3D歯科 のデジタル歯医者入門

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デジタルを活用したコピーデンチャーテクニック③(無料ソフトMeshmixerで行うコピーデンチャー作成 実践編)

こんにちは。

3D歯科 です。

 

前回までに、コピーデンチャーのスキャン、3Dプリント方法をお伝えしました。

手元には患者さんの旧義歯と全く同形態のコピーデンチャーができていると思います。

 

アナログではどうしてもレジン重合の変形がおきますが、

デジタルでのスキャンと3Dプリントにより、歪みのないコピーが得られます。

そのためチェアサイドで無駄な調整時間が不要になります。

 

さて、今回はチェアサイドでの利用方法をお伝えします。

よろしくお願いいたします。

 

noteではコピーデンチャーの作成の操作動画と、精度を上げるためのポイントも

記載しています。よろしければこちらもご覧ください。

note.com

 

 

コピーデンチャーの試適

旧義歯がもししっかりと調整されていれば、調整は不要です。

きちんとプリントできていれば、咬合も含めて全く同じです。

粘膜面へのあたりもないはずです。

 

ですが、義歯を新製するくらいですから、何かしら旧義歯に問題があるはずです。

フィットが悪い、吸着しない、咬合が良くない、など。

旧義歯をスキャンする前にしっかり修正してからコピーできればいいですが

チェアタイムや患者さんの希望によりそう言ってられないこともあるでしょう。

 

コピーデンチャーを利用する目的は、咬合付きの各個トレーです。

その場合、まずは義歯を安定させる必要があります。

 

先生方も、カタつきのある咬合床を使ったばかりに

咬合採得が大幅にズレてしまった経験があるのではないでしょうか。

3D歯科 は恥ずかしながら何度も経験があります。

患者さんは噛めない、カタつく咬合床では

なんとか外れずに噛もうとして、アゴを前に出して噛んでしまいがちです。

 

結果、完成した義歯が無事に吸着・安定した場合には

著しいアングル2級の咬合のように顎位が下がった状態になってしまいます。

 

これを避けるために、咬合床はカタつかず安定して患者さんが咬合しやすいものを

作ってから行う必要があります。

部分床義歯ではクラスプ付きの咬合床を作るなどです。

 

フルデンチャーでは、旧義歯で普段食事をとっているので、

旧義歯のコピーで咬合採得するのが好ましいことになります。

旧義歯が安定せずカタつく場合は、安定させてから咬座印象をとる

ことが重要になります。

 

これはリベースを行なって安定させることもできるのですが、

咬合採得のチェアタイムが増えてしまいます。

そのため、オススメするのは、ソフトライナーで外形印象を取る方法です。

 

咬座印象について

咬座印象のメリットはたくさんあります。

義歯が実際に機能する状態の口元を再現できること

閉口印象により口唇の自然な状態での義歯外形を作れる

ことなどです。

 

その際に昔からよく使用されていたのがソフトライナーです。

ソフトライナーはアルジネートと比較すると離水が少なく

操作時間も長いので扱いやすいです。

また、機能印象として患者さんに使用してもらい、

その形を印象面とする方法にも使用します。

 

チェアサイドでは、コピーデンチャーを試適して吸着がなかった場合

ソフトライナーをやや硬めに練り、不足する外形を付与してください。

 

上顎では義歯後縁のポストダム付近と、頬側辺縁のボーダー付近。

下顎では舌側、特に顎舌骨筋線を超えるようにすることと舌下小丘の密閉。

ここをポイントに旧義歯コピーの外形を硬めのソフトライナーで延長してください。

 

操作時間にゆとりがあるので、咬合させてある程度コシが出たところで

指に水をつけて、粘膜に押し付けて賦形します。

 

コピーデンチャーはレジンですので、コピーの上にソフトライナーは

接着剤などを塗る必要もありません。

また吸着が出なければ繰り返すこともできます。

多すぎないようにコシが出るまでの間にしっかり咬合させ、

口元に違和感が出なくなるまで機能運動をさせます。

 

注意点として、咬合関係に大きな狂いがあると、

適切に噛めないため、ソフトライナーである程度吸着してから

あるいはポリグリップパウダーなどで安定したら咬合調整を済ませるなど

対応しておく必要があります。

まずはコピーを作る前の旧義歯で、できる限り咬合調整は済ませておきましょう。

 

最終印象について

ソフトライナーで義歯外形ができたところで、

内面にシリコン印象材を流します。

ソフトライナーを外形印象、シリコン印象材を精密印象とするならば

シリコン印象材はフローの良いもので、薄く一層のみ流します。

 

コストや時間的にどうしても厳しければ、

ソフトライナーを最終印象にすることもできます。

昔は 3D歯科 もソフトライナーを最終印象として技工所へお願いしていましたが

柔らかいものが多い、分厚い印象面となるので、

やはり精度が十分でないのか、完成後の調整が多い印象です。

技工所へ送る際は離水を最小限にするため密閉容器などに入れて送ります。

コツとして、タッパーを用い、容器底面にアルジネートを少量練り

義歯の咬合面を底面にアルジネートで固定して送ると変形が少ないです。

 

さて、最終印象はシリコンで行います。

ソフトライナーを床外形に一層敷いていれば、

ソフトライナーにシリコンは接着するので、シリコン印象材用の

接着剤も不要になる(ことがほとんど)です。

接着剤を塗るのも時間がかかるのでチェアタイムを結果的に短縮できます。

 

フロー性の高いシリコンを薄く一層流し、

患者さんの口腔内に入れたのち、今回はしっかりと術者が指で押し込みます。

外形印象のアラを埋める、精度を上げる目的でシリコンを使用するので

ここでバイトがあがらないように必要最小限のシリコン量とします。

 

指で押して辺縁からわずかなシリコンがはみ出してきたところで

患者さんに咬合を指示し、咬合状態で硬化させます。

硬化後に、印象を外す前に開口させ浮き上がりがないことを確認し

上下の間にバイト材を流し、咬合採得します。

印象はこれで終了するので、

1、旧義歯(コピーデンチャー製作用)のスキャン

2、咬座印象で粘膜面の印象と同時に咬合採得

3、義歯完成

3回のチェアタイムで十分、義歯新製が可能になります。

 

最後に

こうして製作した義歯は、今までよりも調整が少なく、

何よりも咬合が安定している状態で新製ができます。

コピーデンチャー状態で前歯の見え方を患者さんと相談しておけば

排列試適も省略できます。

 

この内容はコピーデンチャーを3Dプリントしたもので行うことを想定しましたが

普段の作成方法において、排列試適での咬座印象に生かせる点もあると思います。

 

今回の内容は以上になります。

長い文章でしたが最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

3D歯科 では、毎週木曜日にデジタルを利用した臨床のアイディアを

少しずつ更新していきます。

 

先生がたの臨床に少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。

今後とも 3D歯科 をよろしくお願いします。