シリコン印象、クロスマウント・・・という一連の操作は

褒められたような精度は得られて無いと思います。

正直なところ、苦手意識が強かったです。

 

ですが口腔内スキャンを導入してからは、いわゆるパッシブフィットを得られることが

症例として非常に多くなってきました。

これはデジタルに精通した技工士さんの協力もあってだとは思っています。

ですが自分で3DプリントしたTEKでも、大型の補綴においてしっかりとフィットが得られています。

 

その理由としては、

  1. 印象(スキャン)不良があってもその場で気づけるのでリカバーできる
  2. スキャン不良があっても、その部位だけ再スキャンでツギハギしても問題ない
  3. そもそも現在の最新の口腔内スキャナーはどれも精度が高い

ということがあると思います。

 

特にスキャン中に出血が一部だけ出てしまい、印象不良があっても

そこをくりぬき、再スキャンできることは大きな強みです。

(もちろん僅かに精度が下がる可能性があるようです)

また、大きなケースでは2、3回スキャンの予備をとっておき、

必要なところをCAD操作で繋いでいくようなことも可能です。

 

とにかく利点は多いですが、(BOPTなどの特殊な縁下形成でなければ)

欠点はほとんど見当たりません。

 

患者の過去の口腔内データを将来の補綴治療に利用できる

ついでスキャン後はCAD操作となりますが、

突発的に歯の破折があったときなどに、昔の石膏模型があれば参考になるように

CAD操作(デジタルでの補綴ワックスアップ)の際には過去のデータを利用できます。

 

石膏模型では、過去の歯牙形態からシリコン型を起こしてワックスアップに反映させることもできますが

どうしても手作業では、参考にする程度だと思います。

ですがデジタルの場合、本当に全く同一形態の再現が可能です。

ファセットやガイド部分も、治療前の状態に戻すことができます。

 

3D歯科 は1年につき200ケース以上のスキャンを行い、

ほぼ全症例を上下の全顎でのスキャン採得をしています。

これにより患者さんが将来、補綴が必要になったときに利用できるようにしており

患者さんにもそのことをアピールしています。

 

バイト採得は(手技は)とても簡単

上下のスキャンが終了したら、バイト採得です。

タッピングさせてバイトのずれを確認し、問題なければ数本の歯の頬側面をスキャン、

それだけで上下のスキャンがマッチングされ、スキャン操作は終了です。

 

また、バイト採得は必ずしも上下のスキャン後である必要はありません。

例えば片側のブリッジなどにおいては、元の補綴を除去した時点で、元の咬合が失われます。

そのためブリッジ除去前のうちに、安定したバイト情報をスキャンすることで

顎位の偏位や、顎骨のあおりなどがなく正確な咬合採得が行いやすくなります。

 

大きな補綴や、テックを外すと咬合が失われる症例などでは

アナログにおいてはクロスマウントを行なってテックの咬合を最終補綴に反映しようとします。

この際もデジタルの利点はあり、例えば上顎10本ほどのテックの症例とすると、

テックの入ってない部位でバイトスキャンをすれば、テックを外す前

患者さんの来院したすぐのいつもの咬合を記録することができます。

 

もっと言うと、FMCが入っていて咬合が問題ない場合、

RCTを開始する前にバイトとFMCの形態をスキャンしておいて、

RCF後の築造、形成後のスキャンと重ねることで、正しいバイトを得られます。

これらはアナログでは出来ない、デジタルならではの利点です。

 

バイトスキャンは突き詰めると難しい

これはアナログにしてもデジタルにしても、

歯科治療において咬合採得というものは本当に難しいです。

CRとCOのズレ、顎関節症、さまざまな要因で咬合が難しいのは先生方のよくご存知のところです。

 

ですがデジタル特有?の問題点として、

「技工士さんは、ドクターの採得したバイトを変更できない」ということです。

 

もちろんドクターの細かいミスをデジタル咬合器などを用いながら

技工サイドで補正していくことは可能ではあるのですが、

技工士さんのデジタルの勉強会でも対処方法が話し合われるなど、

アナログのように直感的には直せないようです。

 

もう少し言うと、アナログ技工では、咬合採得は往々にして

技工士さんのマウントにより補正されている

ケースが多いと言えます。

 

3D歯科 自身も、マウントしていただく際にかなり助けられていることが多いと思っていますが

技工士さんとお話しすると、バイト材を介在してマウントする際、

模型を手で合わせて明らかに安定しない部位のバイト採得がされていると

ドクターへの連絡の有無はケースによるでしょうが、マウント時点で補正

することも多いのだそうです。

 

また、アナログではバイト材を介在するので患者さん自身も

「噛んでいる」感じを得られやすいのですが、

デジタルのスキャンではタッピング後にそのまま噛み込ませるため

思ったより水平的に偏位したり、しっかり噛み込めていないことも多いようです。

 

そのため左右奥にワックスかシリコンを入れて、患者自身に噛んだ感覚を持たせた上で

ずれがないかを確認し、前歯部でバイト採得するなどの工夫も効果的かと思います。

 

3D歯科 自身もスキャンによるバイト採得は研究しながら行なっていて

フィット自体は良くてもバイトがずれている症例も経験します。

今のところの対策としては

  1. 患者来院後すぐにバイト採得をすぐ行う
  2. 咬合紙を噛ませてからスキャンする
  3. いくつもバイト採得を行い後で評価する

と言うことを行なっています。

特に咬合紙はICPと機能運動時を色を変えてインキしてからスキャンする癖をつけておくと

咬合紙の痕とバイトスキャンでの咬合接触点を照らし合わせてずれがないかを確認でき

また、ワックスアップでの機能運動での顎の動き方を確認することができます。

 

まとめ

全顎補綴において、またもちろん単冠補綴においても、

バイトのずれは歯科治療において大問題になります。

口腔内スキャンの利点を生かして、なんとか確実なバイトを取りたいものです。

 

その上で最終補綴のバイトが著しく狂っていた

それはドクター自身の手技の問題がほぼ100%

(技工士さんのマウントのミスはあり得ないため)

と言うことを肝に銘じて、診療にあたるべきと思います。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。